こんにちは。杉江松恋です。

 いつもありがとうございます。

「杉江松恋のガイブン酒場」は、ミステリー・プロパーの読者である杉江が、世界のさまざまな文学を読むことに挑戦してみたいと考えて始めたイベントです。その月以降に出る外国文学を早読みし一足先に内容をご紹介するという趣旨で、河出書房新社、新潮社、白水社、早川書房各社にご協力いただいて開催をしております。明日に迫った第四回の情報を、本日は少しお伝えしたいと思います。

 明日のラインアップ、まずはロン・カリー・ジュニア『神は死んだ』(白水社/藤井光訳 四月刊行予定)にご注目ください。有望な若手作家に対して受賞されるニューヨーク公立図書館若獅子賞を獲得した期待の新人のレビュー短編集です。刺激的な題名のとおり、冒頭の一篇でいきなり神が死んでしまうという大波乱の幕開け。「神は死んだ」というのはニヒリズムの蔓延する現在を象徴的に表現したニーチェの言葉ですが、そう、本当に死んじゃうのです。作者はその事態に続くであろう状況をオムニバス的に描いていますが、全編に漂う深い絶望感が実に素晴らしい。特にフラナリー・オコナーの某短編を思わせる「小春日和」は犯罪小説ファンにもぜひ読んでいただきたい作品です。「退却」もいいなあ。

 すでに刊行されていますが、『朗読者』で知られるベルハルト・シュリンクのひさびさの短編集『夏の嘘』(新潮社/松永美穂訳)もお薦めです。ここに綴られているのは、ふとしたはずみで嘘をついてしまった者たちの人生模様です。そのことによって歯車が狂い、いつもの通りには回らなくなってしまう。そこに生じるおかしみや哀しさを名手は描き出していきます。とりあえず男性諸氏にはどうしようもないダメ男の「バーデンバーデンの夜」をお薦めしたい。身につまされる方も多いのではないかと愚考いたします。

 そしてもう一冊はポーランドのノーベル賞作家アイザック・バシェヴィス・シンガー傑作集『不浄の血』(河出書房新社/西成彦訳 三月刊行予定)です。ユダヤ・コミュニティを舞台とした、ここでしか読めない物語の数々。悪魔によって経験なユダヤ教信者の運命が狂わされるという内容の作品が多いことに気づきますが、これは彼らの宗教観を反映したものなのでしょう。ハリイ・ケメルマンのラビ・シリーズでユダヤ教の世界を知った筆者としては、世界観のひとつひとつがツボにはまり楽しめました。特に読んでもらいたいのは第二次世界大戦を背景にした「ちびの靴屋」。しみじみと感動しました。

 以上、3点を中心に進行してまいります。私同様、世界文学にはまだあまりなじみがないけど、おもしろいものならなんでも好きだから、その扉をノックしてみたいなと思っている方、特に歓迎いたします。一緒に文学の世界を探検してみませんか?

 詳細は以下のとおり。お待ちしております。

[日時] 2013年3月8日(金) 開場・19:00 開始・19:30

[会場] Live Wire Biri-Biri酒場 新宿

     東京都新宿区新宿5丁目11-23 八千代ビル2F (Googleマップ)

    ・都営新宿線「新宿3丁目」駅 C6〜8出口から徒歩5分

    ・丸ノ内線・副都心線「新宿3丁目」駅 B2出口から徒歩8分

    ・JR線「新宿」駅 東口から徒歩12分

[料金] 1000円 (当日券200円up)

※終演後に出演者を交えてのフリーフード&フリードリンクの懇親会を開催します。参加費は2800円です(当日参加は3000円)。懇親会参加者には、入場時にウェルカムの1ドリンクをプレゼント。参加希望の方はオプションの「懇親会」の項目を「参加する」に変更してお申し込みください。参加費も一緒にお支払いただきます。

※懇親会に参加されない方は、当日別途ドリンクチャージ1000円(2ドリンク)をお買い上げください。

※領収書をご希望の方は、オプションの「領収書」の項目を「発行する」に変更してお申し込みください。当日会場で発行いたします

 ご予約はこのサイトからお願いします。