2010年はアガサ・クリスティーの生誕120周年にあたります。3月16日、その120周年記念プロジェクトの一環で行なわれたアガサ・クリスティー展の内覧会に行ってきました。いきなりうしろからナマ孫(クリスティーの孫マシュー・プリチャード)! 幅のよい上品で陽気なおじいさまです。「今朝収録した貴方のインタヴューを来月のミステリマガジンに載せるからよろしく、あたしお祖母様の大ファンなんです」と片言で挨拶。交換した名刺には英語のほかに日本語も刷りこまれていて、なかなかのフレンドリー感が出ています。
なんでもこの展覧会は、ワールドツアーの一発目。発見されたクリスティーの創作ノートが展示されるのも世界初とのことです。うぉー肉筆! 肉声! カラー映像! 完全にミーハー根性で大興奮しながら観覧しました。
▲マシュー・プリチャード氏近影
会場内は、前述の直筆ノートを始め、クリスティーが薬剤師の資格を取得した際の証明書やP・G・ウッドハウスからの書簡、パスポート、実際に着たというドレスや机、椅子、カセットデッキ、愛用のタイプライター、初版本や書き込みされたタイプ原稿、シナリオ、プライベート映像に、プライベート・スナップ多数。展示数が多いのでとても見ごたえがありました。
サーファー姿のクリスティー写真とか、海にじゃぶじゃぶ入っていく(泳ぎが得意だったらしいです)水着のクリスティー映像とか、こんなん出していいの? と思わずニヤリとしてしまうものばかり。クリスティーは世界初の女性サーファー説もあるんですよね。あ、もちろん水着以外の写真もいっぱいです。晩餐会へ行くドレスアップしたクリスティーとか、バレエをやっている少女時代のクリスティーとか(これはかなり美少女!)。犬と一緒の写真もたくさん。犬好きだったんですね。犬の名前も「ゴリ」とか「ビンゴ」とかかわいいのです。
映像は、晩年の家族で遊んでいるカラーのものや、発掘現場の映像もあります(これはモノクロ)。中東の発掘現場でも小説を書いちゃう人ですからね。
デッキに入りっぱなしのカセットに残っていたという肉声で「よく仕事場を取材させてって言われるけど、私はタイプライターさえあればどこでも書けるのよね」とクリスティーが話していたのも印象的。タイプライターが案外ちいさくて、これを持ち運んで世界中で書いていたのかしらと想像しました。
▲『スタイルズ荘の怪事件』初版本表紙
孫から聞いたこぼれ話ですが、展示されているパスポートのクリスティーの生年が間違っています。本来の生年は1890年なんですが、1年違いうのです。女心ゆえでしょうか……
ちなみに『アガサクリスティーの秘密ノート』(早川書房4月10日発売予定)の著者ジョン・カランさんもいらしてました。彼にもミステリマガジンでインタヴューします。カランさんは「クリスティー・レター」というファンジンの主幹をしていたのですが、どうして主幹をやめたのか訊いたら、「ううん、それは複雑な事情が。エージェントにお金にならないことはやめての執筆に集中するように言われて……」(これは大人の事情すぎてミステリマガジン本誌には掲載できません!)とのことでしたが、大変気のいいクリスティー&ミステリ研究家です。
▲ジョン・カラン氏近影
展覧会は(『アガサ・クリスティーの秘密ノート』もですが)創作の秘儀に触れるようなところがあって非常に刺激的です。現在開催中で6月13日までやっています。
行くとまたクリスティーが読みたくなります。そしてそんなときはミステリマガジン四月号も会場で販売しておりますのでぜひ(←宣伝。失礼しました)。開場内では、本誌やクリスティーの著書のほかに、クリスティーグッズも販売しています……私もたくさん買っちゃいました。絵葉書は基本として、初版本表紙と少女時代のクリスティーの肖像をプリントしたブックマークもなども、ファンの心をくすぐります。
どうぞ機会がありましたらぜひ足をお運びいただき、楽しんできてください!
ミステリマガジン編集部 M・K
「アガサ・クリスティー展」
〜ミステリーの女王 その軌跡〜
期 間 : 3月17日(水)〜6月13日(日)
時 間 : 10:00〜17:30(最終入館17:00)
場 所 : 東京フォーラム内、相田みつを美術館 第2ホール
入館料 :
[当日]一般1300円/ 高校・大学生1200円/小・中学生800円
[団体]※団体は20名以上 一般1000円/高校・大学生900円/小・中学生500円
問合せ : アガサ・クリスティー展事務局(Zen-A)
03-6825-1122(平日11:00〜19:00)
主 催 : テレビ朝日/相田みつを美術館