年末押し迫る中、改めて時間の流れの早さに慄いている世話人Aです。大変ご無沙汰しておりました。

 去る9/29(土)超巨大台風チャーミーが接近している浜松でロバート・ロプレスティ『日曜の午後はミステリ作家とお茶を』(訳:高山真由美/創元推理文庫)を課題書に読書会を開催しました。
 この日はなんと豪華なことに、課題書翻訳者の高山真由美さんと浜松読書会発足以来の念願叶って越前敏弥氏をゲストにお迎えしました。その効果もあって、募集人数を大幅に上回る申し込みを頂きました。このレポートを書きながら、改めて感謝の気持ちでいっぱいになっております。

 チャーミーにも負けず、浜松読書会前には絶対ココ!と言うことで「さわやか」でげんこつハンバーグ攻略後に市内有名店の浜松餃子ラーメン、更にはデザートまでキメてきたフードファイターな方々もおりましたが、参加者の皆さま無事会場に到着し、ホッとひと安心したところで、読書会スタート。

 今回は大人数だったので、まずは2班に分かれて、後半に全体討論する形で進めました。
 それぞれのグループで出た意見をまとめると以下の通り。

「さわやかな短編で読後感がいい」
「軽くて読みやすいし、一作一作の長さもちょうどよかった」
「読み易すぎて読み終わる頃には最初の話を忘れてた……(苦笑)」
「ミステリーとしてはユルいよね」
「そのユルさがいいんだよ〜」
「完全に謎を解決してない話もある」
「解決しなくてもナイス☆仮説!なら有りでしょ」
「小粋でオシャレな短編集で現代設定モノってのが素晴らしい」
「出版業界あるあるネタ満載!」
「色んなジャンルの作家が集まってる話が面白かった」
 その他、「課題書は〈日常の謎〉と言えるか」「日本の日常ミステリ物との違いについて」なんて話題もありました。

 双方のグループで特に多く(強く)出た意見について後半の全体討論で盛り上がりました。

 まずは課題書のタイトルについて。
「邦題が本当にいい! 大好き!!」
「コーヒーじゃなくて紅茶を持ってきてるのポイント高い」
「ありがちな所で『シャンクスの事件簿』になりそうなのに」
 ……と、課題書タイトルについて好意的な意見が多く出ました。このタイトルに決めたのは誰? という質問に高山さんから「編集さんです」と回答頂きました。原題がシンプルだからこそ、イメージを膨らませることができたんでしょうか。

 次にいわゆる「小説のジャンル」について。
「ところでコーラの言う女性小説ってどんなの?」
「ロマンス小説との違いは?」
 参加者の1人、書評家の大矢博子さんによると「女性小説とは女性作家による女性を主人公にした作品」で「欧米ではロマンスやYAから卒業した作家がそのジャンルを手がけているのが多い」そうです。とは言え、出版レーベル次第でその線引きははっきりしないようです。日本ではYA出身の村山由佳、桐野夏生の他、瀬戸内寂聴(敬称略)辺りが女性小説作家と言えそうです。
 メインストリームと言えるのはどんな作家の作品なのか? ジャンル小説との違いって? などの討論中に上がったキーワードについて話したり、事前アンケートで頂いた質問・疑問についてゲストにお答え頂いたりと、終始楽しく笑い声の絶えない会となりました。

 最後に恒例の「次に読むならこの1冊」を皆さんにあげて頂きました。
 課題書短編にもあったコンベンションが舞台の作品としてエリザベス・ピーターズ『ロマンス作家「殺人」事件』、ミステリ短編集としてエラリー・クイーン『犯罪カレンダー』、エドワード・D・ホック『夜の冒険』、ドナルド・E・ウェストレイク『泥棒が1ダース』、ローレンス・ブロック『おかしなことを聞くね』、ジェフリー・ディーヴァー『クリスマス・プレゼント』、アガサ・クリスティ『おしどり探偵』、その他SFジャンルからジョージ・R・R・マーティン『タフの方舟』、ジャック・ヴァンス『宇宙探偵マグナス・リドルフ』、ミステリ作家同士の夫婦の作品ビル・プロンジーニ&マーシャ・マラー『ダブル』etc…..

 二次会が終わる頃は天気も少し落ち着いていて、ゲストを筆頭に遠方からご参加頂いた日帰り組、宿泊組それぞれ無事に帰宅されてホッとしていたら、翌日夜に世話人たちの家も含む浜松近辺がその後数日に及ぶ大停電に遭ってしまい、ある意味とても思い出深い読書会となりました。

 次回浜松読書会ですが、2/2(土)、課題書は本好きの子どもならコナン・ドイルや江戸川乱歩と共にきっと一度は手にしたモーリス・ルブラン〈怪盗ルパン〉シリーズの1冊にしようと考えております。もちろん子ども向けの翻訳書ではないですよ。改めて読んだら、ルパンに対する見方が変わるかも。

浜松読書会世話人
山本 三津代(@nirokuya