田口俊樹

 もはや旧聞に属しますが、ロイヤルウェディング。

 さすが王室ですねえ、ウェストミンスター寺院の中に木が植わってましたね。

 でも、植樹より植毛をしたほうがよかったのではないかと……はい、大きなお世話です。

 あと見ていてなるほどと思ったのが、国歌斉唱のとき。女王は歌わないんですね。

 確かに、自分で「神よ、女王を守りたまえ」は変だもんね。「彼女に勝利を」なんてところもあるし。

 ちなみにエジンバラ公は歌ってました。目一杯忠実なところをお示しになってました。

 でも、外国の王室を見るたび、思うのはわが皇室のことです。

 王室と皇室とのちがいはあるものの、やっぱ今の天皇制って改良の余地があると思うんですよね。

 だって、職業選択の自由、選挙権など基本的人権も持たない人が日本の象徴ってどうよって、どうしても思っちまうんですよね。まあ、天皇は日本国の象徴であって、日本人の象徴ではないという反論もあるでしょうが。

 でも、見るからに天皇家の人たちってなんかみんないい人そうだし、それになんといっても絶大な人気がありますよね。だから、かえって気の毒で。これこそ大きなお世話なんでしょうけど。

 ロイヤルウェディングに続いて、被災地を訪れる天皇家の人たちを見るにつけ、全共闘世代のおじさんとしてはどうしてもそんなことを考えてしまうのでした。

(たぐちとしき:ローレンス・ブロックのマット・スカダー・シリーズ、バーニイ・ローデンバー・シリーズを手がける。趣味は競馬とパチンコ)

 横山啓明

砂漠にはなにもない。見渡すかぎり砂だらけ。

強烈な太陽の熱は、肌をチクチクと刺す。空はどす黒いほどの青。

青が積み重なっていって黒ずんでいくといえばいいのか。

空の向こうに宇宙が広がっていると実感する。

こういう環境で、人はなにを頼りに生きていけばいいのか。

神様を作るしかないのだろう。それも荒ぶる神。

自然は征服するべきものだ。

311で日常が一瞬のうちに崩壊する場を目撃した。

荒ぶる神だ。圧倒的な無。

バラードの破滅三部作を再読したい今日この頃。

(よこやまひろあき:AB型のふたご座。音楽を聴きながらのジョギングが日課。主な訳書:ペレケーノス『夜は終わらない』、ダニング『愛書家の死』ゾウハー『ベルリン・コンスピラシー』アントニィ『ベヴァリー・クラブ』ラフ『バッド・モンキーズ』など。ツイッターアカウント@maddisco

 鈴木恵

先日亡くなった団鬼六氏の『真剣師 小池重明』は、桁はずれの破滅型ダメ男ノンフィクション。「就いた職業は無数、人妻との駆け落ちは3回。寸借詐欺騒動を起こし、新聞沙汰にもなった。逃亡と放浪を繰り返したが、将棋だけには破格の才能を持っていた男・小池重明。プロ棋士を次々となぎ倒し、“新宿の殺し屋”と呼ばれた伝説の将棋ギャンブラーが、闇の世界で繰り広げた戦いと破滅の軌跡」。このすさまじさは半端じゃありません。ケン・ブルーウンの創り出したあのとんでもない破滅型私立探偵、ジャック・テイラーと勝負したって、負ける心配なし!

(すずきめぐみ:文芸翻訳者・馬券研究家。最近の主な訳書:『ロンドン・ブールヴァード』『ピザマンの事件簿/デリバリーは命がけ』『グローバリズム出づる処の殺人者より』。最近の主な馬券:なし orz。ツイッターアカウント@FukigenM

 白石朗

『アンダー・ザ・ドーム』発売を記念しておこなわれる今夜のキング酒場で、画家の藤田新策さん、文藝春秋の永嶋俊一郎さん、そして当シンジケートの杉江松恋さんとともに、この稀代の物語作家について思いつくままに語りますが、会場からの突っ込みや発言も大歓迎。キング愛のほとばしる場で、みなさまにお会いするのを楽しみにしています。そうそう、少し前に読んだ山上たつひこ『主婦の生活』は、帯の背中の「コージー・ミステリ」という言葉がぴったりのいい作品でした。日常のちょっと不思議から暴走の名推理をめぐらせる昌代さんがすばらしい。

