ココ・シリーズファンで、検索ワードによってこのHPにたどり着いた方、申し訳ありません。まだ新作は出ていないんです。今後いつ出版されるかの見通しも立っておりません。でも、作品ガイドなので、いちおう最後まで読んでくださいね。
「訳者が勝手につづるココ・シリーズ続編」なども、一人ひそかに考えているんですが、アイディアなどありましたら、ぜひご連絡くださいませ。
というわけで、長編二十九冊という長寿シリーズも、ただ今、休止中である。実に残念。
このシリーズがここまで長くファンに愛されたのは、ココとヤムヤムという猫の魅力のみならず、主人公のクィラランをはじめとする登場人物の魅力がおおいに貢献していると思う。ココやヤムヤムに翻弄される大男のクィラランの姿ににやりとさせられ、読んだあとに温かい気持ちになれる、ほのぼのした味わいのシリーズなのである。
おまけに、グルメファン垂涎のおいしいお料理がたくさん登場する(訳者はそれを実際に作り、シリーズ番外編『猫はキッチンで奮闘する』に写真つきでまとめたので、そちらもよろしければぜひ)。猫、グルメ、田舎暮らし、大人の恋愛——そういったキーワードにご興味がある方には、自信を持ってお勧めしたいシリーズだ。
休止中とはいえ、長編二十九冊の他に、日記が一冊、短編集一冊、研究書一冊、それに訳者の料理エッセイ本が一冊あるので、まだまだかなり楽しめるのではないかと思う。
現在最後の長編となっている『猫はひげを自慢する』のあとがきに、どのようにココ・シリーズを読むかについて、実は解説してある。それに補足しながら作品をご紹介していこう。もちろん、シリーズすべてを読んでいただきたいし、そうすれば楽しみがより大きくなるのはまちがいない。これは時間のない方のためのガイドと思っていただきたい。
●主人公クィラランの原点ともいうべき最初の四冊『猫は殺しをかぎつける』『猫は手がかりを読む』『猫はソファをかじる』『猫はスイッチを入れる』を読んだあと(一、二冊でもいいだろう)、『猫はブラームスを演奏する』以降の田舎を舞台にした作品を、タイトルの好みで適当に飛ばしながら読んでみる。出版順でいうと、『猫はシェイクスピアを知っている』以降だ(『猫はブラームスを演奏する』は出版順はあとだが、時系列的には『猫はシェイクスピアを知っている』の前に位置する)。まだ一冊も読んだことのない方には、この読み方がお勧めだ。
●クィラランを巡る女性たちとポリーとの関係についてご興味がある方は、出版順だと『猫はシェイクスピアを知っている』から『猫は汽笛を鳴らす』までと、『猫はブラームスを演奏する』と『猫は郵便配達をする』の二冊を読む。最初の四冊や、それ以降を何冊か読んでいるポリーファンにお勧め。時系列的に読みたければまず『猫はブラームスを演奏する』『猫は郵便配達をする』を読んでから、『猫はシェイクスピアを知っている』から順番に読んでいくといいだろう。
●グルメなファンには『猫は手がかりを読む』『猫は殺しをかぎつける』『猫はチーズをねだる』『猫はコインを貯める』が特にお勧めだ。
●クィラランが大金持ちになった経緯を知りたい方は、『猫はブラームスを演奏する』と『猫は郵便配達をする』が必読。
●でも何冊も読む時間はない! という方は、ともかくタイトルで適当に選んでしまう。どれを読んでも楽しめることは保証つきだ(さすがに最新作から読むと前後関係がよくわからないかもしれない)。そのあとで、その前後の作品を読むと、もっと楽しめるだろう。また短編集『猫は14の謎をもつ』は猫をテーマにした短編が十四篇入っているので、猫好きの方にはお買い得かもしれない。
少しはお役に立てたでしょうか? 新たなココファンが、また一人でも増えることを祈っています。