チーズバーガーと聞いてとっさ思い浮かベるのはどんなものだろう?

私を含め、多くの日本人が思い浮かべるのは多分、ファストフード店などで売られている小ぶりで手軽にお腹を満たせるけれど、それ自体に強い愛着を覚えるような「特別」なものではないと思う。

今回の調理実習ではその「チーズバーガー」がお題。お手軽なメニューだなと思っていたら、なんとバンズから手作りしようということになった。パテも贅沢に100%国産牛肉を使用するという。しかもチーズバーガーに使用するチーズは2種類!フライドポテトも作るというのだ。どうやら最初に考えていたものとは全然違うらしいということがわかってきた。

今回は試作会に参加できなかったため、私はレシピカードを作りながらニール・ケアリーの好物のチーズバーガーの味を想像して過ごした。

そして迎えた当日。

まずは一から手作りするということで時間の配分が難しいバンズから。

講師の森嶋マリさんのお手本を見ながら作業を進めていく。

ボールに分量の粉と砂糖、ドライイーストを合わせ、ぬるま湯を注ぎカードを使って全体をざっと混ぜ合わせてから塩とバターを加える。

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再びカードで全体を良く混ぜ合わせてから台の上で捏ねる。調理台の上を大きく使い、思い切り力を込めて捏ねる作業は、日頃のストレス発散(?)にもなったかも。パン作りは初めてという方もこの作業を楽しんでいる様子だった。

あっという間に生地が捏ねあがり、一次発酵へ。40度のオーブンで45分発酵させる。

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次は、生地の発酵を待つ間に玉ねぎを刻み、バンズに挟むパテやフライドポテトの用意。刻んだ玉ねぎは飾り用に少し取り分け、残りはしんなりするまでフライパンで炒めて冷ます。その後、牛ひき肉、溶き卵、塩、胡椒、ナツメグ、パン粉と合わせてよく捏ね、丸くパテの形に整形し、寝かせておく。

フライドポテトは揚げ焼きにする前に皮ごと固めに茹でるのだが、このジャガイモの茹で加減が意外に難しかった。前のテーブルに見本として置いた、茹で上がったジャガイモの固さを確かめるために、代わる代わる串を刺しに来る参加者と、ブスブスと串を刺されているジャガイモの様子がなんだかユーモラスだった。

今回の実習ではバンズの発酵やジャガイモを丸ごと茹でるといった作業が多く、待ち時間が結構あったのだが、この時間を使って参加者一人一人が自由におしゃべりをしながら交流することもでき、楽しい時間が過ごせたと思う。

さて、そうこうするうちにオーブンに入れておいたバンズの生地が出来上がってきた。丸め直して整形し、オーブンシートの上に並べて白ゴマを振った生地はなんともいい感じ。2次発酵に20分ほどかけてから、180度に予熱したオーブンで15分ほど焼けば出来上がりだ。

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焼きあがったバンズを冷ましている間に茹でておいたポテトを食べやすく切り、揚げ焼きに。一人につきジャガイモ1個の割り当ては結構な量だった。

ポテトが出来上がったら続けてパテを焼く。おいしそうな匂いがスタジオ中にあふれてお腹が鳴りそうだった。

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パテを焼いている間にピクルスとチーズも切った。

この日用意された2種類のチーズは塊のままだったので、切り分けるときに厚切りになってしまうと他のテーブルの人の分がなくなってしまうかもしれず、チーズを切る役になった人は相当なプレッシャーの中、慎重にチーズを切り分けていた。

焼きあがったパテの上にこの2種類のチーズをのせて蓋をし、予熱でチーズをとろけさせたらパテは完成。パテの上でとろけるチーズを見て、心の中で「ああ、早く食べたい」と思う。

「では、ハンバーガーを組み立てま~す」と言う声がかかると、冷ましておいたバンズを半分に切って、ちぎったレタス、パテ、ピクルス、そして取り分けておいた刻み玉ねぎを順番に乗せていった。本当にボリューム満点だ。最後にケチャップをトロリとかけて、もう半分のバンズを乗せたら「ニール・ケアリーのチーズバーガー」の出来上がりだ。

用意されたハンバーガー用の袋に入れて、ポテトも添えたら記念の写真をパチリ。

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楽しい試食タイムには今回の講師を務めてくださった森嶋マリさん特製のスイーツも振る舞われ、和やかなひとときとなった。肝心のチーズバーガーだが、ジューシーで美味しい!と、あっという間に全員完食!これなら、また食べたくなるよね~、と皆口を揃えて言っていた。家でもう一度作ろうと言っていた人もちらほら。

余談だが、ゲストにお招きした翻訳者の那波かおりさんとないとうふみこさんが今回のニール・ケアリーをイメージして作成したレシピカードを観ながら「ストリート・キッズ」のニールの天使性とグレアムの悪魔性を語られていたことも興味深かった。東江一紀さんにも見ていただきたかったと言ってくださったことも忘れられない。

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今回が8回目となるお料理の会だが、作品に登場する料理を作るというのは本当に面白い。人は五感を使って物事を感じ取るようにできているのだから料理を通し、作品の中に生きる登場人物の性格や感情、生活空間などがひときわ鮮やかに生き生きと色づいて見えてくるのは気のせいではないだろう。

だから、翻訳された料理のシーンが美味しそうだとワクワクしてしまう。同じものを食べてその世界に浸りたいと思う。

今回は調理実習を終えたら、いつの間にか自分の中のチーズバーガーのイメージが変わっていた。私がこれから先「チーズバーガー」と聞いて真っ先に思い浮かべるのは間違いなくこの「ニール・ケアリーのチーズバーガー」なのだから。

さて、これからもこのお料理の会で、知らなかった世界をたくさんの方達と一緒に味わえるのを楽しみにしよう。次回も今から待ち遠しい。

宮﨑裕子(みやざき ゆうこ)

翻訳ミステリーお料理の会HP担当

パンを焼くイラストレーター

東京、長野などで毎年個展を開催。

手作りパン教室pomme(ポム)にて低糖質なパンのレッスンも開催中。

https://applesyukkonokko.jimdo.com

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■翻訳ミステリーお料理の会 公式サイト http://mysterycooking.jimdo.com/

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