フェア開催の書店さんが増えました!
記事なかほどにあるリストは随時更新していきますので、どうぞご覧ください。 (6月8日追記)

リスト更新しました。(6月19日追記)(6月27日追記)(7月3日追記)(7月17日追記)(7月25日追記)(8月1日追記)(8月2日追記)

 

 

 5月下旬~夏前ぐらいの展開予定で、書店ミニフェアを企画しました。ジャンルがミステリーでなくて恐縮なのですが、おもに、ナチの強制収容所やアメリカの日系人収容所をテーマにしたフィクション、ノンフィクションを集めています。

 アフィニティ・コナー著『パールとスターシャ』(東京創元社)を訳したことが、フェアを思いついたそもそものきっかけでした。アウシュヴィッツ強制収容所に入れられ、悪魔のような医師メンゲレに出会った双子の少女の物語で、辛口で知られるアメリカの評論家ミチコ・カクタニに「フィクションを読んでこれだけ涙を流したのはいつ以来だろう」と言わしめた本です。
 でも、こういうテーマは重くてつらい、と敬遠される方も多いでしょう。じっさいは、人間の強さに希望を抱くことができる美しい作品です。そしてまた、かけがえのない個人としてみずからを語る「言葉の大切さ」にあらためて気づかせてくれる小説です。同じようなテーマの良書はほかにもたくさんあり、きっかけさえあれば敬遠している方もそういう本を手にとってくださるのではないか、という思いに駆られました。
 また、言葉があまりにも軽く扱われたり、多様性の大切さが見失われたりすることの多い最近の風潮にも疑問を感じており、フェアを企画することがささやかなメッセージになれば、という気持ちもありました。
 では、フェアの参加書籍をご紹介します。

N=ノンフィクション F=フィクション 出版社名五十音順>書名五十音順

『隠れナチを探し出せ』(A・ナゴルスキ、島村浩子訳、亜紀書房)N
『13歳のホロコースト』(E・スローニム、那波かおり訳、亜紀書房)N
『1924』(P・R・レンジ、菅野楽章訳、亜紀書房)N
『ユダヤ人を救った動物園』(D・アッカーマン、青木玲訳、亜紀書房)N
『4歳の僕はこうしてアウシュヴィッツから生還した』(M・ボーンスタイン&D・B・ホリンスタート、森内薫訳、NHK出版)N
『アウシュヴィッツの図書係』(A・G・イトゥルベ、小原京子訳、集英社)F
『イレナの子供たち』(T・J・マッツェオ、羽田詩津子訳、東京創元社)N
『コードネーム・ヴェリティ』(E・ウェイン、吉澤康子訳、東京創元社)F
『パールとスターシャ』(A・コナー、野口百合子訳、東京創元社)F
『ローズ・アンダーファイア』(E・ウェイン、吉澤康子訳、東京創元社)F
『アメリカの汚名』(R・リーヴス、園部哲訳、白水社)N
『ヒトラーの裁判官フライスラー』(H・オルトナー、須藤正美訳、白水社)N
『あのころ、天皇は神だった』(J・オオツカ、小竹由美子訳、フィルムアート社)F
『片手の郵便配達人』(G・パウゼヴァング、高田ゆみ子訳、みすず書房)F
『人類の星の時間』(S・ツヴァイク、片山敏彦訳、みすず書房)F
『他者の苦痛へのまなざし』(S・ソンタグ、北條文緒訳、みすず書房)N
『夜と霧 新版』(V・E・フランクル、池田香代子訳、みすず書房)N

 詳細は、窓口をお願いした東京創元社さんのホームページをご覧ください。

 そして、現時点でのフェア開催書店さんは以下の通りです。開催時期、期間については書店さんによって違いがあり、全点がそろっていない場合もございます。

〇5月下旬~
・紀伊國屋書店札幌本店
・MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店
・紀伊國屋書店広島店
・蔦屋書店熊本三年坂店
〇6月上旬~
・MARUZEN&ジュンク堂書店札幌店
・函館蔦屋書店
・ブックファースト新宿店
・明文堂書店金沢野々市店
・紀伊國屋書店丸亀店
・ブックセンタークエスト黒崎井筒屋店
〇6月中旬~
・スーパーブックスあおい書店春日店
・未来屋書店レイクタウン店
〇7月上旬~
・谷島屋浜松本店(※6月下旬より時期変更になりました)
・ブックマンズアカデミー前橋店
〇7月中旬~
・紀伊國屋書店新宿本店
・丸善 津田沼店
・くまざわ書店池袋店
・喜久屋書店倉敷店
・ジュンク堂書店郡山店
〇7月下旬~
・BOOKSなかだ掛尾本店
〇8月上旬~
・ジュンク堂書店立川高島屋店
・江別蔦屋書店
・ジュンク堂書店三宮店
〇8月中旬~
・ジュンク堂書店池袋本店 New!
・堀江良文堂書店松戸店 New!

