みなさま、カリメーラ(こんにちは)!
 
 ギリシャ・ミステリ創成期、ということは1950年代のヤニス・マリスの登場した時期ですが、そこから1980~90年代の第二世代までで特に注目すべき六人の作家を選び、勝手ながら《ギリシャ・ミステリ六歌仙》と名付けてエッセイ第2~4回で取り上げました。
 《六歌仙》の中には小野小町が二人います。50年代後半にすでに短編を書いていた《ギリシャのクリスティー》アシナ・カクリと80年代に現れた《心理の検死解剖》ティティナ・ダネリです。六人のうち二人が女性作家ということになりますが、これは少ないというべきなのでしょうか?

 数か月前にテーマを決め、こんな風に書き始めていたところ、ダネリ女史の訃報(2021年1月6日)を知り驚きました。。
 エッセイ第4回で《六歌仙No.6》として取り上げたティティナ(正式にはフリスティナ)・ダネリは1943年アテネ生まれで、ナポリやローマで文学・通訳を専攻した後、ジャーナリストとして長年活躍しました。
1970年代から普通小説を発表していますが、ミステリとしては男性作家との合作長編(こういうのは珍しい)『1プラス1はお好きなだけ』(1981年)が第一作です。単独でのデビューは2000年の『クレオパトラの嘆き』。その後、『判事ゲーム』(2002年)、『第四の女』(2004年)、『少佐』(2007年)などの長編を発表しています。カスタニオティス社の『ギリシャの犯罪』全5巻すべてに短編を寄せ、それゆえ《六歌仙》に選ばせてもらいました。

 
ティティナ・ダネリ『判事ゲーム』

プシフィダ社、2002。

 少年のような感性鋭いギリシャ警察長官ヴラホス中将を主役にして、登場人物の心理の奥底にまで達する描写に本領を発揮しました。インタビューでは、執筆にあたっては、まず「人物」の設定を入念に行ってから「プロット」制作に進む、と語っています。
 ギリシャ・ミステリ作家クラブ創設にも尽力し、2013年から三年間初代会長を務めました。
 多くの作家たちが追悼文を寄せており、人望のあったことをうかがわせます。作品の質だけではなく、ミステリ不遇の時代から媚びることなく、自分のスタイルを貫いて執筆を続けてきた姿勢が尊敬されているようです。
 ご冥福をお祈りします。


Ελληνική Λέσχη Αστυνομικής Λογοτεχνίας – ΤΙΤΙΝΑ ΔΑΝΕΛΛΗ (1943-2021): IN MEMORIAM [3] (elsal.gr)
【ギリシャ・ミステリ作家クラブHPの追悼文。ダネリ女史の肖像写真が見られます。】

 
 今回のテーマに戻りますと、この作家クラブの会員たちはこれまで競作アンソロジーを三作出しています。作品を寄せた女性作家を数えてみると、『危険への扉』(2011年)は16人中4人、『ベカス警部の帰還』(2012年)16人中5人、『場所が犯人を暴く』(2014年)10人中5人、と多い場合でも半数で、決して多いとはいえないようですね。

 ところがその一方で、最近ギリシャのミステリ・ファンクラブのウェブページを覗いてみると、UPされた女性作家たちの作品のカバー写真に溢れています。ギリシャ・ミステリ小説全体が興隆するとともに女性作家の活躍も目を見張ります。
 今回はその中からよく写真を見かけ、気になっていた作品を二点ご紹介したいと思います。 

◆ エフティヒア・ヤナキ『後ろの座席で』――探偵の家族の絆――

 最初はエフティヒア・ヤナキ女史です。

 
エフティヒア・ヤナキ『後ろの座席で』

イカロス社、2016。

『後ろの座席で』は長編第二作にして、いきなり2017年の「パブリック書籍賞」長編部門で大賞を受賞しています。これは様々な電子・娯楽商品の販売店チェーン「パブリック」が主催する文学賞で、2005年から始まりました。読者の投票によって、長編、短編、翻訳、児童向け、ジュブナイルなど10部門からそれぞれの大賞作品が選ばれます。
 翻訳作品部門のリストを見ると、過去にフィリップ・カーM. J. アーリッジがノミネートされ、イアン・ランキン『寝た犬を起こすな』セバスチャン・フィツェックDas Paketが大賞を獲得しています。2020年の同部門大賞はディーリア・オーエンズ『ザリガニの鳴くところ』です。ただし、別にミステリに特化した賞ではなく、とにかく読者に支持された作品が選ばれるようです。
 2014年同部門の候補者にはアルキ・ゼイの名も見えます。著名なギリシャの女性作家なのですが、邦訳は児童向けの『ヤマネコは見ていた』しかありません。
 ヤナキの『後ろの座席で』は普通文学の強豪が居並ぶ中での長編部門大賞ですから、これは期待がふくらみます。

