悪童/ Stenhuggaren

 カミラ・レックバリ (Camilla L醇Bckberg) / 富山クラーソン陽子・訳

 集英社文庫 / 定価1050円(税込) / 発売日:2011年3月18日

 

北欧のクリスティ、第3弾!

スウェーデン本国では『ミレニアム』よりも人気で、なんと、国民2人に1人は読んでいるといわれる(900万人の国で400万部超のヒット!)カミラ・レックバリの〈エリカ&パトリック事件簿〉シリーズ。その評判がヨーロッパに伝染したのか、2010年秋には全世界でシリーズ1000万部を突破しました。日本でもヒットした第1弾『氷姫』第2弾『説教師』に続くこの第3弾『悪童』も前2作同様、スウェーデン西海岸沿いの小さな町フィエルバッカが舞台、刑事パトリックと作家エリカのカップルが殺人事件を解決に導きます。今回は少女殺しの犯人を追います。

 秋、ロブスター漁が最盛期をむかえていたフィエルバッカで、ベテラン漁師がひときわ重い網を引き上げた。見ると、網からは白い小さな手が突き出していた…。

 引き上げられたのは医師ニクラスの娘、まだ7歳のサーラだった。当初は誤って海で溺れたと考えられたが、検死の結果、胃と肺から石鹸成分が検出され、殺人事件として慌ただしく捜査が開始される。

 まず、容疑者として浮かんだのはサーラの隣人カイだった。カイは児童ポルノの愛好者のリストにも入っており、逮捕も間近かと思われたが、カイの息子でひきこもりの?変人?モルガンの小屋からサーラのジャケットが見つかって、事件は急展開する。しかし、最後にサーラと一緒に遊んでいた親友の少女の口からは全く意外な犯人像が浮かび…。

 子育て中のエリカの奮闘、強烈なキャラクターのメルバリ署長と息子とのやりとりなど、温かなエピソードを積み重ねながら、乳飲み子から高齢者まで、小さな町の人間模様を余すところなく描いているのは前2作と同じ。また今回は、半世紀以上も昔のある母娘のエピソードがフラッシュバックのように挟み込まれ、時間的な膨らみを見せています。全く違う話だと思われたその母娘の物語が本編へとつながり、収斂され、驚きのラストに流れ込みます。

 その人物描写のうまさから、(少し恐れ多いですが!)「北欧のクリスティ」とも評されるレックバリ、ますます目が離せません!