アメリカのベストセラー・ランキング

5月28日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. INTO THE WATER    Up

Paula Hawkins ポーラ・ホーキンズ

イギリスの小さな町を流れる川の底から、ネルという名のシングルマザーの死体が発見される。そのあたりは地元では“溺死の淵”と呼ばれ、かつての魔女狩りで魔女とされた女たちが命を絶った場所として知られていた。ネルは魔女に強い興味を持ち、淵の歴史を書き綴った手稿を遺していた。

2. 16TH SEDUCTION    Down

James Patterson and Maxine Paetro ジェイムズ・パタースン、マクシーン・ペトロ

女性殺人捜査クラブ・シリーズ第16作。信じていた人物に裏切られ、心に深い傷を負ったリンジー・ボクサー。立ちなおろうともがいていたところへ、爆弾テロ事件が起こり、多数の死者が出る。リンジーは犯人の逮捕に成功するが、捜査の正当性に疑問を投げかけられてしまう。

3. AGAINST ALL ODDS    Stay

Danielle Steel ダニエル・スティール

ケイト・マディソンは夫が不慮の死を遂げるという不幸に見舞われながらも、事業に成功し、4人の子供を立派に育てあげた。だが、子供たちは安定した人生を歩もうとせず、茨の道を選ぼうとする。子供を愛する母親として、ケイトには何ができるのか。

4. THE FIX    Stay

David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ

“完全記憶探偵”エイモス・デッカー・シリーズ第3弾。FBI本部近くの路上で男が女を射殺し、直後に自殺する場面を目撃したデッカー。捜査に乗りだしたところ、国防情報局に手を引けと警告される。この事件の背後には重大な国家機密がかかわっているというのだが……

5. GOLDEN PREY    Stay

John Sandford ジョン・サンドフォード

ルーカス・ダヴンポートの「獲物」シリーズ第27作。米国連邦保安局へ移ったルーカスは強盗事件を手がけることに。犯人は麻薬カルテルを襲って売人4人を殺し、居合わせた幼い少女の命まで奪って、大金を持ち去っていた。金を取りもどそうと麻薬組織が追手を差し向けるなか、ルーカスはいち早く犯人にたどりつこうと捜査を急ぐ。

6. THE THIRST    New!

Jo Nesbo ジョー・ネスボ

オスロの街で出会い系アプリを利用した連続女性殺人事件が発生。被害者の遺体には金属製の牙で噛まれたらしき傷が残されていた。警察学校の教官として穏やかに暮らしていたハリーは捜査への復帰を余儀なくされ……前作“POLICE”から4年ぶりに発表されたハリー・ホーレ・シリーズの第11作。

7. SINCE WE FELL    New!

Dennis Lehane デニス・ルヘイン

支配的な母親のもと、父親の名前を知らずに育ったレイチェル。報道記者として成功するものの、カメラの前でパニック発作を起こして職を失い、広場恐怖症に苦しむようになる。かつて父親の調査を依頼した探偵のブライアンと再会し、ようやく平穏な結婚生活を手にしたはずだったが……著者初となる、女性を主人公とした新作サイコスリラー。

8. MEN WITHOUT WOMEN    New!

Haruki Murakami 村上春樹

日本では2014年に出版された短篇集『女のいない男たち』の英訳版。原書に収録された「ドライブ・マイ・カー」「イエスタデイ」「独立器官」「シェエラザード」「木野」「女のいない男たち」の6篇に「恋するザムザ」が加えられている。

9. THE BLACK BOOK    Down

James Patterson and David Ellis ジェイムズ・パタースン、デイヴィッド・エリス

痴情絡みと思しき事件現場で警官パティが目にしたのは、女2人の死体とともに全裸で血を流した双子の兄ビリーだった。ビリーは一命をとりとめるが、過去2週間の記憶がもどらない。実直な同僚警官でもある彼の汚名を濯ごうとするパティらの捜査線上に、シカゴの高級娼館と黒表紙のアドレス帳の存在が浮かびあがる。

10. A DOG’S WAY HOME    New!

W. Bruce Cameron W・ブルース・キャメロン

心やさしい青年ルーカスに拾われた子犬のベラ。だがデンバーではピットブルの飼育が禁止されているため、600キロ離れた別の町へ送られてしまう。ルーカスの元へ戻るため、ベラはロッキー山脈を越え、はるかなデンバーを目指す——『野良犬トビーの愛すべき転生』の作者が送る、犬と人間との絆の物語。

【まとめ】

ポーラ・ホーキンズの新作“INTO THE WATER”が1位に浮上。新たに4作がベストテン入りしました。6位に入ったのは『その雪と血を』(早川書房)で翻訳ミステリー大賞受賞のジョー・ネスボ。ハリー・ホーレ・シリーズも第5作の邦訳『悪魔の星』(集英社)が2月に刊行され、第7作『スノーマン』の映画版(マイケル・ファスベンダー主演)が10月に全米公開予定と、今年は話題つづきです。7位のルヘインは『夜に生きる』(早川書房)の映画版(ベン・アフレック監督・主演)が先週末に日本で封切られたところ。今作“SINCE WE FELL”もドリームワークスが映画化権を取得しているとのことです。ベストテン外では、15位にファンタジー作家ロビン・ホブの新作“ASSASSIN’S FATE”がランクインしています。

中谷友紀子(なかたに ゆきこ)

訳書にサムエル・ビョルク『オスロ警察殺人捜査課特別班 アイム・トラベリング・アローン』など。ミシェル・ペイヴァー「神々と戦士たち」シリーズの第4巻『聖なるワニの棺』が今週25日に刊行予定です。