アメリカのベストセラー・ランキング

4月29日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. CIRCE    New!

Madeline Miller マデリン・ミラー

ギリシャ神話に登場する太陽神ヘリオスの娘キルケー。恋人を奪った海のニンフ、スキュラを魔法で怪物に変えた彼女はゼウスの怒りを買い、アイアイエー島に追放されるが、そこでオデュッセウスと出会って恋に落ちる。デビュー作『アキレウスの歌』に続き、ギリシャ神話に題材をとった著者の長編第2作。

 

  1. 2. AFTER ANNA    New!

Lisa Scottoline リザ・スコットライン

シングルファザーのノアと再婚したばかりのマギーのもとに、前夫とのあいだの娘アナから、父親を事故で亡くしたと連絡が入る。マギーは生後まもなく手放してしまったアナとの17年ぶりの再会を喜び、呼び寄せて一緒に暮らしはじめるが、わずか数週間後にアナが殺害され、ノアが容疑者として逮捕されてしまう。スタンドアローンの心理サスペンス。

 

  1. 3. I’VE GOT MY EYES ON YOU    Down

Mary Higgins Clark メアリ・ヒギンズ・クラーク

18歳のケリーは親の留守中に友人たちを自宅に呼んでパーティーを開くが、翌日に死体となって庭のプールの底から発見される。警察はパーティー中にケリーと言い争っていた恋人に疑いをかけるが、本人はかたくなに関与を否定する。サスペンスの女王によるフーダニット。

 

  1. 4. THE THIEF    New!
  2. R. Ward J・R・ウォード

 

〈黒き剣兄弟団〉に属するヴァンパイアの戦士たちの生きざまを描くパラノーマル・ロマンス、ブラック・ダガー・ブラザーフッド・シリーズ第16作。今作ではヴァンパイアのアセイルと人間のソーラの恋とともに、〈兄弟団〉戦士たちの新たなる敵との戦いが描かれる。

 

  1. 5. SHOOT FIRST    New!

Stuart Woods スチュアート・ウッズ

ニューヨーク市警の刑事から弁護士に転じたストーン・バリントンを主人公とするシリーズの第45作。バリントンはフロリダ州キーウエストでIT起業家のメグと知りあい、一緒にゴルフを楽しんでいたところ、何者かに狙撃される。メグはかつての共同経営者から新しい自動運転用ソフトウェアをめぐって命を狙われているというのだが……

 

  1. 6. THE FEMALE PERSUASION    Down

Meg Wolitzer メグ・ウォリッツァー

大学に入学したころのグリーアは引っこみ思案の少女だったが、著名なフェミニストであるフェイスの講演を聞いて感動し、みずからの生き方を変えたいと望む。卒業後、憧れていたフェイスのもとで働きはじめたものの、恋人との不和や理想と現実のギャップに悩まされることになる。

 

  1. 7. THE SIXTH DAY    New!

Catherine Coulter and J. T. Ellison キャサリン・コールター、J・T・エリソン

英国貴族出身のFBI捜査官ニコラスとマイクのコンビが活躍する新FBIシリーズの第5作。ドイツの副首相がイギリスの首相官邸前で死亡し、ドローンを使った暗殺の疑いが浮上する。ニコラスとマイクがMI5の協力も得て捜査を進めるうち、ドラキュラ公と呼ばれたヴラド3世の子孫が背後にいることがわかってくる。

 

  1. 8. LITTLE FIRES EVERYWHERE    Down

Celeste Ng セレスト・イン

90年代後半のオハイオ州シェイカーハイツ。生活に必要なものすべてが計画的に整えられた、秩序正しい安定した郊外の町。そこに暮らす多くの人々と同様、リチャードソン一家も絵に描いたような幸せな日々を送っていた。しかし、あるとき一家の所有する貸家に謎めいたアーティストの母娘が移り住み、やがて一家とコミュニティーがゆらぎはじめる。

 

  1. 9. BEFORE WE WERE YOURS    Down

Lisa Wingate リサ・ウィンゲイト

1939年テネシー。4人の弟、妹たちとともに何者かに連れ去られた12歳のリル・フォスは、二度と両親のもとに戻ることはなかった。時は流れ現在、サウスカロライナの弁護士になったエイヴリー・スタッフォードは、かつてテネシーの孤児院でおこなわれていたという違法な養子あっせん事業を調べていくうち、南部の名家といわれる自分の家族の過去を知ることに。1920年代から50年代にかけて実際にあった出来事にもとづくヒストリカルノヴェル。

 

  1. 10. RED ALERT    Down

James Patterson and Marshall Karp ジェイムズ・パタースン、マーシャル・カープ

ニューヨーク市警の特命捜査班“レッド”所属のザック・ジョーダンとカイリー・マクドナルドの男女コンビが活躍するシリーズの第5作。有名な映画プロデューサーが死体で発見される一方、爆弾騒ぎが起こり、ザックとカイリーは捜査に奔走する。

 

【まとめ】

今週は5作が初登場ランクインを果たしました。1位はデビュー作『アキレウスの歌』(早川書房)でオレンジ賞に輝いた著者が6年ぶりに発表した長編第2作。ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』に登場する魔女キルケーを、たくましく生きる現代的ヒロインとして造形することで神話に新たな形を与えた一作です。4位のブラック・ダガー・ブラザーフッド・シリーズは第6作『漆黒に包まれる恋人』(二見文庫)まで邦訳されています。また7位の新FBIシリーズも第1作から第4作まで邦訳が出ており、前作にあたる『鼓動』(二見文庫)は今年2月に刊行されています。トップテン外の15位には、ジョー・ネスボの“MACBETH”が入りました。これはシェイクスピアの戯曲を人気作家たちが翻案するホガース・シェイクスピアという企画の一冊で、ドラッグが蔓延する1970年代のスコットランドを舞台に、警察の組織犯罪対策部のマクベスが暗躍するノワールとのことです。

 

 

  1. 満園真木(みつぞの まき)

    東京在住の翻訳者。訳書はヴィンセント・ディ・マイオ、ロン・フランセル『死体は嘘をつかない 全米トップ検死医が語る死と真実』(東京創元社)、バリー・ライガ〈さよなら、シリアルキラー〉シリーズ(創元推理文庫)、リサ・ガードナー『棺の女』、ベリンダ・バウアー『視える女』(ともに小学館文庫)など。第9回翻訳ミステリー大賞に輝いた『フロスト始末』、受賞おめでとうございます。ミステリーとして面白いのはもちろん、芹澤恵さんの名訳・名調子を抜きにしては語れないこの作品は、翻訳者が選ぶこの賞にまさにふさわしい受賞作となりましたね!