今月もこんにちは! 話題沸騰の映画『ひつじ探偵団』の原作、レオニー・スヴァン『ひつじ探偵団』(小津薫訳/早川書房)が、5/8の映画公開に先立って5/1に新版で復刊! 解説を担当しました~。詳しいことはナイショですが、子どもから大人まで楽しめる、モフモフ度200%の映画になっています。劇場でぜひ!
◆<🔍名(メェ~)探偵、誕生❕>映画『ひつじ探偵団』 予告/5月8日(金)全国の映画館で公開◆
*今月のゴージャス旅行本*
ドーン・ブルックス『ニューヨーク・クルーズにぴったりの失踪』(田辺千幸訳/創元推理文庫)
警官のレイチェルは、親友サラが看護師として乗船する豪華客船でニューヨークへと向かいます。今回はクルーズ会社からの招待で、スイートルームで優雅に船旅を楽しみ、ニューヨークでショッピングという夢のようなバカンスを満喫するはずでしたが、レイチェルは心に一抹の不安を抱えていました。逮捕した相手から脅迫を受けていたのです。好評シリーズ第二弾は、豪華客船のスイートルームの設えや、至れり尽くせりのホスピタリティなど、前回よりさらにゴージャス度パワーアップ! しかし、なにやらうさんくさいロシアの新興財閥御一行や挙動不審な新入り看護師のせいで、レイチェルもサラも息つく暇がありません。2人の友情とプロフェッショナルな行動が楽しみな本シリーズ、原題だと〈レイチェル・プリンス・ミステリー・ブック〉なのですが、日本版サブタイトルは〈警官レイチェル&看護師サラの事件簿〉。こっちの方が断然いいですよね! 次作も楽しみです!
*今月のおかえりなさい本*
ハーラン・コーベン『エージェントは二度推理する』(田口俊樹訳/小学館文庫)
マイロン・ボライターシリーズ、24年ぶりの日本上陸! だったんですね! 競馬シリーズといい、長年翻訳ミステリファンをやっているといろんなことが起きますねえ(しみじみ)。突然FBIの訪問を受けたスポーツエージェントのマイロン。3年前に死んだクライアントのグレグに、ある女性の殺害容疑がかかっていると言われます。マイロンがグレグの行方を知っていると確信するFBIの追求を交わしながらウィンとともに真相を探るマイロンを待ち構えていたのは、卑劣で恐ろしい罠だったのです。あーもう今回もなんてドラマチック! 500ページ長があっというまに読み終わってしまうはずなので、旅行のお供にするひとは他にもう1冊ぐらい持って行った方が無難かも。ところで帯になにげなく“Netflixでシリーズ映像化決定!”って書いてあるんですが! このシリーズ映像化成功のカギは、なんといってもウィンのキャスティングでしょう! 誰が演じるのか今からワクワクです。現在も多数配信されているコーベン作品には、イギリスやポーランド制作のものもあったりしてなかなか楽しいんですが、さすがに本家(?)はニューヨークロケで作ってほしいなあ。
*今月の南部本*
ヘンリー・ワイズ『無垢なる町』(吉野弘人訳/ハヤカワ文庫)
保安官補ウィルは、炎に包まれた家の中で友人のトムが死んでいるのを見つけます。彼の身体には刺された跡があり、一転して殺人現場となったその家の近くにいた男を捕まえたところ、それは旧友サムの父親ジークでした。警察ではジークが犯人と決めつけていましたが、ジークの家族はもちろん、なんと被害者トムの家族でさえ、ジーク以外の誰かによる犯行だと信じて、町の外から私立探偵を雇い、ウィルに協力を頼みます。舞台がいつなのか携帯電話が出てこなければわからないような、時代から取り残された小さな町で起きた殺人事件。やるせない真相に、残された人々はどう向き合うのか。主人公ウィルの成長物語でもあるように思えます。
*今月のイチオシ本*
ジャクリーン・ゴルディス『メインキャラクター』(法村里絵訳/創元推理文庫)
実在の人物をモデルにした小説で、世界的に有名な作家ジネヴラ。彼女の最新作のメインキャラクターとして選ばれたアメリカ人のローリィは、高額で受けた取材期間が終わり、最後の報酬としてオリエント急行の乗車券を贈られました。豪華列車のスイートで風光明媚なイタリア各地を巡る旅に夢をときめかせていたローリィは、乗車後、信じられない光景を目にします。彼女がいま最も会いたくない人々が3人、同じ列車に乗り合わせていたのです。ジネヴラが仕組んだのは明らかでしたが、その理由がわからぬまま、不穏な空気を漂わせつつ、ローリィら4人は目的地を目指します。駅に停まるまではある意味密室となる列車の中で、ローリィを不安にさせる出来事が次々に起こります。疑心暗鬼になった4人それぞれの視点で描かれる秘密は、結末に向かってどんどん緊張感を帯びてきます。はたしてジネヴラの目的は何なのでしょうか。うすぼんやりとした背景がくっきりと浮かび上がるような、見事なラスト。最後まで騙されるが吉、そんな至福のミステリ読書体験を味わってください。
*今月の新作映画*
『サンキュー、チャック』(5/1(金)公開)



