〈アジア本格リーグ〉 第2回配本は、今年「ミステリー百年」を迎えた韓国と、21 世紀に入り新世代作家の台頭が目覚しい中国、東アジアの2作品。韓国美術界を舞台 に、関係者の失踪や謎の死、贋作問題と不可解な事件が続発する『美術館の鼠』は、 ハリウッドで映画化の話も進行中の由。一方、『蝶の夢』は打って変わって、唐代を 舞台にした時代ミステリー。凛とした美貌の持ち主ながら顔半分を覆う赤痣が人々の 目を背けさせ、鬼神を駆使し死者と交わるという不思議な力のために世間から恐れら れる乱神館主人、離春のキャラクターが魅力的で、今後のシリーズ化も期待されます。
『美術館の鼠 アジア本格リーグ3』
李垠 (イ・ウン) 訳・きむ ふな 島田荘司・選
チョンノ美術館の館長パク・キリョンは、世界的な巨匠イム・ヨンスク回顧展の開催 初日、館長室で自殺をとげる。その直前、パク館長は新進画家のキム・ジュンギに 「美術館の鼠」 という題の原稿とイム の画集を手渡し、謎めいたメッセージを残し ていた。館長の死は美術界を震撼させ、重鎮画家の不可解な事故死や失踪という一年 前の事件にもあらためて捜査の目が向けられる。純粋たるべき芸術の世界にひそむ 〈 鼠〉 の正体とは ? 深まる謎を解く手がかりは、一枚の絵に隠されていた……。韓国 で大きな話題を呼んだ傑作アート・ミステリー。
『蝶の夢 乱神館記 アジア本格リーグ4』 (乱神館系列之蝶夢)
水天一色 (シュイティエン・イースー) 訳・大澤理子 島田荘司・選
唐の天宝年間、玄宗皇帝の御世。都長安の西に建つ乱神館の女館主、離春は相貌魁 偉、陰陽道に通じて鬼神をあやつり、降霊の術をもって生業としていた。ある日、乱 神館を訪れた富豪 封家の息子亦然は、離春の力 で母の霊魂と会わせてほしいとい う。母親の玉蝶は、幽霊伝説の残る邸内の井戸端で五日前に横死をとげていたのだ。 封家へ乗り込んだ離春は、その不思議な力で、事件の背後に隠された驚くべき秘密に 迫っていく。中国推理小説界の新星が放つ、時代ミステリーの傑作。