第十五回翻訳ミステリー大賞の本投票には、多くの翻訳者のみなさまから投票をいただきました。有効票数は37。ここであらためて、そのおひとりおひとりに御礼申し上げます。
きょうとあしたは投票に添えられた「熱いおすすめコメント」を二回にわけてご紹介します。
作品は得票数順、投票者のお名前は投票メール到着順(敬称略)です。お名前のうしろの書名は投票時にご記入いただいた投票者ご本人の代表訳書です。コメントなしで投票した方は、お名前と代表訳書のみ挙げさせていただきました。
また、受賞作と最終候補作がとりあげられた「書評七福神今月の一冊」の該当月のリンクも添えました。えりすぐりの5作品を七福神はどんなふうに読んだのか。ぜひリンク先もお読みください。
受賞作『破果』ク・ビョンモ/小山内園子訳(岩波書店)
(13票)
大須賀典子(『大富豪になる人の小さな習慣術』):導入部から心を鷲摑みにされる迫力展開、詩にも似たリズミカルな文体。老衰と孤独、切ない慕情。凄絶な中に仄かな希望を残す、韓国ドラマ好きなら納得の結末。淡々とした主人公のモノローグに訳者の力量を感じました。
廣瀬麻微(『怪盗ギャンビット1』):読み終えた瞬間、「こういうのが読みたかったんだよ!」と思わず叫んでしまった作品です。著者の独特な文体を忠実に再現した訳文もすばらしい。表紙も大好きです。これから何度も読み返すと思います。
川添節子(『まずは「聞く」からはじめよう』)
唐木田みゆき(『傷を抱えて闇を走れ』)
北田絵里子(『レイラの最後の10分38秒』)
越前敏弥(『オリンピア』)
坂田雪子(『魔王の島』)
矢能千秋(『ネコ全史』)
三角和代(『名探偵と海の悪魔』):それぞれ推したいポイントのある5作品でとても迷ったのですが、強く記憶に残る主人公の魅力は、これから海外ミステリを手に取ろうとしている読者にもおすすめしやすいと考えました。
南沢篤花(イエール大学人気講義 天才):幼い頃から一人で生きていくために情を捨てざるを得なかった主人公が、晩年になって自分の内奥深くにしまい込んでいた情を取り戻し、誰かを救うため自分の命を賭して闘いに赴く姿に感動した。
高野優(『ルーフォック・オルメスの冒険』):韓国ミステリ、初めて読みました。おもしろかったです。
高橋佳奈子(『ヴァージンリバー』):ミステリーとしてよくできている、読みごたえがある、ボリューム満点――そんな作品ばかりのなかで、そのどれにもあてはまらないこれを選んだのは、あとあとまで記憶に残るのは、この本だけという気がしたからです。
高橋恭美子(『容疑者』):日本語読解力を試されるような長文が美しく心地よく、爪角のハードボイルドな生き様と犬の無用のけなげさに胸を締めつけられながら終始祈るような気持ちで読み進め、予想外の救いある結末に涙した。
■『破果』→ 2023-01-18 書評七福神の十二月度ベスト!
候補作『真珠湾の冬』ジェイムズ・ケストレル/山中朝晶訳(早川書房)
(7票)
小林さゆり(『私の唇は嘘をつく』):冒険小説と警察小説とロマンス小説が見事に融合したこのすばらしい作品を多くの方に読んでいただきたいです。
不二淑子(『ボストン図書館の推理作家』):大変迷いましたが、地理的時間的スケールの大きさ、読み物としての面白さに加えて、この時代だからこそこの作品を推すことに意味があるのではないかと考えて選びました。
黒木章人(『イングリッシュマン 復讐のロシア』):時代、舞台、事の顛末、登場人物、小道具、結末のすべてが完璧に自分の好み!
青木創(『消えた戦友』)
服部京子(『自由研究には向かない殺人』)
白須清美(『五つの箱の死』)
北 綾子(『ブラッド・クルーズ』)
■『真珠湾の冬』→ 2023-01-18 書評七福神の十二月度ベスト!
あしたは以下の三作へのコメントを紹介いたします。