ウォッチメイカー/The Cold Moon (2006)
ジェフリー・ディーヴァー/池田真紀子訳
ISBN 9784167705886(上巻)/ISBN 978416770589(下巻)
11月10日発売
文春文庫(上下) /定価770円(上巻)、720円(下巻)
このミステリーがすごい!第1位!
週刊文春ミステリーベスト10、第1位!
ディーヴァーの代表作、ついに文庫化!
リンカーン・ライムに史上最強の好敵手が登場——時計じかけのように複雑精緻な犯罪計画で科学捜査の天才ライムを翻弄した《ウォッチメイカー》をフィーチャーした傑作『ウォッチメイカー』が文庫化されました。
死体とともにアンティークの時計を残し、自らを「ウォッチメイカー(時計職人)」と証する犯罪者がニューヨークに現れた。すでに2体の死体が発見され、警察の調べで、同じ形の時計を10個買った男がいることが判明した。「あと8件、殺しが起きるかもしれない!」そう考えたニューヨーク市警は四肢麻痺の科学捜査コンサルタント、リンカーン・ライムに捜査協力を依頼した。現場に残された物証と《ウォッチメイカー》の残したカードから、次の犯行を予測し、阻止しなければならない!
ディーヴァーのリンカーン・ライム・シリーズといえば、第1作『ボーン・コレクター』が有名ですが、本書『ウォッチメイカー』は、著者ディーヴァー自身が『ボーン・コレクター』を意識した作品になっています。ニューヨークの各地で犯行を繰り返すカリスマティックな「怪人」と、その計画の先を読み、犯行を阻止しようとする「名探偵」。ここまでは、『ウォッチメイカー』と『ボーン・コレクター』は相似形を成しています。
その先に何があるのか? そこが名匠ディーヴァーの真骨頂。単行本時に本書の校正刷りを読んでいた私は、文庫版で言えば下巻239ページの、あるセリフを読んだ瞬間にこの上なく驚愕しました。そもそも下巻に入ってからは延々とドンデン返しが連続するのです。かくも緻密に計算された現代ミステリは、他に類を見ないのではないでしょうか。いや、黄金時代の本格ミステリに比べても、本書の犯罪計画の見事さ、衝撃的なホワイダニットは傑作のひとつとして指を屈するに値すると思っています。
ちなみに本書は、『スリーピング・ドール』『ロードサイド・クロス』で主役を張る天才尋問官キャサリン・ダンスのデビュー作でもあります。人間の証言など信用しないリンカーン・ライムと、物証からではなく証人から真実を探り出すキャサリン・ダンス。この強力な名探偵コンビの競演を見ることのできる痛快なミステリでもあるのです。
もちろんライムのパートナー、アメリア・サックスも健在。本書は彼女の父親にまつわる謎も脇筋のひとつになっていて、ディーヴァーが「泣かせ」のスキルでも第一級であることが最後にわかります。
現代ミステリの最高の書き手であるディーヴァーが放った渾身の傑作です。
(文藝春秋翻訳出版部・永嶋俊一郎)
■EXCITE REVIEWの〈独占公開!ジェフリー・ディーヴァー初来日記念講演録 part1 〉 → http://www.excite.co.jp/News/reviewbook/20101117/E1289938110846.html
■担当編集者によるジェフリー・ディーヴァー日本滞在記 → http://wordpress.local/1289777951
■ジェフリー・ディーヴァー公式サイト → http://www.jefferydeaver.com/
■ジェフリー・ディーヴァー Twitter → http://twitter.com/JefferyDeaver
■文藝春秋サイトの本書紹介(立ち読みあり) →
上: http://www.bunshun.co.jp/cgi-bin/book_db/book_detail.cgi?isbn=9784167705886
下: http://www.bunshun.co.jp/cgi-bin/book_db/book_detail.cgi?isbn=9784167705893