 女性作家の作品ということで、後期のクリスティー風にまず登場人物の個性がじっくり描かれていくのかなと勝手に想像していましたが、冒頭でいきなり事件が起きます。
 雪の舞うアクロポリスの麓、プラーカ地区の劇場で老演出家の死体が見つかります。顔を叩き潰され、凶器は消えているという……おやおやこれはもしかして、懐かしい1950年代マリス風ミステリの再現でしょうか。顔のない死体はマリスのお気に入りでしたし、劇場の犯罪というのも、密室事件を扱ったマリスの第二作『楽屋の犯罪』エッセイ第1回)へのオマージュのよう。にしても2016年の作品にしてこのテイスト、原点回帰ということなのか?

 被害者ドクサスは三十年近く舞台芸術一筋に歩んできた人。作品は評価されているのですが、過激な演出指導で俳優たちからは暴君として恐れられていました。一方でその家族は謎に包まれており、恋愛の噂も全くありません。動機がどうにも不明です。
 事件の起きたプラーカは十九世紀に急速に発展し始めた、古めかしく過去の記憶を色濃く残す地区です。近隣の住民は保守的な共同体意識で結ばれ、外部の者に対して堅く口を閉ざします。
 しかしドクサスの過去をさかのぼるうち、その見えない壁には亀裂が走り始めます。古い劇場の漆喰壁の下にはおぞましいものが埋められており、銀行の金庫室に保管されていた家族写真にはいるはずのない人物が映っています。共産主義者だった、被害者の父親と警察の奇妙な関係。そして近所の誰もが知りながら語ろうとしない《公然の秘密》。
 こうして逃れられない忌まわしい過去が目を覚まし、続いて思わぬ場所で第二の殺人が起きます……

 主役として捜査にあたるのはアッティカ警察本部殺人課のハリス・コキノス警部。四十代半ばの働き盛りで、大手建築会社の令嬢と結婚して、同僚たちから《王子様》のニックネームをもらっています(《逆玉》ということですね)。が、夫婦の関係はうまくいかず、二年で別れてしまいます。幼い一人息子は経済的に裕福な妻が引き取り、十年以上会っていません。

 主役探偵の私的生活が大変なのは現代ミステリ共通の状況です。
 1990年代のマルカリスのハリトス警部は奥さんとよく冷戦状態になったり、娘の結婚話でヤキモキする程度でした。2010年代のシモス描くカペタノス警部になると、離婚して狭いアパートでひとり暮らし、裁判所に許された娘とのたまの再会を心待ちにしています。アザリアディスのタフな女警部トリピは派手なアクションに飛び込む一方で、娘を女手一つで育て毎朝出勤前に学校まで送っています。

 ギリシャといえば、大家族で、何よりもその絆が強いというイメージですが、 実際は複数世代同居の割合がどんどん減っています。EU統計局の調査では、2008年で三世代同居の家庭は5%ほどで、スペインやチェコ同じ程度です(ヴァランダー警部のスウェーデンでは1%未満)。逆に一人世帯はどんどん増えているようです。
 離婚率はロシアやラトビアほど高くはありませんが、1970年ころから年々増加し、現在件数は六倍にもなっています。ミステリ小説はこの辺の家族の現状を写し取っているということでしょう。 
 
 さて、プラーカ劇場殺人を捜査するコキノス警部に郊外の警察分署から電話がかかってきます。なんと息子が何かやらかして拘留されているらしい。これは俺のメンツにかかわる、同僚にも知られるわけにはいかない、とコキノスはコソコソと分署に出向きます。
 いまや大学院生となった息子ニコスに久しぶりに面会しますが、ほとんど他人同様でまるで親しみは持てず、「今までほったらかしでよくも今頃」と反抗心丸出しの相手にどう対応していいのやら途方に暮れてしまいます。
 別れた妻からもヒステリックに懇願されて、何とか穏便に事を済まそうとしますが、ニコスの罪状が微妙なものだけに、公にもできません。

 こうして、《王子様》は厄介な職務上の苦労だけではなく、人生で初めてぶつかった個人的危機にうろたえながら、奔走する羽目になります。
 この先をどう展開させるかは書き手の力量と持ち味にかかってくるでしょう。作家によっては悩む主役の姿をユーモアたっぷりに、あるいはペーソスを込めて描くかもしれません。
 ヤナキ女史は冷徹です。公私もろもろの面を同時に背負っているのが人間として当然だといわんばかりに、コキノス警部の精神をとことんまで追い込んでいきます。劇場殺人はろくに進展せず焦るばかり。加えて、息子の件は被害者との和解を試みるものの、相手の感情むき出しの攻撃に全く出口が見えません。何とかせねばと、捜査会議を何度も欠席しては周囲の信頼をなくし、上司から降格を脅され……ますます悪循環にハマった精神は崩壊寸前にまで追い詰められます。

