第2回翻訳ミステリー大賞の受賞作ジェラルディン・ブルックス『古書の来歴』、その翻訳者の森嶋マリさんに副賞として図書カード5万円分を贈呈いたしました。このたび森嶋さんから、その使い道についてご寄稿いただきました。(事務局) |
翻訳ミステリー大賞の副賞は五万円分の図書カード。それはつまり、ドーンと一気に五万円分の本を買ってもよろしい! ということである。この世知辛い世の中、めったにめぐってこないチャンス。ここはひとつドーンと行くしかないでしょう!
と、むやみやたらに気を大きくして、購入基本方針を定めた。
一つ、翻訳ミステリー大賞の副賞なのだから翻訳ミステリーを中心に、できるだけ新刊を買う。
一つ、好きな日本人作家のミステリーを少々混ぜてもかまわない。
一つ、前から読みたかった翻訳もののノンフィクションを何冊か買ってもいいかもしれない。
一つ、愛犬を失って以来避けてきた“犬もの”にも、勇気を出して手を伸ばしてみる。
一つ、普段お世話になっている大型書店を中心に購入するが、翻訳ミステリーほぼ壊滅状態の自宅近辺の書店も覗いてみる。
ざっとこんな感じ。
まずは多摩地区を中心にチェーン展開しているオリオン書房のダイヤモンドシティ・ミュー店へ。車で行ったから、重さを気にせずバンバン買う。調子に乗って、気づくと副賞の半分を散財。
次に向かったジュンク堂書店池袋本店では、購入予定本が置いてある棚をインターネットで調べておいたので、トントンと買い物が進む。けっこうな重量になるが、担いで帰った。実は、ある小説でセレブなママが子供の絵本を数冊買って、「(重いから)これ自宅に送ってくださる」というシーンを読んで以来、一度でいいからそのせりふを言ってみたいと憧れていたのだが、ケチなのか小心者なのか力持ちなのか、今回もそのひとことが出てこなかった。
友人との待ち合わせで新宿に出るときは、早めに行って紀伊國屋書店新宿本店を巡回。
帰宅ついでに、自宅最寄駅の改札正面に店を構えるやまもと書店にふらりとはいる。こじんまりした店だから、翻訳ミステリーの新刊があるわけないと思っていたが、意外にも『13時間前の未来』を発見。「それにしても、なぜにこれだけ置いてあるの?」と疑問を抱きつつ購入。
近所のスーパーにはいっているブックセンターでは、これまた意外なことに単行本の『リトル・ブラザー』が買えてびっくり。調子に乗って、駅の反対側のスターブックスにも足を伸ばすが、翻訳ミステリー新刊は見あたらず、落胆して帰路に着く。
気を取り直して、駅前でいちばん大きな野崎書林に行く。品揃えは期待はずれに終わったが、それでも文庫を数冊購入。そういえば、だいぶまえに、この店の売り場の一部がゲームソフト、CD、DVDコーナーに変わったのだと思いだす。「本だけでは苦しいんだね……」と同情し、「がんばれ〜!」と心のなかでつぶやきながら店をあとにする。
うーむ、地元でちびちび買っていたのでは、当初の計画“ドーンとお買い物”が遠のいていく。そこで思いついたのが、オンライン書店の本やタウンで注文して、近くの書店で受けとるという方法。安易な方法だが、“ドーン”と行きたいのだからしかたがない。でも、その場合、受けとり店の売り上げに貢献できるのだろうか? 今度、誰かに訊いてみなければと思いつつ、調べてみると隣町の正育堂書店で受けとれると判明。そこは子供のころによく通った書店である。当時は“大型書店と言えば正育堂”と思いこんでいたほどで、ひじょうに懐かしい店だ。とはいえ、今回受けとりにいったのは、駐車場がある支店のほう。昔通った本店のほうにすればよかったと、かすかな後悔が残った。
そんなこんなで、しめて二十八作品でお買い物終了! 購入本は以下のとおりです。(順不同)
『アンダー・ザ・ドーム(上下)』(スティーヴン・キング著、白石朗訳、文藝春秋)
『リトル・ブラザー』(コリイ・ドクトロウ著、金子浩訳、早川書房)
『夜の真義を』(マイケル・コックス著、越前敏弥訳、文藝春秋)
『パイレーツ——掠奪海域——』(マイクル・クライトン著、酒井昭伸訳、早川書房)
『盗まれっ子』(キース・ドノヒュー著、田口俊樹訳、武田ランダムハウスジャパン)
『ぼくの名はチェット』(スペンサー・クイン著、古草秀子訳、東京創元社)
『二流小説家』(デイヴィッド・ゴードン著、青木千鶴訳、早川書房)
『夜は終わらない』(ジョージ・ペレケーノス著、横山啓明訳、早川書房)
『氷姫』(カミラ・レックバリ著、原邦史朗訳、集英社)
『裏切りの代償』(ブレット・バトルズ著、鎌田三平訳、武田ランダムハウスジャパン)
『13時間前の未来(上下)』(リチャード・ドイッチ著、佐藤耕士訳、新潮社)
『流刑の街』(チャック・ホーガン著、加賀山卓朗訳、ヴィレッジブックス)
『いたって明解な殺人』(グラント・ジャーキンス著、二宮磬訳、新潮社)
『悪魔に食われろ青尾蠅』(ジョン・フランクリン・バーディン著、浅羽莢子訳、東京創元社)
『スリー・パインズ村の無慈悲な春』(ルイーズ・ペニー著、長野きよみ訳、武田ランダムハスジャパン)
『ピザマンの事件簿2 犯人捜しはつらいよ』(L・T・フォークス著、鈴木恵訳、ヴィレッジブックス)
『眺めのいいヘマ』(ジル・チャーチル著、新谷寿美香訳、東京創元社)
『嘆きのテディベア事件』(ジョン・J・ラム著、阿尾正子訳、東京創元社)
『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』(ジュノ・ディアス著、都甲幸治、久保尚美訳、新潮社)
『雪』(オルハン・パムク著、和久井路子訳、藤原書店)
『夜と霧』(ヴィクトール・E・フランクル著、池田香代子訳、みすず書房)
『銃、病原菌、鉄(上下)』(ジャレド・ダイアモンド著、倉骨彰訳、草思社)
『錯覚の科学』(クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ著、木村博江訳、文藝春秋)
『カムバック、コモ』(スティーヴン・ウィン著、佐藤耕士訳、文藝春秋)
『ザ・パワー』(ロンダ・バーン著、山川紘矢+亜希子・佐野美代子訳、角川書店)
『麒麟の翼』(東野圭吾著、講談社)
『ばらばら死体の夜』(桜庭一樹著、集英社)
大切に読ませていただきます。ありがとうございました。