翻訳者の近況を伝えるコーナー、4回目です。

 田口俊樹

 第二回『翻訳ミステリー大賞』の第一次選考に投票してくださったみなさん、ありがとうございました。

 このサイトでもすでに報告があったとおり、候補作、五作が決まりました。

 でもって、その五作の中に、なんと拙訳が二作もはいっちまうという快挙をやっちまいました、私。

 ただ、この賞の発起人に名を連ねる身としては、嬉しい半面、ちと気が差すというか、申しわけないというか、いささか複雑な思いです。

 もちろん、私が選ばれたわけではなく、広く支持されたのは作品なわけなんで、そんなふうに思うこと自体、僭越といえば僭越なんですが。

 それに、厳正かつ単純明快な投票による結果なんで、誤解を招くことはないと思いますが、それでもです。

 なんか水嶋ヒロとまちがえられたら嫌だなあ。

 誰もまちがわない? あ、そう。 

(たぐちとしき:ローレンス・ブロックのマット・スカダー・シリーズ、バーニイ・ローデンバー・シリーズを手がける。趣味は競馬とパチンコ)

 横山啓明

かゆい。かゆずぎる。右脚のふくらはぎがかゆくてたまらない。先日、ジョギング中に痛めたふくらはぎに湿布薬を貼り付けていたのだが(四日ほど)、そこがかぶれてしまった。そのうちよくなるだろうと放っておいたのがいけなかったのか。いまだに治らない。やはり薬を買いに行こう(仕事に支障はでておりません。念のために)。さて、翻訳ミステリー大賞の最終候補作が出揃った。年末年始はゆっくり読書、といきたいところだが、果たして……。

(よこやまひろあき:AB型のふたご座。都会が好き。虫は苦手。主な訳書:ペレケーノス『夜は終わらない』、ダニング『愛書家の死』ゾウハー『ベルリン・コンスピラシー』アントニィ『ベヴァリー・クラブ』ラフ『バッド・モンキーズ』など。ツイッターアカウント@maddisco

 鈴木恵

 フェリクス・J・パルマの『時の地図』、訳者の宮崎真紀さんによれば、続篇が書かれるらしい。タイトルは『空の地図』だとか。今回は『タイム・マシン』がネタだったけれど、次作は『宇宙戦争』だそうな。その『時の地図』を読んでいて思わずニヤリとしたのは、コナン・ドイルが「妖精さえ信じるような男」と皮肉られている個所。知らない人も多いかもしれないけど、ドイルは『心霊主義の歴史』という本を書いているほどの熱烈な心霊主義者なのだ。くわしくは拙訳書『幽霊を捕まえようとした科学者たち』を。て、最後は宣伝かいな。

(すずきめぐみ:文芸翻訳者・馬券研究家。最近の主な訳書:『ロンドン・ブールヴァード』『ピザマンの事件簿/デリバリーは命がけ』『グローバリズム出づる処の殺人者より』。最近の主な馬券:なしorz。ツイッターアカウント@FukigenM

 白石朗

『このミステリーがすごい! 2011年版』(宝島社)の「我が社の隠し玉」コーナーで文藝春秋の担当者氏より情報が公開されていますが、スティーヴン・キングの Under the Dome は拙訳で現在出版にむけて着実に作業が進行中です。比較的長尺作品を翻訳することが多い小生ですが、この作品で最長記録を更新しました。400字詰め原稿用紙換算で3149枚、プリントアウトで12センチ。キング自身の作品のなかでは『ザ・スタンド』『IT』に続く長さだそうです。突如、若干の空気と水以外なにものも通過させない正体不明の透明なバリア〈ドーム〉によって文字どおり全世界から切り離されたメイン州の人口2000人のスモールタウン。その〈ドーム〉のもとで展開される凄絶かつ濃密なドラマを、キングが冒頭からラストまで「アクセルを踏みっぱなしで」書きあげた新たなるモニュメント。ご期待ください。

(しらいしろう:1959年の亥年生まれ。進行する老眼に鞭打って、いまなおワープロソフト「松」でキング、グリシャム、デミル等の作品を翻訳。最近刊は『デクスター 夜の観察者』。ツイッターアカウント@R_SRIS

 越前敏弥

 うーん、今月にはいってずっと、ドルリー・レーンやペイシェンス・サムといっしょに蟄居中なんで、書くネタがないな。1日じゅうパソコンの前にへばりついてるから、ヤフーのトップページを何回更新したらまたウィルコムの広告で佐々木希がぴょんぴょん跳ねるかを調べるとか、そのぐらいしか楽しみがない。

『Zの悲劇』に話をもどすと、古典新訳って、どのあたりの文体に落ち着かせるべきなのかをあれこれ考える。1930年代に日本で使われていた文体そのままでもないし、21世紀のいまの文体でもないはずで、自分としては、輝きと強度を具えた原著であれば、必要以上に磨きをかけなくても、錆び落としをすればじゅうぶんだと思う。って、これだけじゃ抽象的でよくわかりませんね。この話はいずれまた。

(えちぜんとしや:1961年生。おもな訳書に『Yの悲劇』『ダ・ヴィンチ・コード』『検死審問ふたたび』など。趣味は映画館めぐり、ラーメン屋めぐり、マッサージ屋めぐり。ツイッターアカウント@t_echizen

 加賀山卓朗

 いまウォール街では「LDL」がはやっているそうです。新種のドラッグ? ではなく、Let’s discuss live、メールじゃやばいからじかに会って話そう。ウィキリークスなどの影響ですね。メールやインターネットという便利なツールから、昔ながらの不便なやり方に戻っているところがおもしろい。先週、『リーマン・ショック・コンフィデンシャル』の著者ソーキン氏が来日したときに聞いた話でした。

(かがやまたくろう:ロバート・B・パーカー、デニス・ルヘイン、ジェイムズ・カルロス・ブレイク、ジョン・ル・カレなどを翻訳。運動は山歩きとテニス)

 上條ひろみ

もうすぐクリスマス。レスリー・メイヤーの『史上最悪のクリスマスクッキー交換会』(高田惠子訳/創元推理文庫)はこの時期に読むのにぴったりのコージー・ミステリーです。主人公のルーシーは学齢期の四人の子供を持つ主婦で、いつも忙しそうだけど、イベントの多くなるクリスマスは忙しさ倍増。新聞社で働き、託児所の手伝いをし、家事と家族の世話をこなしたうえ、大量のプレゼントを用意し、クッキーやケーキを焼くなんて、もう尊敬しちゃう。さらには殺人事件も解決しちゃうんだから。わたしなんて、「忙しい」と言う資格もないかも……。でも、今年はどんなケーキを焼こうかな?と考えるのはこの季節の楽しみです。

(かみじょうひろみ:神奈川県生まれ。ジョアン・フルークの〈お菓子探偵ハンナ・シリーズ〉(ヴィレッジブックス)、カレン・マキナニーの〈朝食のおいしいB&Bシリーズ〉(武田ランダムハウスジャパン)などを翻訳。趣味は読書とお菓子作り)

■翻訳ミステリー長屋かわら版・バックナンバー■