現在日本で翻訳されているミステリー作品の大半が英語圏のものです。アメリカ、イギリスこそがミステリーの本場。そういう認識をもっている人も少なくないでしょう。先日、アメリカの評論家オットー・ペンズラーがインタビューに答え、「民主主義政権が磐石で、警察組織によって治安が安定していたこと」「書籍が比較的低価格(2012/10/17 07:54時点)で、大衆層に安定的に普及していたこと」などを英語圏ミステリー隆盛の理由として挙げているのも見ました。はあ、なるほど。一見もっともらしい説ですが、世界のミステリー事情についてよく知らないとうかつには頷けないですね。英米以外の国にも、もしかしたら夢のように素晴らしいミステリー創作者がたくさんいるのではないかしらん。

 ご存じ「ミステリー酒場」では英語圏以外の国にも焦点を当て、世界のミステリーについてよく知るためのイベントを連続してやっていきたいと思っています。まずはドイツから。ご存じのとおりドイツには第3帝国時代という暗い歴史があります。その過去を払拭するため、一時はナチスを題材とした小説の執筆自体がタブー視されたこともあったほどです。映画化もされた『朗読者』の作者ベルンハルト・シュリンクなどは、そのタブーを破ることで新しいドイツ文学の創造に挑戦した作家の1人です。そうした運動、新しい波は、おもしろい小説、おもしろいミステリーを生み出す原動力にもなりえているのではないでしょうか。

 数年前に話題を読んだ『深海のYrr』の作者フランク・シェッツィング、本屋大賞の翻訳小説部門を受賞した『犯罪』のフェルディナント・フォン・シーラッハなど、近年はドイツ発のミステリーがヒットを飛ばすことも多くなってきました。現代のドイツ・ミステリーはどうなっているのか。いまやドイツ・ミステリーの翻訳紹介では第1人者となった酒寄進一さんと、ドイツ・ミステリーの最新事情についてウエブで精力的に紹介しておられるマライ・メントラインさんにお話をうかがいます。どうぞお楽しみに。(杉江松恋)

[出演者紹介] 

酒寄進一 (和光大学表現学部教授。主な訳書にフェルディナント・フォン・シーラッハ『犯罪』『罪悪』、ネレ・ノイハウス『深い疵』など。)

マライ・メントライン (シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州キール出身。NHK教育 『テレビでドイツ語』 出演。早川書房『ミステリマガジン』誌で「洋書案内」などコラム、エッセイを執筆。最初から日本語で書く、翻訳の手間がかからないお得な存在。しかし、いかにも日本語は話せなさそうな外見のため、お店では英語メニューが出されてしまうという宿命に。まあ、それもなかなかオツなものですが。)

※マライ・メントラインさんの連載はこちらのサイトでご覧になれます。

[聞き手] 杉江松恋(書評家・ライター)

[日時] 2012年10月23日(火) 開場・19:00 開始・19:30

[会場] Live Wire Biri-Biri酒場 新宿

     東京都新宿区新宿5丁目11-23 八千代ビル2F ( Googleマップ

    ・都営新宿線「新宿3丁目」駅 C6〜8出口から徒歩5分

    ・丸ノ内線・副都心線「新宿3丁目」駅 B2出口から徒歩8分

    ・JR線「新宿」駅 東口から徒歩12分

[料金] 1500円 (当日券500円up)

■予約はこちらのページからおねがいします。→boutreview