1位 ドン・ウィンズロウ『犬の力』(東江一紀訳/角川文庫)

2位 スティーグ・ラーソン〈ミレニアム〉三部作(ヘレンハルメ美穂・他訳/早川書房)

3位 ジャック・カーリイ『毒蛇の園』(三角和代訳/文春文庫)

4位 アンデシュ・ルースルンド&ペリエ・ヘルストレム『ボックス21』(ヘレンハルメ美穂訳/ランダムハウス講談社文庫)

5位 セバスチャン・フィツェック『サイコブレイカー』(赤根洋子訳/柏書房)

6位 サイモン・ベケット『法人類学者デイヴィッド・ハンター』(坂本あおい訳/ヴィレッジブックス)

7位 ジム・ケリー『水時計』(玉木亨訳/創元推理文庫)

8位 カール・ハイアセン『迷惑なんだけど?』(田村義進訳/文春文庫)

9位 ジョン・ハート『川は静かに流れ』(東野さやか訳/ハヤカワ・ミステリ文庫)

10位 ベネット・ダヴリン『夢で殺した少女』(田口俊樹訳/ヴィレッジブックス)

 今年のベスト1は、スティーグ・ラーソンの〈ミレニアム〉三部作で決まりだ、とずっと思ってきた。昨年度末に、第一作『ミレニアム1 ドラゴン・タトゥの女』を読了した時に抱いたその予感は、四月刊行の第二作『ミレニアム2 火と戯れる女』で確信に変わり、七月に第三作『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』でシリーズの幕が下りた時には、しばし余韻に浸りながら、私にとっての2009年はこの〈サガ〉を読んだ年として記憶に刻まれるだろうな、と実感したものだ。

 どれほど感銘を受けたか、そしてこの三部作がどんなに面白いかを知って貰うために、完結記念に「ミステリマガジン」に寄せた「〈リスベット・サランデル・サガ〉——闘う女たちの物語」というレビューの一節を、ちょっと長いけれども引かせてもらう。

「社会不適応社のレッテルを貼られた凄腕調査員のリスベット。後見人制度という”拘束衣”を着せられながらも独立不羈の存在として、ネットとリアルの二つの世界を股にかけて文字どおり命掛けで闘う彼女と、その勇姿に魅了されて彼女をサポートする〈騎士〉たちの活躍を描いた〈サガ〉は、実際、身震いするほどおもしろい。

 なぜか? それは作者のスティーグ・ラーソンが、ミステリというものの、もっと言えばエンターテインメントというもののツボを心得ていたためだ。即ち、不可思議な謎とサスペンスフルな展開、そして意外な結末という、ミステリ誕生以来、連綿と受け継がれてきた成功のための三要素を完璧に満たしているからである。基本に忠実なのだ。その上で作者は、一作ごとにタイプを変えて、さまざまなジャンルの魅力を味あわせてくれる。なんとサービス精神旺盛なことか」

「〈ミレニアム三部作〉は、世界全体が沈滞し閉塞感漂うこんな時代にこそ読んで欲しい、いや、読まれるべき傑作である」

 いやはや、われながら大絶賛である。無論、この評価は今も変わらない。作者が第四作を完成する前に故人となったことは、本当に残念でならない。

(つづく)