機械男Machine Man (2011)

 マックス・バリー/鈴木恵訳

 ISBN 9784163821801

 文藝春秋 定価(本体2000円+税)

 ダーレン・アロノフスキー監督映画化決定。

 大森望氏が絶賛する“最速最強のサイボーグSFサスペンス”。

 機械の身体を手に入れたオタク技術者、愛と技術のために

 轟音をあげて爆走する!


 加速装置つきで突っ走る、最速最強のサイボーグSFサスペンス。

 オレも“美脚”がほしい! ——大森望



 すごくギークなアイデアとアクションが満載の、

 スマートでシニカルな本を読みたいなら、『機械男』をチェックすべし。

     ——『WIRED』US版/ジョナサン・H・リウ


 僕は機械しか愛せない。人間は非論理的だ。恋人も友人もいないけれど、でも人間と関係を結ぶなんて非効率で面倒くさいじゃないか。

 そんなある日、僕は職場の事故で片脚を失う。そのときひらめいたのだ——エンジニアとしての才能を注ぎ込んで、生身より断然高性能の脚を開発しようと。名づけて〈美脚〉。その出来は素晴らしく、僕は残る片脚も機械化した。

 これが僕の未来を開いてくれた——僕に共感を抱いてくれた初めての女の子、ローラとの出会い。恋の成就。会社が与えてくれた大規模な開発チーム。思いのままに研究を進められる自由。だが僕は知らなかった、すべての背後に社の軍需部門の思惑があったことを。

 大地を揺るがして疾走し、轟音とともに跳躍する機械の脚。それを武器に、理系オタクは恋人のために死地に赴く。ダーレン・アロノフスキー監督で映画化決定、ガジェットとイノヴェーションの世紀を切り裂くギーク・サスペンス。

「子供のころ、ぼくは列車になりたかった」という奇怪な第一行目で幕を開ける『機械男』

 なんか聞いたことのあるタイトルだな、とお思いですか? 原題 Machine Man の直訳である邦題ですが、「機械男」の3文字から『電車男』『鉄男』を連想するのは、じつのところ正鵠を射ているように思います。非モテなオタク青年が、自分の心の赴くままに自身を機械化し、はじめての彼女を手に入れ、死闘を展開するという物語なのですから。

 この作品を原書で読んだとき、ほんの数ページのところで私は「これは“いま”の物語だ」と思ったのでした。日本と海外のあいだにギャップが生まれたゼロ年代以降、日本の“いま”の感性を映す海外小説は激減しました。ところが本書は、コミュ能力に難があり、機械が相手のほうが気楽だという草食で非モテのオタク青年を、絶妙なユーモアをまじえて鮮やかに描いています。主人公は「生身の人体」にはこだわらず、もっと高性能!もっと効率的!と機能を追求して、「機械男」になってゆく。

 SFであり、サスペンスであり、現代小説であり、しかしどれでもない。『ロボコップ』と『電車男』をギークな感性でつなぎ、ガジェットとイノヴェーションの時代を鋼鉄の脚で走り抜けるクールな長編小説。2010年代を象徴する小説だと思っています。

(文藝春秋翻訳出版部N)

●著者ウェブサイト

http://maxbarry.com/machineman/