アメリカのベストセラー・ランキング

4月1日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

  1. 1. THE RISING SEA    New!

Clive Cussler and Graham Brown クライヴ・カッスラー、グレアム・ブラウン 

カート・オースチンが活躍する、NUMAファイル・シリーズの15作目。世界中で急激に加速する不自然な海面上昇。その原因を究明すべく、カート・オースチン率いるNUMAのメンバーは調査に乗りだした。やがてカートは、東シナ海の海底で怪しげな採掘作業が行われているのを発見するが、その影では、太平洋の力の均衡を揺るがし、大勢の命を脅かす危険な計画が進行していた。 

 

  1. 2. THE GREAT ALONE    UP

Kristin Hannah クリスティン・ハナ

ベトナム戦争で捕虜となり、心に深い傷を負ったアーントは、帰国後に妻子を連れてアラスカに移住し、大自然に囲まれた新たな生活をはじめる。親切な住民たちの協力もあり、滑りだしは順調に思えたが、寒さが厳しさを増すとともにアーントの精神状態が悪化し、一家は試練の冬を迎える。ロングセラーとなった『ナイチンゲール』の作者による新作。

 

  1. 3. THE ESCAPE ARTIST    Down

Brad Meltzer ブラッド・メルツァー

画家のノラはアメリカ陸軍に招聘され、戦闘後の現場を描くように訓練された兵士でもある。その彼女が、アラスカの秘密軍事基地を飛び立った飛行機から転落死する。政府はノラの死を正式に認めたが、任務中に死亡した兵士たちの遺体回収にあたるジグは、彼女が生きていることを知ってしまう。

 

  1. 4. LITTLE FIRES EVERYWHERE    Stay

Celeste Ng セレスト・イン

90年代後半のオハイオ州シェイカーハイツ。生活に必要なものすべてが計画的に整えられた、秩序正しい安定した郊外の町。そこに暮らす多くの人々と同様、リチャードソン一家も絵に描いたような幸せな日々を送っていた。しかし、あるとき一家の所有する貸家に謎めいたアーティストの母娘が移り住み、やがて一家とコミュニティーがゆらぎはじめる。

 

  1. 5. THE WOMAN IN THE WINDOW    Stay

A.J. Finn A・J・フィン

夫が娘を連れて出ていったあと、マンハッタンの家でひとり暮らす心理学者のアナ・フォックス。広場恐怖症の彼女は、こもりきりの部屋で酒を飲み、古いサスペンス映画を見ては、部屋の窓からカメラのレンズ越しに隣人たちの生活を覗き見していた。ある日、新しく人が越してきた向かいの窓を覗き見していた彼女は、ある犯罪の現場を目撃してしまうのだが……。20世紀フォックスで映画化が予定されている、新鋭による心理スリラー。

 

  1. 6. AN AMERICAN MARRIAGE    Up

Tayari Jones タヤリ・ジョーンズ

新婚夫婦のロイとセレスチャルは順風満帆の人生を送っていたが、ある日ロイが身に覚えのない罪で逮捕され、12年の禁固刑を科されてしまう。セレスチャルは孤独に耐えられず、別の男に惹かれていくが、5年後に突然ロイが釈放され、家に帰ってくることとなる。

 

  1. 7. BEFORE WE WERE YOURS    Up

Lisa Wingate リサ・ウィンゲイト

1939年テネシー。4人の弟、妹たちとともに何者かに連れ去られた12歳のリル・フォスは、二度と両親のもとに戻ることはなかった。時は流れ現在、サウスカロライナの弁護士になったエイヴリー・スタッフォードは、かつてテネシーの孤児院でおこなわれていたという違法な養子あっせん事業を調べていくうち、南部の名家といわれる自分の家族の過去を知ることに。1920年代から50年代にかけて実際にあった出来事にもとづくヒストリカルノヴェル。

 

  1. 8. THE FLIGHT ATTENDANT    New!

Chris Bohjalian クリス・ボジャリアン

ヘビードランカーのフライト・アテンダント、カッサンドラ・ボウデンは、酔って羽目を外しては記憶をなくすという生活を繰りかえしていた。いつものように深酒をした翌朝、ドバイのホテルで目を覚ますと、隣には見知らぬ男が血を流して死んでいた。もしかして自分がやったのかもしれない。警察を呼ぶのをおそれたカッサンドラは、次々と嘘を重ねていく。

 

  1. 9. CARIBBEAN RIM    New!

Randy Wayne White ランディ・ウェイン・ホワイト

元NSA局員でフロリダに住む海洋生物学者ドク・フォード・シリーズ第25作。トレジャーハンターの旧友カールは難破船から貴重なスペインの硬貨を引きあげたが、フロリダ州歴史資源局の局長に持ち逃げされてしまう。カールから相談を受けたドク・フォードは、持ち逃げした男を追跡するが、間もなく男を追っているのは自分だけではないことがわかる。

 

  1. 10. FIFTY FIFTY    Down

James Patterson and Candice Fox ジェイムズ・パタースン、キャンディス・フォックス

オーストラリアを舞台とした刑事ハリエット・ブルー・シリーズ第2作。ハリエットは連続殺人容疑で逮捕された兄の無実を証明しようとするも、トラブルを起こしてシドニーから人口わずか75人の田舎町へと飛ばされる。だが、その町を壊滅させかねない大量殺戮計画が明らかになり、まもなく最初の殺人事件が起きる。

 

【まとめ】

今週も新作が3作ランクインしました。初登場1位となったのは、NUMA(国立海中海洋機関)が活躍するNUMAファイル・シリーズの新作。邦訳は第8作の『パンデミックを阻止せよ』まで刊行されています(いずれも新潮社)。8位は『助産婦が裁かれるとき』の著者クリス・ボジャリアンの新作です。著者のインタビューによれば、本作は、アルメニアから飛行機で帰国した晩、ニューヨークのバーで突然思いつき、バーテンダーからありあわせの紙をもらって、その場で書きはじめた作品だとか。9位にランクインしたのはドク・フォード・シリーズの第25作目ですが、エドガー賞受賞作家ブルース・ダシルヴァから、「これが1作目だったら、決してシリーズ化はされなかっただろう」と、ワシントンポスト紙で酷評を受けています。このシリーズの邦訳は、第4作『波間に消えた叫び』、第5作『サントーヤ家の秘宝』のみ。2013年頃CBSでドラマ化の話も持ちあがりましたが、実現には至りませんでした。ベスト10外では特に大きな動きはありませんでした。

 

  1. 服部理佳(はっとり りか)

    翻訳者。3月24日に新しい訳書『ザ・ヘイト・ユー・ギヴ(あなたがくれた憎しみ)』(岩崎書店)が発売されました。2017年ボストングローブ・ホーンブック賞、2018年ウィリアム・C・モリス賞等、数々の賞を受賞した話題作で、ニューヨークタイムズベストセラー(YA部門)でも、初登場から55週連続でベストテンの上位をキープし続けています。ブラック・ライブス・マターを扱った社会派YAですが、エンターテイメントとしても楽しめる作品で、現在アマンドラ・ステンバーグ主演の映画製作が進行中です。訳しながら何度も泣いてしまったほどいい作品でしたので、よろしかったらお手にとってみてください。