アメリカのベストセラー・ランキング

11月28日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. THE STRANGER IN THE LIFEBOAT    Stay

Mitch Albom ミッチ・アルボム

船舶の爆発事故が起き、生存者9名がボートで漂流しながら三日間救助を待っていた。あきらめの雰囲気が漂うなか、波間にひとりの男が浮かんでいる姿が見え、助けだしてボートに乗せることになる。その男はなんと、自分が神であると名乗り、信じる者のみが生きのびられると言うのだった。神の助けを待つ者たちの前に本物の神があらわれたのだろうか、それとも――

 

  1. 2. THE DARK HOURS    New!

Michael Connelly マイクル・コナリー

大みそかのカウントダウンで賑わうハリウッド。年明け早々、伝統行事として街中で浮かれ騒ぐ人たちが空に向けて撃った銃弾に当たって死んだと思われる、自動車修理工場のオーナーの死体が見つかる。現場に駆けつけたLA市警のレネーは、彼の死は喧騒のなかで撃たれた銃弾のせいではないと判断、さらに、未解決殺人事件との関連に気づく。

 

  1. 3. THE JUDGE’S LIST    Down

John Grisham ジョン・グリシャム

フロリダ州で裁判官への苦情申立てについて調査する弁護士レイシー・ストルツが活躍する2016年刊行の“THE WHISTLER”の続編。20年前に父親を殺されたという女性ジェリーがレイシーのもとにやってくる。事件は未解決だが、ジェリーはある容疑者の名前をあげ、被害者はほかにも複数いると話す。その容疑者とは、なんと裁判官だというのだが――

 

  1. 4. THE WISH    Up

Nicholas Sparks ニコラス・スパークス

マギーは16歳のときに、ノースカロライナ州の離島であるオクラコーク島に住む叔母と同居することになる。そして島で出会ったブライスという十代の若者を通じて、島の美しさと写真の魅力に取り憑かれる。それから20年以上が経過した2019年、マギーは写真家としてNYでギャラリーを持つまで成功していたが、自身の病に悩まされる。そんな折に心を占めていたのは、十代のころの恋の思い出だった。

 

  1. 5. NEVER    New!

Ken Follett ケン・フォレット

サハラ砂漠で減りつづけるオアシス、盗まれたアメリカ軍のドローン、日本の無人島、とある国が隠し持つ致死性の劇薬。これらは容赦なく、世界を危機に陥れようとしていた。そんななかアメリカ大統領のポーリーン・グリーンは、若い女性諜報員、ジハーディストに扮するスパイ、中国のスパイ組織のリーダーとともに、世界戦争を防ごうと奮闘する。

 

  1. 6. BETTER OFF DEAD     Down

Lee Child and Andrew Child リー・チャイルド、アンドリュー・チャイルド

リー・チャイルドと弟アンドリューの共同執筆による、ジャック・リーチャー・シリーズ第26作。ジャックはアリゾナ州のメキシコ国境のとある町で、不可解な交通事故から元軍人のFBI女性捜査官ミカエラを救う。ミカエラは危険な悪の組織から双子の弟を救い出そうとしていた。ジャックは組織の謎めいたリーダー、デンドンケルと対決する。

 

  1. 7. GAME ON    Down

Janet Evanovich ジャネット・イヴァノヴィッチ

ステファニー・プラム・シリーズ第28作。元同僚であるディーゼルと再会したステファニーは、偶然にもふたりが同じ指名手配犯、オズワルド・ウェンズデーを追っていることを知る。オズワルドは国際的なハッカーで、テクノロジーに詳しいとは言えないステファニーは自身の経験や捜査の手腕を頼りに犯人を追っていく。

 

  1. 8. THE LINCOLN HIGHWAY    Down

Amor Towles エイモア・トールズ

1954年、18歳のエメットはカンザスの少年拘置所を出てネブラスカへもどる。母はずっと前に失踪、父が最近病死したため、8歳の弟とともにサンフランシスコで人生をやりなおそうとリンカーンハイウェイを西へ向かおうとする。ところが、拘置所から少年ふたりが隠れてエメットについてきていた。4人は古いスチュードベーカーに乗って東へ向かう。

 

  1. 9. THE SENTENCE    New!

Louise Erdrich ルイーズ・アードリック

フローラは2019年の死者の日(万霊節)に死んだ。しかし彼女はゴーストとなり、ミネアポリスにある小さな独立書店に居座りつづける。トゥーキーは刑務所を出所してから本を売る仕事に就いたが、フローラがなぜ書店に居座りつづけるのか、その謎を解かざるを得なくなる。と同時に、翌年の死者の日までの1年間に、ミネアポリスで起こるさまざまなことと向き合う。

 

  1. 10. BILLY SUMMERS    Up

Stephen King スティーヴン・キング                           

元軍人で凄腕のスナイパーである殺し屋ビリー・サマーズは、ターゲットが真の悪人である場合だけに手を下すと決めていた。そしてビリーは現在の仕事を最後に引退しようと考え、ターゲットのいる新たな町へと向かう。そこでビリーは自身の半生を振りかえりながら書き綴っているうちに小説執筆に目覚め、作家のふりをして任務遂行の時機を待つことにする。

 

【まとめ】

2位、5位、9位に新作がランクインしました。2位は、マイクル・コナリーのふたつの人気シリーズの主人公、レネー・バラードとハリー・ボッシュがタッグを組むシリーズの4作目です。ハリウッドでは、年越し行事として銃を撃つのが伝統とのこと。もちろん、本物ではないでしょうが、なんとも物騒です。5位の“NEVER”は単にスリラーにとどまらず、世界中を駆け巡るアクション満載の必読の作品とのことです。舞台が現在で、アメリカ大統領が女性というのも興味を惹かれます。9位のルイーズ・アードリックはネイティヴ・アメリカンにルーツを持つ作家として、先住民の物語を何作も発表、全米批評家賞や世界幻想文学大賞など、いくつもの賞を受賞しています。

 

吉野山早苗(よしのやま さなえ)

翻訳者です。おもな訳書に〈英国少女探偵の事件簿〉シリーズ、〈ニューヨーク五番街の事件簿〉シリーズ(いずれもコージーブックス)など。