 他の作家の先輩刑事たち、例えば、見えざる狡猾な敵に振り回されるベカス警部もスウェーデンの雪原を奔走するアンデシュ警部も捜査で散々な目に遭ってきました。ところがコキノス警部は犯人相手のハードなアクションではなく、息子のデリケートな事件の対処に追われて疲労困憊。一発の弾丸も発射することなく足元の世界が崩れ落ちて行きます。

 ギリシャの女性作家の描く男性警官ヒーローはじつにデリケートで線が細い、という印象を以前から持っていました。《心理の検死解剖》ダネリの描くヴラホス中将や(音楽ミステリ)パパディミトリウの《ビートルズ命》ハリス警部 などそうでした。
 ヤナキもその線での人物造形を試みているように感じます。公私にわたる悩みに追い込まれていることもあるでしょうが、コキノス警部は祖父、父、幼い兄を心臓マヒで亡くし、いつかは自分も同じ病で死ぬのではという強迫観念に取りつかれています。そのためか、事件なんか放り出して海へ行きたい、仕事休んでソファに寝そべりたい、とやたら小学生のような逃避志向が目立ちます。苦境に追い込まれるたびに、人生はリセット自由であるかのように「もし……だったら今ごろ」と妄想しています。証人の尋問や被害者との交渉の場面では、家具やら天井やら部屋の様子が細かく描写されますが、警部本人の眼を通した風景であり、つまりはロクに相手の話を聞いていません。

 このように、コキノス警部の内面の意識と危機が大変なスペクタクルを引き起こしていきます。その点でダネリ風の心理主義的な傾斜を感じはしますが、同時に、アポストリディス風の社会問題にメスを入れようとする狙いも明確に存在します。
 プラーカ殺人は長年家庭に根付いてきた深刻な暴力問題に端を発し、これを共同体という見えない密室が後押した事件です。息子の事件でも別のある社会的偏見があぶり出されます。
 作家自身もインタビューで「ミステリは社会問題を扱う」と明言しています。

 懐かしいスリラー風に幕を開けますが、劇場殺人事件に隠された秘密と、捜査する警官自身の個人的問題が次第に重ね合わされ、被害者が加害者に逆転しかける、あるいは、その差はあいまいであることを主人公が痛感し錯乱していくスリル。この作品の一番のミソはここにあるようです。
 もちろんフーダニットの線は崩さず、最後まで読者を引っ張ります。
 
 『後ろの座席で』という題名は一見凡庸に響きますが、逆にどんな意味なのか考えさせる点で秀逸です。コキノス警部が子供時代にドライブに連れられ車の後部座席から工場の煙突を眺める回想シーンにこの語が現れます。その後何度か登場した後、全く違う状況で別の人物が後ろの座席に座る最終シーンになって、親と子、家族の絆を象徴していることが示唆され、読者もいたたまれない感じになります。
 不思議なデザインの表紙絵も凝っていて、よく見ると内容を暗示しているのに気づきます。

 本作は《アテネ三部作》の一番目で、続く『カワセミの日』(2017年)、『光の町』(2018年)がすでに出ており、いずれもコキノス警部が活躍しています。「カワセミの日Αλκυονίδες μέρες」とは「小春日和」のことですが、ただしギリシャの場合は晩秋ではなく、真冬の合間に見られる麗らかな日を指します。こうしてタイトルを並べると家族の絆が徐々に修復されていくようには見えるのですが……
 ヤナキの最新作は『小さな神の病』(2020年)。ミステリファンのウェブページでよく見かける評判のいい作品はこれです。《深淵三部作》第一作と銘打たれ、やはりコキノス警部続投のようです。

 
エフティヒア・ヤナキ『小さな神の病』

イカロス社、2020。

 ATHENS VOICEというオンライン新聞が特集した2020年長編小説(フィクション部門)ベスト10にも『小さな神の病』は選ばれています。他に選に入ったミステリが《スウェーデンのギリシャ移民警官》ヴァンゲリス・ヤニシス『アマロック』と《国境を超えるハリトス警部》ペトロス・マルカリス『殺しは金になる』という、若手人気ナンバー1と大御所作家ですから、ヤナキにかかる期待がいかに大きいかがわかります。

◆キキ・ツィリンゲリドゥ『沈んだ空』――新タイプのヒーロー誕生――

 もう一冊、キキ・ツィリンゲリドゥのデビュー作『沈んだ空』(2019年)の方はうって変わって、スタイリッシュなアメコミ風のカバー絵。アベンジャーズのメンバーにいても違和感なさそうな、黒ジャンパーに分厚いブーツ、ショートウェーブの赤毛の女。透き通った白い肌に加えて、めったに外さないサングラスのせいで、ニックネームは《ヴァンパイア》。まさに作品中で描かれる通りの主人公ステラ・アダムズ警部の颯爽とした姿です。愛車Ford Fiesta 2006もちゃんと描かれています(ただし作中では、オンボロでドアは軋るわ、何度もエンストしてますが)。