※上記リストは今後も更新していきます!

 開催してただける書店さんを引き続き募集中ですので、どうぞよろしくお願いいたします。お問い合わせは、東京創元社営業部 ℡03ー3268ー8231まで。

 一翻訳者が書店フェアを企画するのはめずらしいということなので、漠然とした思いつきがさまざまな方々のご協力によって実現した経緯も書いておきたいと思います。
 まずは、フェアの趣旨と自分で選んだ十数点の候補作品を記した簡単な企画書を作って、「はじめての海外文学フェア」の仕掛け人である谷澤さんにご相談しました。なにしろ、出版社勤務経験があるとはいえ、営業関係についてはまったくの素人で、なにをどうしたらいいのかさっぱりわかりませんでした。
 棚展開の規模のミニフェアなら書店さんもやりやすいこと、単行本だけではなく文庫も入れたほうがお客さんも手にとりやすいこと、出版社に窓口をお願いして注文をとっていただくことなどを谷澤さんから教えていただき、なんとか道筋が見えてきました。
 そこで、東京創元社の編集者さんにご相談したところ、社内で諮った上で快く窓口をお引き受けくださいました。同じく点数の多いみすず書房さんや亜紀書房さんからも、ご助言をいただきました。その過程で、在庫の関係や出版社さんからのご提案で当初の選書を少し変更し、最終的な推薦書籍が決まりました。

 フェア展開にあたり、各書籍の翻訳者の皆さんにはボランティアで推薦文をお願いし、逝去されたりしていて無理な場合は訳者あとがきからの抜粋をいただいて、翻訳者POPを作りました。推薦文をくださった翻訳者の皆さんには、心より感謝いたします。
 注文書、POP、フリーペーパーの作成は東京創元社さんが引き受けてくださいましたが、やはりA4大の書店展開用パネルが必要で、これは自分が費用を負担して知り合いのデザイナーさんにデザインを依頼しました(冒頭のフェアパネルです)。シンボルマークも作っていただいて、POPなどに流用しました。POP、フリーペーパーは東京創元社さんのホームページから書店さんがダウンロードできる形になっています。

 本がなかなか売れない昨今、なにかできることはないかとお考えの翻訳者の方も多いのではないでしょうか。こういったミニフェアは一つの手だと思います。ただしネックは、企画者に多少の費用負担が必要な点、窓口をお願いする出版社さんにはかなり労力をかけていただくことになる点です。
 猫ミステリー・フェアや犬ミステリー・フェアなどはすぐに候補作品が揃いそうですし、私などより有名な翻訳者が企画されれば、もっと反響は大きいと思います。翻訳ミステリー・シンジケート企画ということも考えられますね。
 とはいえ、翻訳者が書店さんから注文をとることはできないので、すでに自社や合同の年間フェアを抱えている出版社さんに窓口をお願いしなければなりません。それを思うと、とても頻繁にできることではないなと感じました。ただ、今回のミニフェアがなにかのヒントになれば、翻訳もののジャンルに少しでも光が当たるきっかけになれば、と願ってやみません。

 

野口百合子(のぐち ゆりこ)
 フェアを企画するという初めてのことに手を出し、それが皆さまのご協力でなんと実現してしまうという幸せに、大吉だったおみくじの「周囲への感謝をおこたらねば、吉相を授かる」という言葉を肝に銘じる今日このごろ。
 そしてついにスマホデビューも。車内でiPhone を出すとき、ことさら「当然よね」という顔でサラッと出しているところが、すでに自意識過剰だ。それにしても、何もしないでボーっと立っていると、近くの乗客のほとんどがスマホを手に俯いているので、自分の背が高くなった気がする。