こんにちは、集英社文芸書編集部で翻訳単行本の担当をしている佐藤と申します。
 このたび、ニール・シャスタマン 『僕には世界がふたつある』という小説を刊行しました。厳密にはミステリ作品ではないのですが、ミステリ愛好家の皆さんを必ずや満足させてくれる良書だと思いますので、どうかこの場を借りてご紹介させてください。

あらすじ:
 僕ことケイダン・ボッシュ15歳。彼は高校に通う普通の生活をしながら、船長やオウムと一緒に海賊船に乗って深海を目指す、という世界にも生きています。実はそれはケイダン自身の精神の病によって見えている世界なのですが、病識のない彼は、自分にふたつの世界があることを違和感なく受け入れています。
 不思議な海賊船で、不可解なことを述べる仲間と過ごす一方で、高校生のほうのケイダンは、誰かに殺されそうな気がしたり、床下のシロアリの音が聞こえるような気がしたり。家族や友人も、彼を心配しはじめます。

 いったい何が妄想で何が現実なのか、少年は何を信じればよいのか。精神疾患の予測不能な海を航行する、闘病と成長の青春小説。

 2015年度全米図書賞児童文学部門受賞作品。

 ここまで読むと良質なYA作品、ということになりますが、実はそれだけではありません。
 主人公の少年は海賊船に乗り、夜に見る夢の中のような、一見ナンセンスで奇妙な非日常を過ごしています。髭の船長、しゃべるオウムや船首像。それぞれの謎の言動。しかしそれは単なる無秩序ではなく――
 と、これ以上は差し控えます。少しでもご興味を持った方は、ぜひ書店で手に取ってみてください。
 翻訳者の金原瑞人さん曰く『「謎」が何なのかわからないまま物語が進む、素晴らしいミステリ』とのこと。そう、ある種ミステリともいえる(かもしれない)、ものすごい本です。
 どうぞご一読いただければ幸いです。

 あ、ちなみに2度読むと、だいたい新しい発見があります。断言します。

 なお、集英社からは、今後文庫だけでなく単行本でもさまざま翻訳作品を出していければと思っております。こちらもどうぞよろしくお願いいたします!

(集英社編集部・佐藤) 

  

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