 
キキ・ツィリンゲリドゥ『沈んだ空』

ベル社、2019。

 コキノス警部の場合、内面描写に徹底してこだわり、その分容貌や服装がたいして印象に残らなかったのに対し、ステラは外貌が実に際立っていて、表紙からして女ヒーロー小説を宣言しています。従来のギリシャ・ミステリの野暮なおやじ警官たちとは全く異なる新しいタイプの主役誕生です。

 冒頭、アテネから北東に位置するディカスティカ海岸の沖で素人ダイバーが沈んだ車に出くわし、中から女性の溺死体が発見されます。女性の夫ハリスは家具工場を経営していますが、経済危機以来、経営が思わしくなく倒産寸前。しかもアル中で暴力をふるうDV男です。妻クセニアは海に突っ込む前に睡眠薬を多量に飲んでいました。自殺なのでしょうか? 
 しかし一方で、クセニアには幼い子供が二人いて、国外の高級な養育施設に大事に預けています。愛児を残して自ら命を絶つようには思われません。 
 さらに、彼女には年下の愛人《パニッシャー》(同名ドラマの主人公に似ているところからついたニックネーム)がいて駆け落ちを計画していたことが分かってきます。
 ならば、何者かに殺害されたのか?

 アッティカ警察本部内に新設された「生命と財産を脅かす犯罪捜査課第四部隊」(長い…)を指揮するのが主人公ステラ・アダムズ警部です。ちゃんと部下はいるのですが、切れすぎるが故に単独捜査に走りがちで、署内では近寄りがたい存在。陰で《ヴァンパイア》のあだ名を頂戴しています。
 しかし、彼女の壮絶な過去が語られるにつれ、そのエキセントリックな個性の背景が明らかになっていきます。
 ステラの父親は米国国防省勤務のギリシャ人ですが、ステラ本人はアメリカ育ちです。クワンティコ警察学校を卒業した後、FBIで潜入捜査官を務めていましたが、一年半前テロ事件に巻き込まれます。倉庫で警官隊とテロリストとの激突となり、人質の子供たちを前にハリウッド映画ばりの凄まじいアクションが展開するなか、仕掛けられた爆弾が爆発、閃光が周囲を包みます。
 そのせいで、ステラは光に対し過敏になり、以来サングラスが手放せなくなりました。《ヴァンパイア》は気取りのスタイルではなく、過去の傷から来ているようです。
 最後に犯人たちを地下道に追い詰めますが、一人は射殺したものの、もう一人カリームは両手を潰されながらも姿を消してしまいます。

 この事件がトラウマとなって、ステラの内面が変調をきたし始め、至る所にテロ犯人の影を見るようになります。母親を交通事故で亡くした時もカリームによる謀殺だと信じ込むほど精神状態はめちゃくちゃです。結局、敵を追うあまり違法捜査に走って懲罰をくらい、アメリカを追われ、(妻を亡くしてこちらも傷心の)父親とともにギリシャに帰国します。
 しかし、ステラにとって故国とは名ばかりで、初めての土地には親しみが持てません。その心を象徴するかのように、作品ではたえず雨が降っていて、アテネの上には灰色の《沈んだ空》が広がっています(このへんは外国生まれで後にギリシャに帰国した作家自身の心情が入っているのでしょう)。
 しかも、父のコネで新設課課長に抜擢されたことで、やっかみの目で見る同僚たちも多いようです。

 ギリシャの事件ってなんだかシンプルで小粒ね、とステラは感じます。まあ、アメリカの大がかりなテロ事件に比べればそうでしょうね。
 現在の事件では、容疑者は酒に溺れる夫ハリス、被害者と関係を持った女たらし《パニッシャー》の二人だけ。「どちらかが彼女を殺した(©東野圭吾)」状態で、すぐに解決しそうですが、証拠の決定打がなかなかつかめません。
 それでもステラは直感で犯人を確信します。ホームズやミス・マープルならそのまま信じていいかもしれませんが、しかしステラの場合はちょっと問題ありです。
 というのも、帰国以前にすでに危うくなっていた彼女の精神状態が悪化したためなのか、テロ事件の犯人カリームが大西洋を越えたアテネにまで出没し始めるのです。やがてステラに話しかけるまでになりますが、銃撃戦で死亡したかどうか不明のため、彼女の病んだ妄想なのか、実は生きていた犯人がささやいているのか、判然とせず、ホラー小説めいていきます。
 ステラ警部は一見タフで腕の立つヒーローとして登場します。捜査の中で襲ってくる悪党たちを組み伏せ、部屋では木人椿もくじんとう相手のクンフー・トレーニングを欠かしません(『イップ・マン』シリーズで詠春拳のドニー・イェンが使っているあれです)。が、内面ではひどいトラウマを抱え、過去の記憶に追い詰められていきます。アクションや謎解きに加えて、この内面の悪夢との葛藤が大きな読みどころです。

