『ブーリン家の姉妹3 宮廷の愛人』上・下/THE VIRGIN’S LOVER
フィリッパ・グレゴリー(Philippa Gregory)/高里ひろ・訳
集英社文庫/定価各820円(税込)/2010年9月17日発売/ISBN(上)978-4-08-760610-2 (下)978-4-08-760611-9
誰がエイミーを殺したのか?
濃密な宮廷人間ドラマに歴史の“裏真実”が浮き彫りになる!
「この世に生まれたからには王冠が欲しい。女に生まれたからには愛が欲しい」——そんなナマな欲求が溢れ出てくるイングランド女王エリザベス1世と、彼女の愛人だったロバート・ダドリーに焦点を宛てた歴史小説。エリザベスの仮面をかぶった強かさは、どんなサスペンスやホラーよりも恐ろしいです。
ときは1558年。異母姉の死去で念願のイングランド女王の座についたエリザベス1世。財政、外交、宗教など数々の問題を抱えた国を治めるため、国務長官のウィリアム・セシルはエリザベスに王となるにふさわしい男性との結婚を迫ります。ところが彼女は、反逆罪でロンドン塔に幽閉されたこともあるロバート・ダドリーしか眼中にありません。ダドリーもまた、ありあまる野心を燃やしてエリザベスに取り入ります。彼には、エイミーという妻がいるにも関わらず。そして徐々に、ダドリーは妻の存在がウザいものでしかなくなっていきます……。
エリザベスとダドリーの仲はやがて、国全体を揺るがすほどのスキャンダルに発展。しかし、自分自身の王位が危ういと気づいたとき、エリザベスは普通では考えられない選択をするのです。「王冠が欲しい。愛も欲しい」という彼女の選んだ道とは……?
著者フィリッパ・グレゴリーは、ロバート・ダドリーの妻、エイミーの不審な死についても、史実をもとに自身の解釈、脚色をしています。これもまた、背筋がゾッとします。歴史小説とは思えないほど一人一人のキャラクターが人間くさく飛び込んでくるこの作品。特にメインとなる登場人物には腹立たしささえ覚えるのですが、ムカつけばムカつくほどページが進むという不思議な小説。シリーズ既刊『ブーリン家の姉妹』、『ブーリン家の姉妹2 愛憎の王冠』も同じように圧巻。このムカムカ感は、絶対にハマリます!