アメリカのベストセラー・ランキング

4月25日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. THE HILL WE CLIMB    Stay

Amanda Gorman アマンダ・ゴーマン

今年1月に行われたアメリカ第46代大統領の就任式で、詩を朗読したアマンダ・ゴーマン。史上最年少での抜擢だった。そのときの詩が収められた1冊。オプラ・ウィンフリーが序文を寄せている。

 

  1. 2. THE FOUR WINDS    Stay

Kristin Hanna クリスティン・ハナ

1921年のアメリカ。第一次世界大戦後の新しく楽観的な時代も、女性には結婚という選択肢しかない時代で、エルザ・ウェルコットはよく知らない相手と結婚する。1934年までに大恐慌で世界は一変し、さらに干ばつがエルザの農場を襲う。彼女は愛する土地を守るか、よりよい生活を求めて西に向かうか、苦渋の選択を迫られる。

 

  1. 3. THE MIDNIGHT LIBRARY    Up

Matt Haig マット・ヘイグ

仕事を失い、飼い猫まで亡くして、何もかもうまくいかない、だれからも必要とされないと絶望したノーラは自殺を図る。そして生と死のあいだにある謎めいた図書館にたどり着く。所蔵されている無数の本は、自分が選ばなかった人生の物語であり、オリンピックのメダリストになる人生も母親になる人生も、自由に試すことができるらしい。

 

  1. 4. GOOD COMPANY                      New!

Cynthia D’Aprix Sweeney シンシア・ダプリ・スウィーニー

人気アニメの声優フローラは、夫の小さな劇団を長年支えてきた。あるとき、昔紛失したはずの夫の結婚指輪を見つけたのをきっかけに、夫への不信感、信頼していた女友達への疑惑が生まれ、幸せで平穏だと思っていた人生の基盤が揺らぎはじめる。

 

  1. 5. THE RED BOOK    Down

James Patterson and David Ellis ジェイムズ・パタースン、デイヴィッド・エリス

ビリー・ハーニー刑事の活躍を描くシリーズの2作目。シカゴ市の西側で、走行中の車から人が撃たれるという事件が起きるが、ビリーはいちはやく解決へと導く。しかし彼の本能は、被害者はほかにもいると告げていた。シカゴ市の内部に巣食う悪について調べるうち、ビリーは自身が撃たれた過去の事件へと引きもどされることになる。

 

  1. 6. FIRST PERSON SINGULAR                           New!

Haruki Murakami 村上春樹

村上春樹の短編小説集『一人称単数』の英訳版。短歌を詠むある女性との出会いを回想した「石のまくらに」、外見の醜い女性と好きな音楽で意気投合する「謝肉祭」、温泉宿で猿と会話する奇譚「品川猿の告白」など8作が収められている。

 

  1. 7. NORTHERN SPY                           New!

Flynn Berry フリン・ベリー

BBCプロデューサーのテッサは、IRAによるガソリンスタンド襲撃のニュースを見て、信じがたいことに襲撃犯のひとりが妹のマリアンだと気づく。当局から関与を疑われるなか、テッサは妹から協力を求められるが、応じれば自分の幼い息子が危険にさらされるのは目に見えていた。

 

  1. 8. THE INVISIBLE LIFE OF ADDIE LARUE    Down

V.E. Schwab V.E.シュワブ

17世紀末のフランスに生まれたアディー・ラルーは、望まない結婚と平凡な暮らしから逃れるために悪魔と取引をする。しかし魂と引き換えに、永遠の命とともに与えられたのは、誰と出会っても相手の記憶から消えてしまうという運命だった。孤独なアディーの人生に変化が訪れるのは300年が経ったころ、彼女を憶えていられる人物が現れたときだった。

 

  1. 9. WIN    Down

Harlan Coben ハーラン・コーベン

マイロン・ボライターの親友としてシリーズでも人気のキャラクター、ウィンザー・ホーン・ロックウッド三世(通称ウィン)を主人公とする新シリーズ。NYCのペントハウスで殺人事件が起こり、部屋には過去に大富豪のロックウッド家から盗まれたフェルメールの絵と、ウィンのイニシャルが記されたスーツケースが残されていた。それは、おじが殺害され、従妹パトリシアが誘拐され5か月ものあいだ監禁された20年前の未解決事件とのつながりを示すものだった。

 

  1. 10. KLARA AND THE SUN    Down

Kazuo Ishiguro カズオ・イシグロ

世界同時発売されたノーベル文学賞受賞作家の最新長篇。人工知能を搭載し、人間の子供の親友になるために作られたロボットである「人工親友」のクララは、ジョジーという病弱な少女と出会い、友情を育んでいく。邦題は『クララとお日さま』、土屋政雄訳、早川書房より刊行。

 

【まとめ】

新しく3作が登場しました。4位のスウィーニーは2016年にランクインしたデビュー作”The Nest”につづき2作目。6位の村上春樹は昨年刊行された短編集の英訳版で、翻訳はフィリップ・ガブリエル。7位のベリーについては、エドガー賞最優秀新人賞受賞作『レイチェルが死んでから』(田口俊樹訳 早川書房)が2018年に刊行されています。今回も姉妹の物語です。圏外ではキャロライン・ケプネスのYou Love Meが11位にあがってきました。ケプネスの邦訳では2016年に『YOU』(白石朗訳 講談社)が出ています。

 

 

 

唐木田みゆき(からきだ みゆき)

翻訳者です。訳書にアンドリュー・メインの生物学探偵セオ・クレイ・シリーズ『森の捕食者』、『街の狩人』、サマンサ・ダウニングの『殺人記念日』など。