 後半ではさらに陰惨な事件が続いて起こります。溺死したクセニアの出生の秘密が少しずつ判明するあたりからクリスティー風味の謎解きのスリルがぐんぐん高まり、怒濤の結末へなだれ込みます。犯人二者択一というような単純な謎ではありません。最後の黒幕との対決のこれまた熾烈なこと(何ページも続きます)。

 ステラ警部は孤高の存在で単独行動や不安な心理の描写が多いのはその通りなのですが、実はけっこう周囲に支えられています。今や親代わりとなってあれこれ世話を焼いてくれる癒し系の養父。行きつけのバーのマスターとは互いに尊重しあう同志のような関係。《エンジニア》と呼ばれる師匠からは癒しのひとときをもらいます(途中で明かされるこの人物の正体にはビックリさせられました)。
 部下の警部補たちもそれほど目立ちはしませんが、軽率でひと言多いエレナ、スキンヘッドの巨漢ヨシフ、食いしん坊のパソコンおたくナソスなど、なかなか味がある面々です。特に、いつもピリピリしているステラに対しとぼけた流儀で切り返すナソスが清涼剤になっています。捜査会議で真剣に証拠を検討するメンバーの前にナソスが勿体ぶって袋から取り出したのは巨大なドーナツ。笑ってしまいました。

 なにより派手なアクションが目を引くので、ヤナキ『後ろの席で』とは正反対のテイストですが、ステラの精神状態がどんどん悪化し、現実と空想の境があいまいになっていくさまは、(信用できない語り手ならぬ)信頼できない捜査官という意味でコキノス警部と相通じるところがあります。
 現代ミステリの主役警官たちは心身両面で実に多くのものを背負わされています。

 『沈んだ空』はツィリンゲリドゥのデビュー作ですが、初めから扉ページに《ステラ・アダムズ三部作》と謳っています。最終章には次作での宿敵再登場を予感させる一節もあり、最近人気の三部形式の映画のようです。すでに第二作『炎の地獄』(2020年)が発表され、最終作『冷たい肌』の予告も出ています。

 
キキ・ツィリンゲリドゥ『冷たい肌』

ベル社、2021。
【ステラ・アダムズ警部シリーズ完結編。赤毛、乳白色の肌、サングラス。人間離れしたあぶないヒーロー、ステラ警部を忠実に再現】

 作家はチェコのプラハ生まれで、6歳まであちらで育ったそうです。ギリシャに戻りテサロニキで学業を修めた後、出版・テレビ界で制作やレポーター業に携わっています。現在はプラハに戻って執筆活動中。
 ステラ警部シリーズ以外に、男性作家と共作で『アルセーヌとファントマ』という子供向け作品(犬と猫の探偵物語)を4作執筆しています。可愛らしい表紙ですが、ただしこの共作者は例のキリアコス・アサナシアディス。リレー・ミステリ『黙示録』でもっともおぞましい「白い騎士」のパートを担当した作家です(エッセイ第10回)。子供相手に大丈夫なのか? そう言えば、このアサナシアディスもプラハ在住で、その縁で実現した作品なのでしょう。『沈んだ空』の謝辞の中でも真っ先に名前が挙げられています。

 最後に。めずらしく日本のミステリ作品をツィリンゲリドゥが批評しているので、ちょっと触れておきます。ギリシャ語訳された東野圭吾『容疑者Xの献身』についてです。

 
東野圭吾『容疑者Xの献身』ギリシャ語訳

クリダリスモス社、2012。

 作品自体は高く評価しているのですが、それ以外に彼女は面白いことを書いています。

 自分は日本へ行ったことがないが、日本人に対して、「寡黙、勤勉――ただし仕事への愛からではなく、義務感から――、ある意味の女性嫌悪ミソジニー」といった印象を持っている。これはたぶん自分の想像するステレオタイプだろう。しかし最近二人の日本人作家の作品を読んだが、その印象は変わらなかった。

 「女性嫌悪」というのは、これ以上詳しくは書かれていませんが、伝統的な亭主関白とか、あるいは男女格差指数の低さのことでしょうか? もう一冊の作品は(同じくギリシャ語訳のある)桐野夏生『OUT』ではないかと思います。

