アメリカのベストセラー・ランキング

8月2日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. THE ORDER    New!

Daniel Silva ダニエル・シルヴァ

美術修復師にしてイスラエル諜報機関のスパイ、ガブリエル・アロン・シリーズの第20作。教皇が心臓発作で急死し、ガブリエルは友人の枢機卿に呼ばれてローマへ向かう。「ヴァチカン秘密文書館で、驚くべき書物を見つけた」死の直前に教皇がそんな手紙を残していたことから、枢機卿は教皇が殺されたのではないかと考えていた。

 

  1. 2. PEACE TALKS    New!

Jim Butcher ジム・ブッチャー

魔法使いのハリー・ドレスデンがシカゴの街を舞台に事件を解決していくファンタジー、ドレスデン・ファイル・シリーズの第16作。停戦交渉のために魔法界の代表が集まる場で、ハリーは無事に話し合いがおこなわれるよう警備を担当する。

 

  1. 3. WHERE THE CRAWDADS SING    Down

Delia Owens ディーリア・オーエンズ

ノースカロライナ州の湿地で村の青年チェイスの死体が発見され、「湿地の少女」と呼ばれるカイアが真っ先に疑われる。6歳で家族に見捨てられ、ひとりで生き延びてきたカイアは、果たして犯人なのか――みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と絡みあう。邦訳『ザリガニの鳴くところ』(友廣純訳)が早川書房より刊行されている。

 

  1. 4. THE VANISHING HALF    Down

Brit Bennett ブリット・ベネット

1960年代、肌の色の薄い黒人だけが住むルイジアナ州の小さな町を16歳で飛びだした双子の姉妹デジレとステラ。デジレはより肌の色の濃い夫との間に生まれた娘を連れて故郷の町へ戻るが、一方のステラは「白人」として生きることを選び、ブロンドに青い目の娘を産む――双子の姉妹とその娘たち、ふたつの世代の目を通じて黒人にとっての肌の色とアイデンティティの問題を描く。

 

  1. 5. 28 SUMMERS    Down

Elin Hilderbrand エリン・ヒルダービルド

ナンタケット島のコテージで、90年代のはじめに出会ったマロリーとジェイク。それぞれの家庭を築いたあとも、ふたりの関係はひそかに続いていた。1年に1度、週末だけのロマンス。時は過ぎて2020年、病に倒れたマロリーは自らの死を悟り、ジェイクは妻が大統領選挙に出馬し、それまでとはちがう28回目の夏を迎えていた。

 

  1. 6. SEX AND VANITY    Up

Kevin Kwan ケビン・クワン

中国人の血を引く令嬢ルーシーの前に、数年前イタリア旅行で出会った青年ジョージが現れ、婚約者とジョージの間でルーシーの心は揺れる。E・M・フォースターの小説で、映画でも有名な『眺めのいい部屋』のコミカルなオマージュ作品。

 

  1. 7. THE GUEST LIST    Down

Lucy Foley ルーシー・フォーリー

アイルランド沖の孤島に建つ屋敷で開かれたセレブなカップルの結婚パーティの最中、死体が発見される。新郎新婦とその家族や友人たち、それぞれに秘密の事情や恨みをかかえて島に集った人々の中で、犯人はいったい誰なのか。

 

  1. 8. CAMINO WINDS    Down

John Grisham ジョン・グリシャム

フロリダのカミノ島がハリケーンに襲われ、多くのひとが亡くなった。犠牲者のひとりにスリラー作家のネルソン・カーもいたが、頭部に殴られた跡があったことから、彼の友人で書店を営むブルース・ケーブルは、その死に疑問を持つ。やがて彼は、カーの著作の怪しげな登場人物たちは実在するのではと思いはじめる。

 

  1. 9. UTOPIA AVENUE    New!

David Mitchell デイヴィッド・ミッチェル

ユートピア・アヴェニューは4人組のバンドだ。1967年ソーホーの小さなクラブから、テレビ出演を経てチャートを駆けあがり、1968年秋にアメリカへ到るまでの1年ほどの旅路。架空のバンドのメンバーの声を通して、若者の悩み多き日々と1960年代のイギリスの空気を活写する、音楽に満ちた小説。

 

  1. 10. A WALK ALONG THE BEACH    New!

Debbie Macomber デビー・マッコーマー

ウィラは海辺の町でカフェを営んでいるが、ここまでの道のりは平坦ではなかった。13歳のときに母を病気で亡くし、失意の父はアルコールに逃げたため、ウィラが妹と弟の親代わりをつとめてきた。やがてウィラに思いを寄せる男性が現れるが、妹のハーパーの病が再発する。

 

【まとめ】

新作は4つでした。1位は毎年1冊のペースで出ているダニエル・シルヴァのシリーズ新作です。このシリーズの邦訳で最新のものは、19作目の『過去からの密使』で、20205月にハーパーコリンズ・ジャパンから刊行されています。2位のドレスデン・ファイル・シリーズはドラマ化されており、邦訳は3作目の『ドレスデン・ファイル3 ―血塗られた墓―』まで。すでに次の第17作“Battle Ground”の刊行が9月に予定されているようです。9位は『クラウド・アトラス』で知られる著者の5年ぶりの新作で、8作目の長篇小説。1960年代の音楽はもちろん、実在のアーティストも作中に登場して、時代の空気を鮮やかに描き出しているとのこと。10位はシーダー・コーヴ・シリーズで知られる人気作家による単発のロマンス小説です。

 

    1. 国弘喜美代(くにひろ きみよ)

      南東京読書会の世話人のひとり。訳書にロイ・ピーター・クラーク『名著から学ぶ創作入門 優れた文章を書きたいなら、まずは「愛しきものを殺せ!」』(越前敏弥さんとの共訳)、ローラ・シムズ『あなたを見てます大好きです』など。