アメリカのベストセラー・ランキング

6月25日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. CAMINO ISLAND    New!

John Grisham ジョン・グリシャム

プリンストン大学の図書館で厳重に保管されていた古い原稿が盗まれた。若い女性作家のマーサーは謎めいた女性から依頼を受け、フロリダの島で人気書店を営みながら裏では稀覯本の闇取引で儲けているというブルースを、秘密裏に調査することになる。

2. INTO THE WATER    Stay

Paula Hawkins ポーラ・ホーキンズ

イギリスの小さな町を流れる川の底から、ネルという名のシングルマザーの死体が発見される。そのあたりは地元では“溺死の淵”と呼ばれ、かつての魔女狩りで魔女とされた女たちが命を絶った場所として知られていた。ネルは魔女に強い興味を持ち、淵の歴史を書き綴った手稿を遺していた。

3. COME SUNDOWN    Down

Nora Roberts ノーラ・ロバーツ

ボディーンはモンタナ州で、家族4世代でリゾート施設を備えた牧場を経営している。ある夜、家出したと聞かされていたおばのアリスが、牧場の近くで惨殺死体となって発見される。じつはアリスは家出をしたあと何者かに誘拐されており、その家から逃げ出していたのだった。この事件をきっかけに、ボディーンと彼女の家族の絆が試されることになる。

4. DRAGON TEETH    Down

Michael Crichton マイクル・クライトン

1876年、未開の西部へと気軽な探検に繰り出したエール大の学生ウィリアムは、2人の古生物学者マーシュとコープによる「骨戦争」こと恐竜化石発掘の熾烈な競争に巻き込まれる。2008年に急死した著者による未発表作品で、綿密に描かれた史実の枠に『ジュラシック・パーク』を彷彿させる豊かな想像力を嵌め込んだ冒険フィクション。

5. LOVE STORY    New!

Karen Kingsbury カレン・キングズベリー

バクスター家の人々を主人公にした人気シリーズの第25作。バクスター家の祖父母であるジョンとエリザベスのなれそめを、孫のコールが学校のプロジェクトで、家族の物語としてまとめることになった。ジョンは学生時代の出会いから、エリザベスががんで亡くなるまでの30年間に思いを馳せる。

6. NO MIDDLE NAME    Down

Lee Child リー・チャイルド

ジャック・リーチャーを主人公とする、これまでに発表された短編11編に、新作中編“TOO MUCH TIME”を加えた中短編集。今年秋に本国で出版が予定されているシリーズ長編22作目の“THE MIDNIGHT LINE”は、メイン州で起きたひったくり事件を発端として展開する、前述の中編“TOO MUCH TIME”から続くストーリーとなるとのこと。

7. THE MINISTRY OF UTMOST HAPPINESS    New!

Arundhati Roy アルンダティ・ロイ 

1997年のブッカー賞を受賞した『小さきものたちの神』の著者による小説。インドではヒジュラーと呼ばれるトランスジェンダーのアンジュムは、デリーの墓地にゲストハウスを建て、社会の除け者となった不遇な人々を、だれひとり拒むことなく受けいれる。現代インドの抱えるさまざまな問題を、多様な登場人物を通じて切り取った作品。

8. NIGHTHAWK    Down

Clive Cussler and Graham Brown クライヴ・カッスラー、グレアム・ブラウン

カート・オースチンが活躍する、NUMAファイル・シリーズの14作目。最新鋭の技術でつくられた無人航空機ナイトホークが、時限爆弾を積んだまま南太平洋上で姿を消す。カートはNSAのエマ・タウンゼントとともに、爆発を止めるべく機体の所在の特定に乗りだす。一方ロシアと中国も、技術を得る目的でその行方を追っていた。やがて、ナイトホークには爆弾以外にも重大な秘密が積まれていたことが明らかになる。

9. THE FIX    Down

David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ

“完全記憶探偵”エイモス・デッカー・シリーズ第3弾。FBI本部近くの路上で男が女を射殺し、直後に自殺する場面を目撃したデッカー。捜査に乗りだしたところ、国防情報局に手を引けと警告される。この事件の背後には重大な国家機密がかかわっているというのだが……

10. INDECENT EXPOSURE    New!

Stuart Woods スチュアート・ウッズ

ストーン・バリントンを主人公とするシリーズの第42作。国務長官に任命されたホリーと一緒にいるところを写真に撮られ、執拗にマスコミに追われる身となったバリントン。美しく野心的な雑誌記者グロリアのインタビューに応じて親しくなるが、すぐに後悔することに。

【まとめ】

今週は新たに4作品がランクインしました。1位はリーガル・スリラーで知られるジョン・グリシャムの最新作。5位のキングズベリーはこのバクスター家のシリーズのほか、3作品が邦訳刊行されている“赤い手袋の奇跡“シリーズなど、人気作品を多数書いている作家です。7位に登場したアルンダティ・ロイはデリー在住の女性作家・政治活動家で、本作品は小説としては2作目ですが、ノンフィクションの著作が多数あります。10位のストーン・バリントン・シリーズは、1991年の“NEW YORK DEAD”(『ニューヨーク・デッド』)が第1作。近年は年に4作というハイペースでの新作発表をつづけています。ベストテン外では、15位にジェームズ・ボンドシャーロック・ホームズ両シリーズの公式続編が話題となったアンソニー・ホロヴィッツの“MAGPIE MURDERS“がはいっています。

佐藤桂(さとう けい)

神奈川在住の翻訳者です。訳書に『中途の家』(越前敏弥さんとの共訳)など。