◆ちょこっとミニ情報

 毎年行われているギリシャの大々的な文化イベント《アテネ&エピダヴロス・フェスティバル》の一環として、ギリシャ短編ミステリがラジオドラマになり公開されています。フィリポス・フィリプ(六歌仙No. 3)「アメリカ広場のヒバリ」アシナ・カクリ「外人」(六歌仙No. 2)などいずれもカスタニオティス社の『ギリシャの犯罪』シリーズに収められた五作品がもとになっています(この「外人」は私のお気に入りです)。

Open Plan | Radio Plays | ΠΡΟΒΕΣ: Ο Ξένος – YouTube

Open Plan | Radio Plays: “Ο Ξένος” της Αθηνάς Κακούρη – YouTube

http://greekfestival.gr/

【上二つは番組のミニCM。一番下は公開中のラジオドラマ】

 もひとつついでに。カクリ女史の以前の短編「切られた首」を邦訳してみましたので、興味のある方は覗いてみてください。


広島大学 学術情報リポジトリ (hiroshima-u.ac.jp)

 カクリの創造した探偵は三人います。重犯罪事件を扱うゲラキス警部、詮索好きの主婦トゥーラ、国際警察捜査官ダポンテスです。農場での墜落死を捜査する「外人」にはゲラキス警部、古代遺物密輸が絡む「切られた首」にはとぼけた味のダポンテスが登場します。村の毒殺事件というなんともなつかしいシチュエーションの「涙のためのハンカチ」にはトゥーラ夫人が首をつっこんでいます(邦訳は以下に)。


https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/ja/journal/Propylaia/–/25/article/48249

◆欧米ミステリ中のギリシャ人(9)――ホームズ・シリーズのギリシャ人――

(あてにならないと定評のある)ワトスン博士のシャーロック・ホームズ能力評価メモは言語能力に触れていませんが、ホームズはドイツ語やイタリア語に堪能なようです。
 なにしろ第一長編『緋色の研究』(1887年)からして有名な血染めの署名「Rache」が出てきますし(レストレード警部はコケにされてお気の毒)、第一短編の「ボヘミアの醜聞」(1891年)でも謎の依頼人の手紙を目にしたホームズは「動詞を虐待して最後に持ってくるのはドイツ人だね」と即座に見破っています。現在完了形では過去分詞が離れて文の最後に置かれることを言ってるんでしょうね。
「赤い輪」(1911年)では蝋燭の明かりによる通信を偶然見かけて「注意アッテンタ」「危険ペリコロ」などこれはイタリア語の暗号だ、「アッテンタ」の最後は「ア」だから通信相手は女性だな、などと解説してくれます。さらに自分からも「来いヴィエニ
」などと送り、女性の危機を救っています(読解と作文OKということですね)。
 ほかの言語も含めて、このへんは平賀三郎『ホームズおもしろ事典』の「語学の達人ホームズ」の章に詳しく書かれています。

 実はホームズは158もの言語・方言で自分の名前が綴れて発音もできたらしい。当然「Σέρλοκ Χoλμς」や「歇洛克・福爾摩斯」も書けたんでしょうね(見てみたい)。覚えたてのブルガリア語で「何をするつもりだ?」「我が国の恥だ!」などと言って敵をひるませてもいます。作者不詳のギリシャ語による楽しい贋作『シャーロック・ホームズ、ヴェニゼロス氏を救う』(1913-14年)の中のお話ですが(エッセイ第7回)。

 それはともかく、ギリシャ語の腕前についてはよくわかりません。
 ラテン語の引用はあっても、ギリシャ語の例は見つけられませんでした。もちろん教養として知ってはいるのでしょうが(ルパンならホメロスが暗唱できるぜと豪語してます)。
 シリーズ中で現代ギリシャが関係してくるのはもちろん「ギリシャ語通訳」(1893年)です。この作品にはロンドンのギリシャ人が三人登場します。
まず、ホームズの兄マイクロフトと同じアパートに住む縁で事件を持ち込んできたメラス氏(洗礼名は不明)。「肥ってずんぐり、オリーブ色の肌と真っ黒な髪、黒いあご髭に黒い目」と、いかにも南欧風の容貌で、ほとんどすべての言語・・・・・・・・・・が話せるロンドン随一のギリシャ語通訳(ちょっと大げさ)と自ら誇る人物です。

 残りのふたりは、ロンドン見物中にハンサムな悪党に騙されたソフィアと妹救出のために渡英して逆に捕らわれたポールクラティディス兄妹です。富豪令嬢のイメージ通り「背が高く黒髪」のソフィアに対して、ポールも「長身」ですが、拷問にかけられ顔に絆創膏をべったり貼られていて風貌が分かりません。おまけにほとんどセリフなし。
 メラス氏のギリシャ語の質問に対し、ポールは石板石筆で答えますが、悪役たちがギリシャ語を知らないのを利用して、こっそりと意思の疎通を図るのが作品の一番の面白さでしょう。ただし、親切なワトスン博士が読者向けにすべて英訳してくれるので、 つまりはギリシャ語が全然登場しません。

