アメリカのベストセラー・ランキング

2月26日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. NORSE MYTHOLOGY    New!

Neil Gaiman ニール・ゲイマン

『サンドマン』で世界幻想文学大賞を受けたニール・ゲイマンが自らの創作の原点に立ち返り、北欧神話を下敷きにして書いた一作。オーディン、トール、ロキといったおなじみの神々が登場する。

2. ECHOES IN DEATH    New!

J.D.Robb J・D・ロブ

ニューヨーク・タイムズのベストセラー常連作家によるイヴ&ローク・シリーズ最新作。ニューヨーク市警に勤めるイヴ・ダラスが富豪の夫ロークと車で帰宅している途中、全裸で血まみれの女性がふらふらと車の正面に飛び出してきた。ロークは慌ててブレーキを踏み、イヴはすぐさま女性を保護しようとするが——21世紀なかばの近未来を舞台にしたSFサスペンス・シリーズ第44作。

3. NEVER NEVER    Down

James Patterson and Candice Fox ジェイムズ・パタースン、キャンディス・フォックス

シドニー警察の刑事ハリエット・ブルーは、兄が殺人容疑で逮捕されたことからシドニーを追われてパースへ異動、オーストラリア内陸部の荒野アウトバックで鉱山労働者の失踪事件の捜査にあたることになる。やがて鉱山では過去にも失踪者が出ていたことが明らかになり……

4. THE WHISTLER    Up

John Grisham ジョン・グリシャム

裁判官への苦情を調査する仕事について9年、フロリダの弁護士レイシーの平穏だった日々は、インディアン・カジノをめぐる組織犯罪と、それにからむ判事の不正を伝える密告者との出会いによって一変する。

5. RIGHT BEHIND YOU    Down

Lisa Gardner リサ・ガードナー

FBI犯罪心理捜査官を引退したクインシーと妻レイニーに里子として迎えられた少女シャーラ。彼女の兄は8年前、酔った父親をバットで殴り殺して妹の命を救ったが、目下は銃撃殺人事件の最有力容疑者として追われている。ヒーローだった兄はモンスターと化したのか。クインシー&レイニー・シリーズの第7作。

6. THE UNDERGROUND RAILROAD    Down

Colson Whitehead コルソン・ホワイトヘッド

19世紀、奴隷制がまだ認められていた南部諸州からの黒人奴隷たちの逃亡を手助けした組織「地下鉄道」。本当に地下を走る逃亡奴隷のための鉄道が存在していたら……という設定のもとで、ジョージア州の綿花プランテーションから逃げだした十代の黒人奴隷の少女の旅を描いたスペキュレイティブ・フィクション。早川書房より邦訳刊行予定。

7. TWO BY TWO    Down

Nicholas Sparks ニコラス・スパークス

幸せなはずだった結婚生活が破綻し、華やかなPRの職も失った32歳のラス。6歳の娘ロンドンを抱えてシングルファザーとなり、想像もつかなかった新しい生活と新しい恋に踏みだす。

8. THE GIRL BEFORE    Down

J P Delaney J・P・ディレイニー

有名建築家エドワードが所有する、ロンドンのモダンなミニマリスト・アパートメント。つらい過去を乗り越え新しい生活をはじめようとこの部屋に住みはじめたジェインに、不可解な出来事が起こりはじめる。過去の住人エマ、現在の住人ジェインの語りから、部屋の恐ろしい秘密が明かされていく。ロン・ハワード監督で映画化の予定。

9. MY NOT SO PERFECT LIFE    New!

Sophie Kinsella ソフィー・キンセラ

『レベッカのお買いもの日記』シリーズ作者の最新作。何ひとつパッとしないケイティ・ブレナーはインスタグラムに逃げ場を求め、“盛った”写真を投稿することで父親の歓心を買おうとしていた。そんなある日、突然仕事をクビになってしまい、実家の農場に帰ることになる。ラブストーリーでもあり、職場のドラマでもあり、ウィットに富んだ小説。

10. UNIVERSAL HARVESTER    New!

John Darnielle ジョン・ダーニール

1990年代後半のアイオワ州を舞台にした一作。主人公のジェレミーは半年前の交通事故で母を亡くし、父とふたり暮らしをしている。そんな彼にとって、ビデオレンタル屋での仕事はいっときの逃避だ。ある日、ビデオを返却しにきた客たちから、「ビデオに妙なものが映っていた」という苦情を立て続けに受ける。念のため、ビデオを家に持って帰って再生してみたところ、どのビデオにも中盤あたりに数分間のホームビデオが収められていた。暗く、暴力的で、心かき乱すホームビデオが……

【まとめ】

今週は1位、2位、9位、10位と4作の新作がランクインしました。堂々1位ランクインの“NORSE MYTHOLOGY”の作者ニール・ゲイマンは、アメコミ好きなら知らない人はいない『サンドマン』の作者です。2位の“Echoes in Death”はタイトルに必ずin Death がつく“In Death”シリーズ(日本での名称はイヴ&ローク・シリーズ)の最新作です。J・D・ロブはノーラ・ロバーツ名義で200作以上のロマンス小説を書いているほか、ジル・マーチやサラ・ハーデスティといった名義も使い分ける多作家です。“In Death”シリーズは通算44作目で、その大半が邦訳されており、先日、41作目の『孤独な崇拝者』(原題“Obsession in Death”)が発売されたばかりです。9位はSNS中毒の主人公をシニカルな視点で描いた小説とのことで、同じ作者による、買いもの中毒のレベッカ・ブルームウッドを描いた『レベッカのお買いもの日記』シリーズと共通のテーマがあるのかもしれません。10位の“UNIVERSAL HARVESTER”は個人的に一番気になる新作でした。作者のジョン・ダーニールはミュージシャンでもあるようです。

武藤陽生(むとう ようせい)

2/23に早川書房より発売される映画『アサシン クリード』の公式ノヴェライズ版を翻訳しました。映画を観るだけではわからないあれやこれやに加えて、4本の特別篇が収録されています。この特別篇にはこれまでのゲームシリーズのキャラクターが登場するため、ファンなら見逃せない一作になっています。

また、3/9に同じく早川書房より拙訳『ポクスル・ウェスト 最後の飛行』が発売されます。第二次世界大戦中にイギリス空軍でパイロットとして活躍した“おじさん”の半生と、イライジャという少年との交流を描いた作品で、愛と哀しみにあふれるジュヴナイル的戦争小説です。