(しらいしろう:1959年の亥年生まれ。進行する老眼に鞭打って、いまなおワープロソフト「松」でキング、グリシャム、デミル等の作品を翻訳。最新訳書はキング『アンダー・ザ・ドーム』。ツイッターアカウント@R_SRIS

 越前敏弥

 うれしい悲鳴と呼ぶべきなのかもしれないが、今夜は東京でキング祭り、大阪でシンジケート後援の読書会が同時開催。大阪読書会はほぼ満席で、再来週の福岡も1月より大幅に参加者が増加している。東京の読書会は現在企画中で、おそらく6月中旬以降の開催。

 もちろん、ほかの地域でもぜひ開催できたらと考えているので、興味のあるかたはメールやツイッターでご一報を。いくつか条件はありますが、要は地元のみなさんの熱意しだいです。福岡は1月は赤字でしたが、今回は在住の翻訳者2人が中心となり、1月の参加者のみなさんにもいろいろ協力していただいて、鮮やかに黒字転換し、おまけに学生割引まで導入できました。

 集え、翻訳ミステリーの旗のもとに、って、ちょっと大げさか。本を読んで、ああだこうだと話し合う会って、楽しいですよ。初心者も大歓迎。

(えちぜんとしや:1961年生。おもな訳書に『夜の真義を』『Yの悲劇』『ダ・ヴィンチ・コード』など。趣味は映画館めぐり、ラーメン屋めぐり、マッサージ屋めぐり。ツイッターアカウント@t_echizen

 加賀山卓朗

 Cocooning(繭ごもり)というらしいですね。私もすっかりそんな感じ。吸い寄せられるように石牟礼道子『苦海浄土』を手に取り、日夜どっぷり浸かる。水俣病を題材とした類まれな文学作品です。水俣方言の迫力、表現力に終始圧倒される。

 世界文学全集に取り上げられなければ、おそらく存在すら知らなかっただろうけど、この渾身の大作を、いまこの時期に読んだことは一生忘れないと思います。

(かがやまたくろう:ロバート・B・パーカー、デニス・ルヘイン、ジェイムズ・カルロス・ブレイク、ジョン・ル・カレなどを翻訳。運動は山歩きとテニス)

 上條ひろみ

 ローズマリー・マーティンのキュートなベベ・ベネット三部作(『ベベ・ベネット、死体を発見』『ベベ・ベネット、モデルと張り合う』『ベベ・ベネット、秘密諜報員になりきる』)が終わってしまってちょっと淋しいな、というガーリー系ミステリファンにおすすめしたいのは、メグ・キャボットの〈でぶじゃないシリーズ〉。すごいネーミングのこのシリーズ、ちょっと太めの元アイドルが、殺人事件を解決しようとニューヨークの街を駆けまわる、というもので、とにかくもう理屈ぬきに楽しい! 好きだなあ、こういうの。これも三部作で、『サイズ12はでぶじゃない』『サイズ14もでぶじゃない』が邦訳されています。十代のときアイドル歌手だったヒロインのヘザーは現在二十代後半で、わけあってニューヨーク大学の学生寮の副寮母をしています。仕事に恋に探偵活動にと、毎日超忙しいのに、やせない! つーか、むしろ太ってる? 自己愛と自虐が絶妙にミックスした、愛すべきヘザーのキャラに、思わず親近感を覚えてしまう乙女は多いはず。「鼻をぴすぴす鳴らす」とか「ぷしゅんとへこむ」とか、訳語の選び方がまたすっごくかわいくていいんですよ〜。ちなみにサイズ12は日本の15号、サイズ14は17号だって! でもでぶじゃないんだ……

(かみじょうひろみ:神奈川県生まれ。ジョアン・フルークの〈お菓子探偵ハンナ・シリーズ〉(ヴィレッジブックス)、カレン・マキナニーの〈朝食のおいしいB&Bシリーズ〉(武田ランダムハウスジャパン)などを翻訳。趣味は読書とお菓子作り)

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