 
The Greek Interpreter, Sidney Paget

【「ギリシャ語通訳」ストランド・マガジンの挿絵。暴行を受けたポール・クラティディスと通訳者メラス(右端)】

 詳細な注釈がついた河出書房新社版『シャーロック・ホームズの思い出』は登場人物のモデルについて、あるシャーロッキアンの論文を引いています。
 それによると、「メラス」や「クラティディス」はギリシャ人名として普通ではなく、耳慣れたものでもないといいます。
 「クラティディス」についてはその通りでしょう。実在する姓ですが、モデルにできるような著名な人物はいないようです。私は見つけられませんでした。
 一方、「メラス」のモデルとしてはヴァシリオス・メラス(1819-1884)という人物が挙げられています。コンスタンチノープルに生まれ、トルコの迫害を恐れてギリシャ、イタリア、ロシアなどへ逃れた後、1849年ころからロンドンに定住し、「メラス兄弟商会」を作って一財産を築きました。語学に優れ文学にも親しんでいたといいます。1878年ギリシャに戻り、祖国の未来を担う子供たちを育てようと基金を設立。子供はいませんでしたが、その遺産により国内に多くの幼稚園が作られ、教育に貢献することになります。いまだ幼児教育の概念のなかった時代のことです。組織は今でも「ヴァシリオス・G・メラス財団」として活動しています。


https://www.idryma-mela.gr/%CE%BF-%CE%B9%CE%B4%CF%81%CF%85%CF%84%CE%B7%CF%82

 上は「ヴァシリオス・G・メラス財団」のHPです。メラス氏の写真もありますが、英国人化してしまったのか、残念ながら髭がない(イメージと違う)。
 しかしヴァシリオス・メラスにはたくさん兄弟姉妹がいます。たとえば……

 
Michail_Melas.jpg (700×931) (wikimedia.org)

【ミハイル・メラス(1833-1897)】

 この弟ミハイルの方が「メラス氏」っぽいですね。
 ミハイル・メラスも大物です。兄とともにロンドンやパリの交易業で成功し、帰国してからは政界に進出してアテネ市長も務めています。兄ヴァシリオス同様に芸術を愛好し、《ディオゲネス・クラブ》ならぬ《アテネ・クラブ》を創設した上流階級の花形でした。

 メラス家はもともとギリシャ北方のイピロス地方の出身で、商人として名を成した家系ですが、(ミハイルのような)政治家、弁護士、軍人、文学者も出しています。本当の姓は別にあったのですが、色黒の家系だったので「黒いメラス」と改姓した、とウィキには書いてあります。

 さてその家系中に、ギリシャ人の誰もが「メラス」と聞いてすぐに思いつく人物がいます。パヴロス・メラス陸軍少尉(1870-1904年)です。ミハイルの息子で(つまりヴァシリオス・メラスの甥)、二十世紀初めにブルガリア相手のマケドニア紛争(1904-08年)で部隊を率いて戦いました。この地域は宗主国オスマントルコから独立を目指す抵抗運動が盛り上がるとともに、ギリシャ人、ブルガリア人、セルビア人、アルバニア人などが互いに争いあう複雑な政情の土地で、その後バルカン戦争、第一次大戦へとつながっていきます。
 パヴロス・メラスは紛争のごく初めにトルコ軍の攻撃で戦死したため、戦場での功績はたいしてないのですが、民族抵抗の象徴、伝説の英雄として語り伝えられることになります。

 
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Pavlos_Melas_–_ph._Gerasimos_Dafnopoulos_(Larisa,_21.08.1904).jpg

【パヴロス・メラス。ラリサ市、1904年撮影。惚れ惚れする男ぶり。国語の教科書にも載っています。】

 メラスの義理の兄イオン・ドラグミス(有名な政治家にして文筆家。政敵により暗殺死)による一種の檄文『殉教者と英雄の血』(1907年)の中にこんな一節があります。

 彼はマケドニアで逝かず。王となりて君臨し続ける。
 ある少女は「ギリシャ人たちの王様はだれ?」と訊かれてためらいなく答えた。
 「パヴロス・メラスよ!」

 さらに、ヴァシリオス・メラスの甥のひとりにディミトリス・ヴィケラスという人物もいます。彼もロンドンのメラス商会で働いていましたが、十九世紀の重要な散文作家としてギリシャ文学史に登場します。政治的にも力があり、1896年の近代オリンピック第一回アテネ大会を実現させた人として記憶されています。
このように、ちょいと地味な通訳者として《ディオゲネス・クラブ》に現れたメラス氏は、実は近代ギリシャ史に深くかかわった一族なのです。

