アメリカのベストセラー・ランキング

1月21日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. THE WOMAN IN THE WINDOW    New!

A.J. Finn A・J・フィン

夫が娘を連れて出ていったあと、マンハッタンの家でひとり暮らす心理学者のアナ・フォックス。広場恐怖症の彼女は、こもりきりの部屋で酒を飲み、古いサスペンス映画を見ては、部屋の窓からカメラのレンズ越しに隣人たちの生活を覗き見していた。ある日、新しく人が越してきた向かいの窓を覗き見していた彼女は、ある犯罪の現場を目撃してしまうのだが……。20世紀フォックスで映画化が予定されている、新鋭による心理スリラー。

 

  1. 2. ORIGIN    Down

Dan Brown ダン・ブラウン

元教え子で天才コンピューター科学者のカーシュが行う重大なプレゼンテーションを見るため、スペインのビルバオ・グッゲンハイム美術館を訪れたラングドン。だが、あらゆる信仰の根幹を揺るがす大発見の内容が明かされようとした瞬間、カーシュが射殺され……われわれはどこから来て、どこへ行くのか。女性館長アンブラとともに、ラングドンは人類の起源と運命をめぐる謎を追う。神の存在意義を問うシリーズ第5作。KADOKAWAより邦訳が今春刊行予定。

 

  1. 3. THE ROOSTER BAR    Down

John Grisham ジョン・グリシャム

ワシントンDCのロースクールに通う同級生のマーク、トッド、ゾーラ。卒業を半年後に控えたある日、学費ローンに苦しむクラスメートのひとりが自殺したことをきっかけに、3人はロースクールの経営母体であるファンドが学生ローン専門の金融機関も営み、貸付で儲けるために、ほかのどのロースクールにも受からない学生たちを入学させていたことを知る。

 

  1. 4. LITTLE FIRES EVERYWHERE    Up

Celeste Ng セレスト・イン

90年代後半のオハイオ州シェイカーハイツ。生活に必要なものすべてが計画的に整えられた、秩序正しい安定した郊外の町。そこに暮らす多くの人々と同様、リチャードソン一家も絵に描いたような幸せな日々を送っていた。しかし、あるとき一家の所有する貸家に謎めいたアーティストの母娘が移り住み、やがて一家とコミュニティーがゆらぎはじめる。

 

5.SING, UNBURIED, SING    New!
Jesmyn Ward ジャスミン・ウォード

アメリカ南部ミシシッピ。幼い妹とともに祖父母のもとで暮らす13歳の少年ジョジョは、大人の男になるとはどういうことかを考えている。母親のレオニーは、若くして親になった黒人女性で、ドラッグの問題や子供たちの父親である服役中の白人男性のことなどさまざまな苦悩を抱えている。ある日、ジョジョたちの父親の出所の知らせを受けたレオニーは、子供たちを車に乗せて刑務所へと向かう。2017年度全米図書賞受賞作。

 

6.ROBICHEAUX    New!
James Lee Burk ジェイムズ・リー・バーク

ロビショーの妻モリーを事故で死なせた男が殺された。傷心のまま捜査にあたっていたロビショーは、調べを進めていくうち、自分がその殺人事件の容疑者となる可能性を知る。1990年の『ブラック・チェリー・ブルース』でエドガー賞を受賞した、ニューオリンズの刑事デイヴ・ロビショー・シリーズ第21作。

 

  1. 7. UNBOUD    New!

Stuart Woods スチュアート・ウッズ

いまは別名でハリウッドの映画プロデュサーをしている元CIAエージェントのテディ・フェイは、身に降りかかった不幸な出来事から立ち直るため、休暇をとって友人のバリントンとともにサンタフェを訪れた。そこで思いがけない復讐の機会を手に入れる。ニューヨーク市警の刑事から弁護士に転じたストーン・バリントンを主人公とするシリーズの第44作。

 

  1. 8. THE PEOPLE VS. ALEX CROSS    Down

James Patterson ジェイムズ・パタースン

刑事アレックス・クロス・シリーズ第25作。宿敵ゲイリー・ソーンジの信奉者を正当防衛で撃ち殺したクロスは、殺人警官の汚名を着せられ、裁判にかけられることに。停職処分を受け、裁判を待つ間に開いたカウンセリングオフィスに、昔の相棒サンプソンが訪ねてくる。サンプソンから、ブロンド女性の連続失踪事件の解決に手を貸してほしいと頼まれたクロスは、停職中にもかかわらず、キャリアを賭して捜査に乗りだす。

 

  1. 9. THE MIDNIGHT LINE    Down

Lee Child リー・チャイルド

ジャック・リーチャー・シリーズの第22作。中西部の小さな町をあてもなく歩いていたリーチャー。質屋の店先で、名門ウエストポイント陸軍士官学校のクラスリングを目にして立ちどまる。ウエストポイント出身者のひとりとして、それが簡単に質入れなどできない卒業記念の大切な品だと知っていたからだ。指輪のサイズはおそらく女性用。何かがおかしいと直感したリーチャーは、持ち主の足跡をたどり、西へ向かう。

 

  1. 10. BEFORE WE WERE YOURS   New!

Lisa Wingate リサ・ウィンゲイト

1939年テネシー。4人の弟、妹たちとともに何者かに連れ去られた12歳のリル・フォスは、二度と両親のもとに戻ることはなかった。時は流れ現在、サウスカロライナの弁護士になったエイヴリー・スタッフォードは、かつてテネシーの孤児院でおこなわれていたという違法な養子あっせん事業を調べていくうち、南部の名家といわれる自分の家族の過去を知ることに。1920年代から50年代にかけて実際にあった出来事にもとづくヒストリカルノヴェル。

 

【まとめ】

今週は5作があらたにトップテン入りしました。1位に初登場のA・J・フィンは、『裏窓』などヒッチコックの映画や、『ガール・オン・ザ・トレイン』など女性主人公の心理スリラーを強く意識した作風のよう。デビュー作ながら、ギリアン・フリンやルース・ウェア、ルイーズ・ペニー、スティーヴン・キングらがこぞって絶賛、出版前に映画化権が売れたことでも話題になっています。5位のジャスミン・ウォードは2013年の“SALVAGE THE BONES”に続き本作で2度目の全米図書賞受賞を受賞。昨年10月15日付リストで15位に登場後、今週初のトップテン入りです。6位のジェイムズ・リー・バークは、2度のエドガー賞長編賞受賞作家による人気シリーズ最新作。邦訳は8作目の『燃える天使』(角川文庫)まで刊行されています。7位のスチュアート・ウッズはすでに44作を数える長寿シリーズ。そして、今週はじめてトップテン入りを果たした10位のリサ・ウィンゲイトは、昨年6月の刊行後、8月から11月にかけてほぼ毎週15位までにランクインしていた長く売れているベストセラー作品です。

 

  1. 吉井智津(よしい ちづ)

    大阪在住の翻訳者です。訳書にアラベラ・カーター・ジョンソン『小さなモネ―アイリス・グレース―自閉症の少女と子猫の奇跡』(辰巳出版)など。

    来月、大阪で新しい読書会が始まります。ジャンルを限定せず翻訳書を読んでいく大阪ノンジャンル翻訳読書会です(第1回は2月24日に開催。詳しくは近日中に掲載予定の告知記事をご覧ください)。全国翻訳ミステリー読書会の新しい仲間として、どうぞよろしくお願いいたします。なお、次回の大阪翻訳ミステリー読書会は、もう少し先になりますが、ただいま準備中。こちらもどうぞよろしくお願いいたします。