5月19日(土)13:30~
中央公民館 視聴覚室にて
参加者 29名
課題書 『雪と毒杯』エリス・ピーターズ/猪俣美江子 創元推理文庫

【感想意見など】
*思っていたのとは違ったが面白く読んだ。
 ・もっと人がバタバタと死んでいくのかと思っていたが、恋愛のバタバタになっていく。
 ・雪の山荘ものかと思ったが、クローズドサークルとしては閉そく感が無く自由である。
 ・ミステリとしてはシンプルだが、後半に盛り込まれている設定が派手で、サブストーリーもいろいろあり楽しんだ。
 ・翻訳ものは苦手だったが、2時間ミステリドラマのような読みやすい話だった。
 ・漢方薬のようにじわじわ効いてくる作品。その中にも雪の中の逃避行のような趣向が凝らされている。
 ・古典だが現代性もありすらすらと気持ち良く読んだ。

*ミステリ色が薄く物足りない
 ・謎解きのカタルシスを求めると物足りなく感じる。
 ・クローズドサークルが強引。
 ・描写がていねいだがくどいので、話に入っていきにくい。
 ・もっとどんでん返しが欲しかった。
 ・殺人の必然性はあったのか。

*探偵役がわからないのが強みであり弱み
 ・読んでいて落ち着かない。
 ・探偵役が決まらず気持が左右に揺れるがそこも面白かった。
 ・探偵役がわからないところが良い。

*「ばらの騎士(オペラ作品)」とのつながりについて
 ・不倫ははいってくるのかな、とは思った。
 ・アントニアはばらの騎士の元帥夫人役としてローレンスとスーザンを結び付ける役でもあった。

*今回一番盛り上がり。評価の分かれたヒロインについて
 ・信頼できない語り手なのか、信用できるのか、考えながら読んだ。
 ・クリスティの女性主人公に多いタイプ。
 ・ヒロインがいちばん悪いのでは?
 ・ひっかき廻しておいて爆弾発言。いまでは多いタイプだが、当時は珍しかったのでは。
 ・ローレンスに入れあげているが恋をするにふさわしい男性なのか(まさしくこの点に意見が集中!)
  #つり橋効果で結婚したが長続きしないのでは、という印象。
  #ローレンスにその選択で良いのか、と言いたい。かわいそう……。
  #ヒロインは義母に苦労するのでは。いや、苦労するのは間に挟まれたローレンス……と意見色々。

*題名について
 原題は「ばらの騎士」から取られた “The Will and the Deed”。
 Will は直訳すると「意志」と「遺書」の掛けことばになっておりタイトルには出来ないそうです。
 「ばらの騎士」殺人事件、はどうかという案も。

 その他、いろいろ意見は出たのですが29名すべての方の声を載せることは難しく、私の意見は大体これと同じ、というものがあれば御勘弁ください。

 読書会の最後に越前先生からの提案で、参加者の名札に書いていただいた好きな探偵(特に翻訳ものに限らず広い意味での探偵)についてひと言ずつ。
「探偵」というくくりにしたので、書けなかった(警察関係者なので探偵ではない)方、特にないという方3名を除き皆さん御贔屓の探偵を書いてくださいました。
 意外にも票が幅広く分かれ、2票獲得はリュウ・アーチャー、ロバート・ラングドン、エルキュール・ポアロ、金田一耕助、の4名のみ。
 あとは全て1名ずつ、というのは少し驚きでした。ミステリファンならではのそれぞれのこだわりを見たような気がしました。

 

【休憩をはさんで越前敏弥先生のお話】
 うまくまとめられないので内容ではなく、主にE・クィーンについて話されたポイントだけ。
『Xの悲劇』を新訳するにいたったいきさつ。サム警視とブルーノ地方検事の関係について。『Yの悲劇』のルイ―ザについて。
「国名シリーズ」はどこまでがシリーズに入れられるのか。エラリーとクィーン警視の一人称の表記について。
 エラリーの風貌について。
 等、興味深いお話がいっぱいでした。

 そして、読書会終了後は場所を変えて懇親会。ここでも人数は多かったのですがテーブルのあちこちでミステリ話が盛り上がったのは言うまでもありません。
 ミステリにどっぷりと浸かった濃い一日でした。

 東京、横浜、千葉、大阪、神戸……遠方からのミステリファンをお迎えして楽しいひと時でした。
 ありがとうございました。