◆第60回『キャッスル』のネイサン・フィリオンが、転職して新人警官になった中年男に扮する『ザ・ルーキー』◆

 
 前回は、ロサンゼルス市警の刑事たちの活躍を描いたドラマを紹介しましたが、今回は同じロス市警でも刑事ではなく制服警官たちの活躍を描くドラマを紹介したいと思います。
 
■『ザ・ルーキー』予告編

 主人公のジョン・ノーランはごく普通の中年男性。仕事はうまくいかず、奥さんには離婚され、小さな町で冴えない日々を過ごしていたのが、ある日、銀行で強盗に出くわし、友人を守るために奮闘、その時助けてくれた警官の姿に感銘し、警察官への転職を決意します。
 かくして、ロサンゼルスに引っ越して警察学校を卒業、念願の制服警官となったノーランは、他の新人警官たちと共に市内の警察署に配属されるのですが、直属の上司である巡査部長に目の敵にされてしまいます。
 巡査部長は「警察の仕事は一般人の常識と正反対の行動を取ることが要求される。若者と違って、人生経験が豊富な人間ほど、それが難しくなる。だから、きさまのような『中年の危機』を抱えたおっさんは、必ず間違いを犯し、仲間を危険にさらす。だから、そうなる前にとっとと辞めろ」と言うのです。
はたして、気の良い中年おやじ、ジョン・ノーランは、大都市ロサンゼルスで警察官として立派にやっていけるのか。40歳の新人(ルーキー)警官の活躍が始まります……。
 
 というのが、『ファイヤーフライ 宇宙大戦争』『キャッスル ミステリー作家は事件がお好き』でテレビドラマファンにはお馴染みのネイサン・フィリオン主演の新作ドラマ『ザ・ルーキー』の基本設定です。
 設定だけ書き出すとなんだかほんわかしたコメディっぽいですが、これがなかなかしっかりした警察ドラマとなっていて、見てびっくり。現代のロサンゼルス市警を舞台に、制服警官たちのリアルな仕事ぶりを、次々に起こるさまざまな事件(これが、いかにもありそうなものから、意外性に富んだものまで、バラエティ豊かで実におもしろいです)と共に描いていて、まさに現代版『センチュリアン』『クワイヤボーイズ』か(いずれもジョゼフ・ウォンボーの傑作警察小説です)といった感じなのです。
 人気が出て、このまま第2シーズン以降も継続したらいいなあ。
  
 さて、上にも書きましたが、警察小説数あれど、制服警官たちの日々を生々しく描いた傑作と言えば、なんといっても元警察官のジョゼフ・ウォンボーが書いた『センチュリアン』『クワイヤボーイズ』でしょう。この2作は彼がまだロス市警在職中に出版されたということもあって、当時大きな話題となり、いずれも映画化されました。ウォンボーの小説はそれ以降の刑事ドラマに対して大きな影響を与え、物語のリアリティを著しく向上させたとも言われています。
 2000年代に入って初めててがけたシリーズもの《ハリウッド警察》シリーズも、ロス市警のハリウッド署を舞台にした警察小説で、一癖も二癖もある、ちょっと普通じゃない警察官たちが次々に登場する、痛快な作品となっています。最初の2作は翻訳されたんですけど、まだ未訳作品が3作あるんですよね~。続きも日本語で読みたい!

堺 三保(さかい みつやす)
  1963年大阪生まれ。『SFマガジン』、『映画秘宝』等に記事書いてます。また、訳書近刊にコミックス『インフィニティ・ガントレット』(小学館集英社プロダクション)。設定考証を担当したテレビアニメ『ダーリン・イン・ザ・フランクス』が2018年1月から放送中。同じく設定部分を担当したアニメ映画『ニンジャバットマン』も2018年6月15日(金)劇場公開。
・フェイスブック http://www.facebook.com/m.sakai1
・ツイッター http://twitter.com/Sakai_Sampo
・ちょくちょく出演させてもらってるWOWOWのニコ生番組は、以下のリンクから。
 WOWOW動画(堺三保で検索) http://st.wowow.co.jp/search/?q=%E5%A0%BA%E4%B8%89%E4%BF%9D

 



 

【毎月更新】堺三保の最新TVドラマ・映画事情【USA】バックナンバー