世界の終わりが近づき、日常の営みがだんだんと消えていく中、街のそこかしこに不思議な広告が現れていました。地味なサラリーマンの写真の横には「ありがとう、チャック!」の一言が。チャックとは何者なのか、何のための広告なのか。誰一人知らないその広告だけが、崩壊に向かう街の中でいきいきと存在感を放っています。そしてついにある日……



3部構成で遡る、ある人生。不思議でちょっと怖い広告の謎が、少しずつ明らかになっていきます。人生には誰しも終わりがあり、残った人々は喪失でうちひしがれる。これは真実であり、誰も避けることはできません。でもこの映画を観て、忘れられない思い出、かけがえのない瞬間といった、生きる喜びや生き続けることへの原動力に目を向けられた気がします。



原作はスティーヴン・キング『チャックの数奇な人生 イフ・イット・ブリーズ』(安野玲 高山真由美訳/文藝春秋)。キングの大ファンであるマイク・フラナガン監督が作っただけあって、ほぼ原作どおりのストーリーで映像化されていますが、いくつか改変、脚色された部分もあります。映像ならではの躍動感、本でなければ味わえない静かな感動。その違いを楽しむためにも、ぜひ原作も読んでみてください。ちなみに筆者は、映画の第2部に登場する女性の服とシューズが妙にクラシカルだなあと思っていたらあの展開! なるほどなあと思いました。なお本書のもう一つの収録作品「ハリガンさんの電話」はNetflixの映画『ハリガン氏の電話』の原作です。鑑賞済みのひともぜひ。
タイトル:『サンキュー、チャック』
コピーライト:© 2024 DANCE ANYWAY, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
公開日:5月1日(金)新宿ピカデリー他全国ロードショー
配給:ギャガ、松竹
監督:マイク・フラナガン
製作:トレバー・メイシー、マイク・フラナガン
原作:スティーヴン・キング
脚本:マイク・フラナガン
出演:トム・ヒドルストン、キウェテル・イジョフォー、カレン・ギラン
ジェイコブ・トレンブレイ、マーク・ハミル
映画公式サイト:https://gaga.ne.jp/thankyou_chuck/
◆映画『サンキュー、チャック』本予告【5月1日(金)全国ロードショー】 ◆
◆Mr. Harrigan’s Phone | Official Trailer | Netflix ◆
| ♪akira |
翻訳ミステリー・映画ライター。月刊誌「本の雑誌」の連載コラム〈本、ときどき映画〉を担当。2025年8月には、リチャード・オスマン『木曜殺人クラブ』(羽田詩津子訳/ハヤカワ・ミステリ文庫)と、ピーター・トレメイン『修道女フィデルマの慧眼』(田村美佐子訳/創元推理文庫)の解説を担当しました。
Twitterアカウントは @suttokobucho 。
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