■「フランスミステリベスト100」結果発表!(その1)

 7月31日に実施要項を載せていただいたTwitter企画「フランスミステリベスト100」は、締切の8月12日までに67名の方から投票をいただき、翌8月13日に予定通りTwitterにて結果を発表いたしました。投票してくださった方、告知記事を広めてくださった方、また、関心をもって企画を見守ってくださった方、皆様に感謝したいと思います。ありがとうございました。

 遅くなってしまいましたが、こちらでも改めて書影付きで集計結果を発表させていただきます。一気に100冊分の書影を貼ると記事が非常に長くなってしまいますので、「1位〜30位」、「31位〜69位」、「70位〜100位+作家ランキング」の3つに記事を分割しております。

 なお正確な日程は未定ですが、来月初旬には英語・フランス語以外で書かれた海外ミステリの邦訳を対象とする「非英仏語圏ミステリベスト100」のアンケートも実施したいと思っています。地域でいうと、北欧5か国やドイツをはじめとするヨーロッパ諸国、アフリカ、中南米、日本以外のアジアのミステリが対象となります。筆者が数えたところでは、北欧とドイツ語圏のミステリの邦訳だけでも240冊ほどあり、それにイタリア、スペインのミステリの邦訳を足すと300冊ほどになります。そのほかにも少数ながら、その他の欧州諸国、アフリカ、中南米、日本以外のアジアのミステリが邦訳されています。

 ちなみに2012年版『東西ミステリーベスト100』の海外編では、英語・フランス語以外の言語圏から以下の4作がランクインしました。

  • 第7位 『薔薇の名前』ウンベルト・エーコ(イタリア語)
  • 第12位 《ミレニアム》三部作 スティーグ・ラーソン(スウェーデン語)
  • 第30位 『笑う警官』マイ・シューヴァル、ペール・ヴァールー(スウェーデン語)
  • 第52位 『犯罪』フェルディナント・フォン・シーラッハ(ドイツ語)

 ご興味がある方はぜひとも今から、ご自身の投票作を考えておいてみてください! 各自最大10作で、順位はつけてもつけなくても構いません。オールタイムベストを選出する、というとなんだか大げさになってしまいますが、好きな非英仏語圏ミステリのタイトルを挙げてまわりの読者にお勧めする企画だと思って、投票作が1作でも2作でも、お気軽に参加していただければ幸いです。

 それでは、前置きが長くなってしまいましたが、「フランスミステリベスト100」のまずはベスト30の発表です!

「フランスミステリベスト100」1位〜30位

【1位(151.5ポイント/25票)】

  • 『ウサギ料理は殺しの味』ピエール・シニアック

【2位(143.5ポイント/23票)】

  • 『殺人交叉点』フレッド・カサック

 創元推理文庫の旧版は『殺人交差点』というタイトルで出ていました(「叉 / 差」の字が異なる)。新訳版の『殺人交叉点』の方を強くお勧めいたします。

【3位(115ポイント/17票)】

  • 『黄色い部屋の謎』ガストン・ルルー

【4位(77ポイント/13票)】

  • 『騙し絵』マルセル・F・ラントーム

【5位(71.5ポイント/15票)】

  • 『シンデレラの罠』セバスチアン・ジャプリゾ

【6位(68.5ポイント/12票)】

  • 『わらの女』カトリーヌ・アルレー

【7位(68ポイント/11票)】

  • 『死者を起こせ』フレッド・ヴァルガス

【8位(52ポイント/8票)】

  • 『私家版』ジャン=ジャック・フィシュテル

【9位(51ポイント/8票)】

  • 『怪盗紳士ルパン』(短編集)モーリス・ルブラン

【10位(44.5ポイント) 2作】

  • 『第四の扉』ポール・アルテ(8票)
  • 『パパはビリー・ズ・キックを捕まえられない』ジャン・ヴォートラン(7票)

 ポール・アルテについては、訳者の平岡敦氏の「翻訳ミステリー大賞シンジケート」への寄稿「初心者のためのポール・アルテ入門」(2010-10-12)もぜひご覧ください。

【12位(41ポイント/7票)】

  • 『813』『続813』モーリス・ルブラン

【13位(40ポイント/6票)】

  • 『殺人四重奏』ミッシェル・ルブラン

【14位(39ポイント)2作】

  • 『八点鐘』(短編集)モーリス・ルブラン(7票)
  • 『私が、生きる肌』【旧題:蜘蛛の微笑】ティエリー・ジョンケ(6票)

【16位(37.5ポイント/7票)】

  • 『奇岩城』(奇巌城)モーリス・ルブラン

【17位(34ポイント/9票)】

  • 『殺人者は21番地に住む』S・A・ステーマン

【18位(33ポイント/8票)】

  • 『日曜日は埋葬しない』フレッド・カサック

【19位(32.5ポイント/4票)】

  • 『パコを憶えているか』シャルル・エクスブライヤ

【20位(31.5ポイント/5票)】

  • 『人喰い鬼のお愉しみ』ダニエル・ペナック

【21位(31ポイント/5票)】

  • 『機械探偵クリク・ロボット』(中編集)カミ

【22位(30.5ポイント/4票)】

  • 『地下組織ナーダ』ジャン=パトリック・マンシェット

【23位(30ポイント/6票)】

  • 『連鎖反応』フレッド・カサック(創元推理文庫『殺人交叉点』に併録)

【24位(29.5ポイント/6票)】

  • 『マーチ博士の四人の息子』ブリジット・オベール

 2014年1月に有隣堂にて限定復刊され、現在も販売中(名作復刊! 『マーチ博士の四人の息子』有隣堂だけの限定販売)。

【25位(29ポイント/4票)】

  • 『グルーム』ジャン・ヴォートラン

【26位(27.5ポイント) 2作】

  • 『病める巨犬(おおいぬ)たちの夜』A・D・G(アー・デー・ジェー)(6票)
  • 『名探偵オルメス』(短編集)カミ(4票)

 『名探偵オルメス』はアマゾンにデータが登録されていない。高野優氏の寄稿「初心者のためのカミ入門 第1回(その2)」で書影を見ることができる。

【28位(27ポイント) 2作】

  • 『ルルージュ事件』エミール・ガボリオ(6票)
  • 『愚者(あほ)が出てくる、城寨(おしろ)が見える』【別題:狼が来た、城へ逃げろ】ジャン=パトリック・マンシェット(4票)

【30位(25.5ポイント/4票)】

  • 『穴』ジョゼ・ジョバンニ

本日午後サイト掲載予定「フランスミステリベスト100」結果発表!(その2)に続く。

松川 良宏(まつかわ よしひろ)

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 アジアミステリ研究家。『ハヤカワ ミステリマガジン』2012年2月号(アジアミステリ特集号)に「東アジア推理小説の日本における受容史」寄稿。「××(国・地域名)に推理小説はない」、という類の迷信を一つずつ消していくのが当面の目標。

 Webサイト: http://www36.atwiki.jp/asianmystery/

 twitterアカウント: http://twitter.com/Colorless_Ideas

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