双葉社発行の雑誌「小説推理」にミステリー時評を書き始めたのは一九七八年一月号からだから、ただいま三十六年目だ。最初の五年間は四ページで日本ミステリーと翻訳ミステリーをほぼ交互に取り上げ、六年目からは二ページになり、扱う対象も翻訳ミステリーだけとして現在に至っている。
この連載はこれまで二冊の本にまとまっている。最初の五年分をまとめたのが『冒険小説の時代』で、次の十年分をまとめたのが『ベストミステリー10年』だ。で、このたびそのあとの二十年分をまとめた本を上梓した。それが『極私的ミステリー年代記』である。つまり、
『冒険小説の時代』(一九八三年・集英社)
『ベストミステリー10年』(一九九三年・晶文社)
『極私的ミステリー年代記』(二〇一三年・論創社)
という三冊を揃えると、この三五年間の翻訳ミステリーがほぼ一望できるはず——と思ったのだが、残念ながらそうなっていない。というのは、『極私的ミステリー年代記』のあとがきにも書いたのだが(というよりもこの小文は、今度の新著のあとがきとほぼ同じである。書店で『極私的ミステリー年代記』を手にしてあとがきに目を通してもらえればいちばんいいのだが、その機会のない方のためにいまこうして書いている)、この二〇年間で私が年間ベスト1に推した作品が、週刊文春の「ミステリー・ベスト10」、あるいは宝島社の「このミステリーがすごい!」でどう評価されているかというと、このふたつのベスト10で同様に高評価を受けたのは、この間たった二作にすぎない。一九九四年の『シンプル・プラン』と、二〇〇四年の『荊の城』だ。あとの私のベスト1は、その二つのベスト10の上位どころか、三〇位にも五〇位にも入っていない年が多い。
ようするに私のミステリー時評を読んでいるだけではその年に世間で話題になった作品がわからないのだ。そこで今回は各年度の末に、週刊文春の「ミステリー・ベスト10」と宝島社の「このミステリーがすごい!」でその年話題になったのはどの作品なのかを列記して補足してみた。上下2巻で各巻二六〇〇円という価格(2013/09/10 06:57時点)だからおすすめしにくいが、興味を持たれたらぜひどうぞ。