今回より告知の後援をいただくことになりました、やつはみ喫茶読書会、その四十七冊目のレポートをお送りします。
 去る11月25日(土)、快晴なれど風が強く寒い日でした。信州は長野県松本市、源智の井戸のそば、お寺の境内にある喫茶店・半杓亭さんにて四十七冊目の読書会が開催されました。
 翻訳ミステリー大賞シンジゲートさんより会を知った方が新たに2名、読書会そのものが初参加の方が1名、何度もやつはみに参加してくださったことのある方々で、総勢12名での読書会でした。

 今回の課題図書はスティーヴン・ミルハウザー『エドウィン・マルハウス』(河出文庫)でした。この作品は1972年に発表された彼のデビュー作(!)です。天才作家エドウィン・マルハウスは、傑作『まんが』を遺して11歳で夭折しました。語り手である親友のジェフリーが、類稀な記憶力で彼の評伝を描いた、というのがこの小説の結構です。1990年、福武書店から出た邦訳が絶版となっていましたが、2003年に白水社から復刊され、2016年に河出文庫に収録されました。翻訳者・岸本佐知子をして、「これが復刊されるまでは死ねない」と言わしめる作品を参加者はどのように読んだのでしょうか。

「とても切ないお話で胸がキュンキュンした。文章がすごく素敵で、子どもがもつ季節感があって、一行足りたとも飛ばしたくない」
「もしかしてほかの○○○もジェフリーが○○た?」
「読むのに3週間ぐらいかかった。自然の表現がよかった」
「登場人物の愛らしさにキュンキュンした。1972年にこんなハイブロウな小説が出たとは驚いた」
「ある芸術家の肖像であり、ミステリーに引きつけて読んだ」
「ジェフリーのエゴが筆致から見え隠れする。違うエンディングもあったんじゃないか。空や夜の色遣いがすごくて絵本にしたらどうか」
「作中人物による『復刻版によせて』と『 初版へのまえがき』があり、さらに本編を書いている、という設定がおもしろかった」
「描写の情報量の多さがすごかった。特によだれのクレッシェンドしていくところが」
「読書会でとりあげてもらってよかった。ジェフリーのエドウィンに対する『おれのもの』が見えるようだった。そしてなにがいったいそうさせるのか」
「読みたかった作家だったのですごくタイミングがよかった。月明かりの描写がきれい。『まんが』の影の存在にゾッとした」
「芸術家って恐いなと思った。濃密な描写がだんだんと読者の記憶と混じっていって自分が体験したことか作中で読んだことかだんだんとわからなくなってくるのがすごかった」

 今回のおやつは豆乳プリンでした。あいまあいまにおやつを食べながら疑問点やよかったところなどで会話がはずみました。そして気がつくとあっという間に1時間半が経ち、読書会は終了となりました。次回の告知を行って、松本の夜にくり出したのでした~。皆さま、ご参加ありがとうございました!

月元健伍(つきもとけんご)
やつはみ喫茶読書会・主宰。小説を書いたり読んだり。特にSFを好む。まつもと一箱古本市もお手伝いしています。
Twitterアカウント:@yatsuhamibook