 エッセイ第4回にも書いておきましたが、グラナダTV版「ギリシャ語通訳」(1984年)では、このメラス氏が実際にギリシャ語を話し、ポールも石板にギリシャ語を書いて答えます(メラス役はキプロス出身の俳優アルキス・クリティコスですが、クラティディス兄妹のアントン・アレクサンダー&ヴィクトリア・ハーウッドは英国人俳優です。ただ、ハーウッドはキプロス育ちだそうです)。
 冒頭では、ロンドンに着いたばかりのポールが出迎えた悪党ラティマーに「こんばんはカリスペラ・サス」「妹ソフィアからの手紙を持っていますエホ・エナ・グラマ・アポ・ティ・アデルフィ・ム、ソフィア」などと挨拶しています(原典にないシーン)。
 さらに、ホームズ=ジェレミー・ブレットが最後の場面でみごとなギリシャ語を披露し、しかもこれが事件の解決につながります。この作品最高のシーンです。

 残念ながら、他のホームズ作品にはギリシャつながりはなさそうです。気づいたのは「金縁の鼻眼鏡」(1904年)に名前が出て来るアレクサンドリアのタバコ商人イオニデス氏くらい。河出書房新社版の注釈ではロンドンにあった葉巻製造業イオニデス商会の名を拝借したのだとか。ギリシャ人コミュニティーが残るエジプトの町に結び付けてエキゾチックな風味を出そうとしたのでしょうか。登場人物たちもロシア革命運動に縁があり、長編に仕立てればなかなか面白い伝奇ものになったのではと思わせます。
この作品中でホームズはもらったタバコが異様に気に入って、あっという間に四本吸ってしまいますが、実はこれが事件解決のカギになります。
 クイーン『フランス白粉の謎』にも香水入りタバコというなんとも怪しげな商品を製造するグザントス氏が出てきましたが(こちらも名前だけ)、ギリシャ&タバコはやはりステレオタイプなのか……

 もうひとつ、無理すれば、「三人の学生」(1904年)で某大学のカレッジでこっそりコピーされた試験問題が古代史家トゥキュディデス『戦史』からの引用だった、というのもあります。同じ《歴史の父》でも、ペルシャ戦争を昔話のように楽しく語ってくれるヘロドトス『歴史』に対して、同時代のペロポネソス戦争を鋭く分析してやるぜという意気込みで書かれた、複雑な構文の『戦史』は大学生たちを苦しめたことでしょう。容疑者学生たちの愛想の悪さもうなずけます。一時間半かけてもゲラ刷り校正が終わらない長文問題って、出題者ソームズ先生も人の悪い…… 
 今のギリシャ人にとってもこの作品は難しく、受験生用に虎の巻がいろいろと売られています。アポストリディス『ロボトミー』に出てくるインテリやくざが獄中で読んでいたのもこれでした(エッセイ第4回)。

 
トゥキュディデス『戦史』

高校生用の参考書。
 
アンドレアス・アポストリディス『ロボトミー』

カスタニオティス社、2002。

 ホームズのライバル、ルパン・シリーズにもわずかながらギリシャ人が出てきますが、この話はまた次回。

橘 孝司(たちばな たかし)
 台湾在住のギリシャ・ミステリ愛好家。この分野をもっと紹介するのがライフワーク。現代ギリシャの幻想文学・一般小説も好きです。
 陽光烈しく降り注ぐアポロン生誕の島にアッシャーがかの陰鬱なる館を建てるなら…… M. P. シール「ユグナンの妻」。プリンス・ザレスキーだけじゃなく、こんなのも書いてるんですね。宝石箱のような西崎憲編『短篇小説日和―英国異色傑作選』の中で一番惹かれたのはマージョリー・ボウエン「看板描きと水晶の魚」でした。雨の蕭蕭と降る日にこそ読みたい幻想の一篇。
【M. P. シール「ユグナンの妻」、M. ボウエン「看板描きと水晶の魚」以外にも、あの「炎天」W. F. ハーヴィーや「ポドロ島」L. P. ハートリーのほかの作品が読んでみたい方はどうぞ。】
【ブルース・リーの師匠イップマン(葉問)を主人公とするシリーズの第一作。演ずるドニー・イェン(甄子丹)の動きがとんでもなく美しい。敵役の池内博之も眼光鋭い。台湾ではなぜかよく年末にTV放映されてます。】

【「ボヘミアの醜聞」所収】
【「赤い輪」所収。語学的にはこの暗号解読は怪しいとか――イタリア語にはKがないので暗号の置換が成立しない。ま、ホームズのせいではなく、ワトスンの記録上の混乱でしょう】
【「語学の達人ホームズ」の章にホームズができる(らしい)さまざまな外国語について詳しく書かれています】
【「ギリシャ語通訳」所収】
【グラナダTV版「ギリシャ語通訳」収録】
【「金縁の鼻眼鏡」「三人の学生」所収】

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