アメリカのベストセラー・ランキング

6月11日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. INTO THE WATER    Stay

Paula Hawkins ポーラ・ホーキンズ

イギリスの小さな町を流れる川の底から、ネルという名のシングルマザーの死体が発見される。そのあたりは地元では“溺死の淵”と呼ばれ、かつての魔女狩りで魔女とされた女たちが命を絶った場所として知られていた。ネルは魔女に強い興味を持ち、淵の歴史を書き綴った手稿を遺していた。

2. DRAGON TEETH    New!

Michael Crichton マイクル・クライトン

1876年、未開の西部へと気軽な探検に繰り出したエール大の学生ウィリアムは、2人の古生物学者マーシュとコープによる「骨戦争」こと恐竜化石発掘の熾烈な競争に巻き込まれる。2008年に急死した著者による未発表作品で、綿密に描かれた史実の枠に『ジュラシック・パーク』を彷彿させる豊かな想像力を嵌め込んだ冒険フィクション。

3. NO MIDDLE NAME    Down

Lee Child リー・チャイルド

ジャック・リーチャーを主人公とする、これまでに発表された短編11編に、新作中編“TOO MUCH TIME”を加えた中短編集。今年秋に本国で出版が予定されているシリーズ長編22作目の“THE MIDNIGHT LINE”は、メイン州で起きたひったくり事件を発端として展開する、前述の中編“TOO MUCH TIME”から続くストーリーとなるとのこと。

4. 16TH SEDUCTION    Down

James Patterson and Maxine Paetro ジェイムズ・パタースン、マクシーン・ペトロ

女性殺人捜査クラブ・シリーズ第16作。信じていた人物に裏切られ、心に深い傷を負ったリンジー・ボクサー。立ちなおろうともがいていたところへ、爆弾テロ事件が起こり、多数の死者が出る。リンジーは犯人の逮捕に成功するが、捜査の正当性に疑問を投げかけられてしまう。

5. THE FIX    Stay

David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ

“完全記憶探偵”エイモス・デッカー・シリーズ第3弾。FBI本部近くの路上で男が女を射殺し、直後に自殺する場面を目撃したデッカー。捜査に乗りだしたところ、国防情報局に手を引けと警告される。この事件の背後には重大な国家機密がかかわっているというのだが……

6. SAME BEACH, NEXT YEAR    Down

Dorothea Benton Frank ドロシア・ベントン・フランク

かつて恋人同士だったアダム・スタンリーとイヴ・ランダースは、それぞれの結婚相手イライザ、カールと訪れたチャールストンのビーチで偶然再会する。それからの20数年、夏ごとに顔を合わせるようになった2組の夫婦は、さまざまな感情と人生の局面を通り抜けながら新たな関係を築いていく。

7. TESTIMONY    Down

Scott Turow スコット・トゥロー

パートナーを務める法律事務所を辞め、妻とも別れ、50歳にして人生の再出発を決意したキンドル郡の元地方検事ビル・テン・ブーム。オランダに移り住んだ彼は、ハーグにある国際刑事裁判所の検察官として、ボスニア紛争時の難民キャンプで起きたとされる非人道的犯罪に挑む。

8. THE FROZEN HOURS   New!

Jeff Shaara ジェフ・シャアーラ

朝鮮戦争のさなか、半島制圧を目指して極寒の北朝鮮に入ったアメリカ海兵隊は、長津湖周辺を移動中に中国人民志願軍の奇襲に遭う。激戦の末に国連軍が完全退却を強いられたことで知られる「長津湖の戦い」を、3人の登場人物による多視点で描いた軍事史小説。

9. GOLDEN PREY    Down

John Sandford ジョン・サンドフォード

ルーカス・ダヴンポートの「獲物」シリーズ第27作。米国連邦保安局へ移ったルーカスは強盗事件を手がけることに。犯人は麻薬カルテルを襲って売人4人を殺し、居合わせた幼い少女の命まで奪って、大金を持ち去っていた。金を取りもどそうと麻薬組織が追手を差し向けるなか、ルーカスはいち早く犯人にたどりつこうと捜査を急ぐ。

10. AGAINST ALL ODDS    Down

Danielle Steel ダニエル・スティール

ケイト・マディソンは夫が不慮の死を遂げるという不幸に見舞われながらも、事業に成功し、4人の子供を立派に育てあげた。だが、子供たちは安定した人生を歩もうとせず、茨の道を選ぼうとする。子供を愛する母親として、ケイトには何ができるのか。

【まとめ】

今週は2位と8位に新作がランクインしました。故マイクル・クライトンの未発表作品は最も多作だった時期に書かれて眠っていたものが近年になって家族により発見されたとのこと。10数年にわたる本人の加筆修正の跡が確認されているそうで、ナショナル・ジオグラフィックによる映像化のための脚本製作がはじまっています。没後刊行としては他にも『パイレーツ—掠奪海域—』と『マイクロワールド(上・下)』(ともに酒井昭伸訳/ハヤカワ文庫NV)がありますが、この2つは亡くなる直前の作品でパソコン内部に原稿が残っていました。8位のジェフ・シャアーラは南北戦争や世界大戦など、軍事史を軸としたフィクションを数多く手がけている作家です。ランク外の12位には、超絶リッチなアジアの富裕層をコミカルに描いた3部作の3作目として、ケヴィン・クワンの“RICH PEOPLE PROBLEMS”が入りました。1作目“Crazy Rich Asians”はコンスタンス・ウー主演で映画化が決定しています。

飯干京子(いいぼしきょうこ)

大阪のレギュラー読書会は『拾った女』7月14日開催でぼちぼちお知らせしていますが、それより早い7月2日(日)午後2時より、いつものキタ界隈ではなく南東寄り(奈良寄り?)のとあるJAZZバーにて、スピンオフ的なミニ読書会が開催されます。スコッチ片手にスコットランドが舞台のD.M.ディヴァイン『跡形なく沈む』を読んで語る会(片手に持つのはソフトドリンクでももちろんOK)。ご興味おありの方はmicmac201505@gmail.comにメールでお問い合わせください。