アメリカのベストセラー・ランキング

10月4日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. THE EVENING AND THE MORNING    New!

Ken Follett ケン・フォレット

暗黒時代が終わりを迎えつつあった10世紀末のイングランド。ヴァイキングにさらわれた船大工、夫の故郷で暮らすために海を渡ったノルマン人の貴婦人、みずからの修道院をヨーロッパの学問の中心にしようと夢見る修道士らの波乱の人生を描く。世界的なベストセラーとなった『大聖堂』の前編にあたる物語。

 

  1. 2. TROUBLED BLOOD    New!

Robert Galbraith ロバート・ガルブレイス

J・K・ローリングが別名義で執筆している私立探偵コーモラン・ストライク・シリーズの第5作。40年前に失踪した母を捜してもらいたいとその娘から頼まれたストライクは、見つかる可能性はわずかだと思いながらも依頼を引き受ける。が、調べを進めるうちに、その失踪事件と連続殺人事件のつながりが見えてくる。

 

  1. 3. VINCE FLYNN: TOTAL POWER    New!

Kyle Mills カイル・ミルズ

原作者ヴィンス・フリンの他界後、カイル・ミルズが第14作から書き継いでいるミッチ・ラップ・シリーズの第19作。アメリカの電力網を壊滅させるテロがおこなわれる。いかにしてこの未曾有のテロを実行できたのか、その方法がわからなければ復旧には果てしない時間がかかる。CIAのラップはコンピュータも通信ネットワークも使えない状況で実行犯を追う。

 

  1. 4. TO SLEEP IN A SEA OF STARS    New!

Christopher Paolini クリストファー・パオリーニ

異星生物学者のキーラは、未探検の惑星を調査中、異星人の遺跡らしきものを見つける。大発見に興奮するキーラだったが、異星人の組織が体に癒着してしまい、軍の艦船で検査を受けることになる。そこへ異星人が襲撃してくる。

 

 

  1. 5. THE VANISHING HALF    Stay

Brit Bennett ブリット・ベネット

1960年代、肌の色の薄い黒人だけが住むルイジアナ州の小さな町を16歳で飛びだした双子の姉妹デジレとステラ。デジレはより肌の色の濃い夫との間に生まれた娘を連れて故郷の町へ戻るが、一方のステラは「白人」として生きることを選び、ブロンドに青い目の娘を産む――双子の姉妹とその娘たち、ふたつの世代の目を通じて黒人にとっての肌の色とアイデンティティの問題を描く。

 

  1. 6. WHERE THE CRAWDADS SING    Up

Delia Owens ディーリア・オーエンズ

ノースカロライナ州の湿地で村の青年チェイスの死体が発見され、「湿地の少女」と呼ばれるカイアが真っ先に疑われる。6歳で家族に見捨てられ、ひとりで生き延びてきたカイアは、果たして犯人なのか――みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と絡みあう。邦訳『ザリガニの鳴くところ』(友廣純訳)が早川書房より刊行されている。

 

  1. 7. THE HARBINGER II    Stay

Jonathan Cahn ジョナサン・カーン

2012年刊行のベストセラー“THE HARBINGER”の続編。古代イスラエルにおける9つの神秘がアメリカの未来(リーマンショック、911など)を予言しているという前作を経て、さらに近年の世界情勢が、古代イスラエルと同じ運命を辿りつつあるという事実を、三人の“預言者”を通して物語形式で解説していく。神の警告を無視し続ければ、アメリカや世界が裁きを受ける日も近いのか。

 

  1. 8. SHADOWS IN DEATH    Down

J.D. Robb J・D・ロブ

ワシントン・スクエア公園で若い女性が殺害され、イヴとロークは現場へ急ぐ。ロークは人だかりのなかに知った顔があるのに気づく。それは、二度と見たくないと思っていた顔、自分を狙う殺し屋の顔だった。イヴは殺人事件を捜査すると同時に、ロークの暗い過去へ踏みこんでゆく。イヴ&ローク・シリーズ第51作。

 

  1. 9. PIRANESI    New!

Susanna Clarke スザンナ・クラーク

ピラネージの家はふつうではない。部屋は無数にあり、廊下は無限に延び、壁にはひとつひとつちがう像が何千も並んでいる。家にはピラネージ以外にもうひとりがいて、週に二度ピラネージを訪れ、「大いなる秘密の知識」の探求を手伝うよう頼んでくる。ピラネージが家の探検をつづけるうちに、ほかにもだれかが家にいる証が見つかる。

 

  1. 10. ONE BY ONE    Down

Ruth Ware ルース・ウェア

ロンドンのIT企業の関係者9人がフレンチアルプスの豪華なスキーロッジを訪れる。ところがひとりの行方がわからなくなり、まもなく雪崩が起こる。脱出の手段はなく通信や電気も断たれ、管理人ふたりとともに一行は雪のなかに閉じこめられてしまう。パニックのなか、さらにひとりが殺され、ひとりまたひとりと犠牲者が増える。

 

【まとめ】

新たに5作がランクインしました。1位はフォレットの待望の新作。大聖堂シリーズの邦訳は、『大聖堂』『大聖堂――果てしなき世界』がソフトバンク文庫より刊行されているほか、同じくキングズブリッジを舞台にした『火の柱』が今年になって扶桑社より刊行されました。2位のガルブレイスのシリーズは、講談社から第1作『カッコウの呼び声』と第2作『カイコの紡ぐ嘘』の邦訳が出ており、BBCによって第4作までドラマ化ずみです。3位のミッチ・ラップ・シリーズは、オークラ出版より邦訳が出た第11作『アメリカン・アサシン』が映画化されています。4位はドラゴンライダー・シリーズの著者パオリーニが手がけた初のSF小説。同シリーズは静山社から全4作の邦訳が刊行されています。9位は『ジョナサン・ストレンジとミスター・ノレル』で有名なクラークの新作。同作はヒューゴー賞をはじめとする数々の賞を受賞し、ヴィレッジブックスから邦訳が出ています。トップテン外では、14位にアシャ・レミーの“FIFTY WORDS FOR RAIN ”がはいりました。第二次世界大戦直後の日本を舞台に、日本人とアフリカ系アメリカ人のあいだに生まれた少女が自分の居場所を探していく物語です。

 

    1. 青木創(あおき はじめ)

      翻訳者。 L・チャイルドのジャック・リーチャー・シリーズ第13作『葬られた勲章』が刊行されました。シリーズ中期の傑作として、映画化された『アウトロー』に匹敵する高い評価を受けている作品です。そのほかの訳書に、同シリーズの『ミッドナイト・ライン』、D・ワッツ『偶然の科学』など。