当翻訳ミステリー大賞シンジケート管理人・杉江松恋が司会を務めるトークイベントで、「このミステリーがすごい!」23年の歴史を検証する試みが行われます。第2部では翻訳出版に関与する編集者に登壇願い、翻訳エンターテインメントの活況を作り出すためにどのような対策をとっているか、また今後どうあるべきかの討論をしていただく予定です。これから編集者を志望しようとしている方にもぜひ現場の声を聞いていただければと思います。どうぞお誘いあわせの上ご参加ください。(杉江)
【開催場所】風土カフェ&バー「山羊に、聞く?」
(東京都渋谷区代官山町 20-20 モンシェリー代官山 B1F)(東急東横線「代官山」徒歩1分)
【開催日】2011年12月10日 (土)
【開場】19:00〜 【開演】19:30〜
【出演】杉江松恋、茶木則雄(元ミステリ専門書店「深夜プラスワン」店長)
翻訳ミステリ出版各社担当者 文春・永嶋俊一郎、早川・山口晶、創元・宮澤正之、扶桑社・冨田健太郎、新潮社・若井孝太
【チケット購入】こちらをクリック。
今年もミステリー界にとって最もアツいシーズンがやってきたーー年末恒例のミステリーベスト10発表ラッシュのスタートだ。
「このミステリーがすごい!」は、まさにその代表格。名うての書評家、作家、翻訳家、そしてビッグネームファンなど、業界の目利きが寄ってたかって、この一年間読んできたミステリの中からとっておきの作品を推薦。一人一票の公平な投票でランキングを決めて、一冊のムックとして販売するという宝島社の恒例企画だ。
1988年のスタート当時、これほど画期的な企画はなかった。それまでの文学賞や年間ベストは、少数の評論家や作家の推薦で決められてきており、それが水戸黄門の印籠のように絶対的な権威として通用するものだったからだ。当然、選者が如何に優秀でも、一年間に読める本の数は限られているわけで、その選から漏れる名作傑作も少なくない。時には政治的な意図や、個人的なバイアスで選ばれるものもあっただろう。
「読者の実感でリアルな今年の一番を決めよう」という問題提起によってスタートした『このミス』は、従来のベスト10に対するアンチテーゼとして、ミステリファンの圧倒的な信頼と支持を集めるようになった。
その影響力たるや、凄まじいものがある。
今や、一般ファンにとって「このミス」は、一年間のミステリの話題作、傑作を知り、購入を決める絶対指標となりつつあるからだ。当然売上に対する影響も絶大。ベスト10入りした各社は一斉に本の帯を「このミス◯位」と順位入りのものに差し替え、上位本はそのままベストセラーリストトップに躍り出る。クリスマスから年末年始と続く読書シーズンの本の売上は、まさに「このミス」が握っていると言っても過言ではない。
今やメジャー級の文学賞に匹敵するだけのパワーを持つに至った「このミス」。23年前、いち出版社のムックが、読書界の動向を握る存在になると誰が考えただろう? その年の新酒を愛でる「ボジョレーヌーボー」解禁や、地方の業者が工夫して創り上げたオモシロフードの対抗戦「B−1グランプリ」同様、いまや年間ベストテンはミステリビジネスの行方を左右する、巨大な“金の卵”なのである。
今年のベスト10に並んだ諸作を遡上にあげ、“実のところどうなの?” 的な辛口評価で分析していくと共に、この23年間の「このミス」の歴史を紐解き、業界に与えてきた影響の数々や、このビッグサクセスを生んだ要因などをディープな視点でじっくり分析していこう。