『夜の真義を』/The Meaning of Night
マイケル・コックス(著)/越前敏弥(訳)
ISBN 978-4-16-329990-7/刊行日:2011年3月8日
定価2750円(税込み)/四六判並製
何もかも奪われた男が“真義”を求めた時、
裏切りも、陰謀も、愛も、追憶も、すべてが雪の上で緋色に染まる。
歴史小説マニアも恋愛小説ファンも夢中になれる、
これはリベンジ小説の傑作です。 ——豊崎由美
19世紀、ロンドン。暗い街路で見ず知らずの男を無造作に刺し殺した「私」は、かつて名門イートン校に学び、秀才を謳われた男だった。そんな「私」がなぜ、暗闇で血塗られた刃を握り締めるに至ったのか。
かつて私を陥れてイートン放校に至らしめた男は、いま天才詩人として名声を手にしている。その名はフィーバス・ドーント。わが仇敵。私が縁もゆかりもない男を刺し殺したのは、ドーントを葬るための予行演習であるのだ……。
かくして語られはじめる「私」の数奇な半生。名家タンザー男爵こそが実の父であると、母の遺品から知った「私」は、その件を調べはじめる。しかし当の男爵家に仇敵フィーバスが食い込んでいたのだ。血縁を証拠だてるものを見つけなくてはならない、子を持たぬ男爵の懐にフィーバスがもぐりこんでしまう前に——!
著者コックスは元オックスフォード大学出版局の編集者。本書の構想をすでに30年前からあたためていたところ、ガンにより失明のおそれがあるとの告知を受け、執筆を決意しました。ヴィクトリア朝文学に精通する著者が、己のすべてを懸けて彫琢したのが本作なのです。
華麗な文体、堅牢な構成、印象あざやかに息づく登場人物。暗いロマンティシズムと先を読まずにいられないサスペンスをそなえた典雅なるページターナー、華麗なるヴィクトリアン・ノワール。物語の愉悦を知る全てのかたに、絶対の自信とともにおすすめいたします。ことに『荊の城』や『エアーズ家の没落』のサラ・ウォーターズ、あるいは『五輪の薔薇』のチャールズ・パリサーをお好みのかたには、断じてお読み逃しなきよう、お願い申し上げる次第です。(文藝春秋翻訳出版部 永嶋俊一郎 Twitter ID: Schunag )