さて、先月末より書店店頭に並んでいたかと思うのですが、ミステリマガジン11月号ポケミス60周年記念特大号について、ご紹介させてください。

 1953年に創刊した通称ポケミスことハヤカワ・ポケット・ミステリ(正式名称ハヤカワ・ミステリ)が、この9月で60周年を迎えることを記念した特大号、448ページとボリュームアップ(その分お値段もアップしてます orz でも決して暴利を貪ってはおりません)してお届けいたします。

 ポケミスといえば、1冊目、101番『大いなる殺人』(ミッキー・スピレイン)に始まったこのミステリ叢書は、9/25現在、最新刊1875番『カルニヴィア 1 禁忌』(ジョナサン・ホルト)まで、計1775点が刊行されています。

 ポケミスの初期の作品選定にはかの江戸川乱歩さんらが名を連ね、その後、本誌初代編集長でもあった都筑道夫さんも選定に翻訳に創作にと大きく関わりました。

 1956年には「ポケット・ミステリ」の出版で江戸川乱歩賞を受賞、2011年には前装幀の勝呂忠氏と現装幀の水戸部功氏がポケミスの装幀で講談社出版文化賞ブックデザイン賞を受賞するなど、輝かしい歴史を刻み、気づけば世界最長のミステリ・シリーズとなって、今もその記録を更新し続けています。

 ポケミスの名作といえばアガサ・クリスティーやディクスン・カー、レイモンド・チャンドラーやウィリアム・アイリッシュなどの古典名作に加え、 『アデスタを吹く風』(トマス・フラナガン)や『ママはなんでも知っている』(ジェイムズ・ヤッフェ)、『パコを憶えているか』(シャルル・エクスブライヤ)、一世を風靡した007やカーター・ブラウン、コリン・デクスターやP・D・ジェイムズ、エド・マクベインの諸作……まったくあげきればきりがないです。

 近年でも新生ポケミスとして刊行された『卵をめぐる祖父の戦争』(デイヴィッド・ベニオフ)『二流小説家』(デイヴィッド・ゴードン)『解錠師』(スティーヴ・ハミルトン)などは各誌ミステリランキングで上位を占め、新装幀とともにポケミスの新しい魅力を打ち出しました。時代時代で名作・最新傑作を収録してきたポケミスの歴史は、本邦における翻訳ミステリ受容史とも重なっています。

 そんなポケミスの歴史を踏まえまして、ミステリマガジン11月号ポケミス60周年記念特大号では、ポケミス愛好者たちによるアンケート&エッセイや、座談会、そして特別付録として巻末につけた総解説目録などから、ポケミスの全貌に迫りつつ、ミステリの過去から未来をポケミスを通して俯瞰していきます。

 もう少し細かくご紹介していきますと……

 まず、ポケミスの鉄人が答える私の好きなポケミスBEST3アンケート&エッセイに寄稿してくださったのは、

芦辺拓、我孫子武丸、有栖川有栖、池上冬樹、宇佐川晶子、逢坂剛、大倉崇裕、大矢博子、小山正、折原一、恩田陸、影山ちひろ、霞流一、佳多山大地、香山二三郎、川出正樹、紀田順一郎、北上次郎、北原尚彦、北村薫、木村二郎、日下三蔵、小池啓介、郷原宏、小財満、小鷹信光、小森健太朗、権田萬治、酒井貞道、笹川吉晴、霜月蒼、小路幸也、仁賀克雄、新保博久、末國善己、杉江松恋、諏訪部浩一、瀬名秀明、千街晶之、高野優、高橋良平、田口俊樹、千野帽子、月村了衛、堂場瞬一、直井明、中辻理夫、西上心太、野崎六助、法月綸太郎、羽田詩津子、日暮雅通、平岡敦、廣澤吉泰、福田和代、藤田宜永、古山裕樹、前島純子、松坂健、三津田信三、三橋暁、皆川博子、村上貴史、安井俊夫、横井司、横山啓明、吉野仁、若竹七海、若林踏、渡辺武信、渡辺博史(敬称略)

 以上71名のみなさまです。集計はしたもののバラけてしまったので高得点の作品を人気作としてご紹介しています(じつを言うとポケミスBEST3アンケート人気1位は出ました。こっそり誌面に書いたので探してみてください)。

 ポケミスといえばこの人! 原リョウさんによる60周年に寄せたエッセイ「ポケミスとの出会いはどこで」も要チェックです。

 さらに、1936年(昭和11年)生まれで、ポケミスの誕生から現在までを見つめてきたミステリ界の御意見番お三方、小鷹信光さん権田萬治さん仁賀克雄さんによる、“ポケミスの過去と未来”を語る座談会を収録しています。濃いです。すごい濃かったです。お三方のポケミスとのプライベートな関わり合いから、日本ミステリ史におけるポケミスの位置づけ、未来への提言まで、話題は多岐にわたっています。司会は高橋良平さんです。

 三橋暁さんによる7ページでわかるポケミス60年の歴史解説や、Cover Collectionポケミス60周年記念イベント情報なども掲載しています。

●イベントの一環としてポケミス手帳を発売します。詳細はコチラです。

http://www.hayakawa-online.co.jp/news/detail_news.php?news_id=00000685

●そのほか、ポケミス厳選5点を現在のポケミスのブックデザインを手がける水戸部功氏による新装幀で刊行、品切れ作品も含めた全点展示も予定しています。詳しくは次号のミステリマガジン2013年12月号と早川書房HPでお知らせいたします。

 現在稼働中の既刊の全点フェアも行ないます。フェア開催店舗は以下の書店です。

http://www.hayakawa-online.co.jp/news/detail_news.php?news_id=00000681

 そしてお待たせしました! 特別付録として巻末にハヤカワ・ミステリ総解説目録[1953-2013] もつけました。50周年のときには書籍で[1953-2003]版が出ましたが、 今回は雑誌のみでのお届けになります。ちなみに私の周囲でも、総目録の既読作をチェックして、未読を潰していく作業にいそしんだり、索引から面白タイトルバトル(『女体愛好クラブ』vs『今夜の私は危険よ』etc……)をしたりと、資料性の高さはもちろん、さまざまな角度でお楽しみいただいています。

 ポケミス60年、1775冊の 歴史を、ギュギュっと閉じ込めた本号。いやー、校了2日前くらいまで「ムリ、絶対終わらない、二倍の厚さなのに校了早いとかマジムリ」と密かに思っていましたが、ちゃんと発売されるもので……そんな編集者たちの血と汗も閉じ込めました(^_^;)

 アンケートや座談会で出てきた気になるポケミスを、巻末の総解説目録でどんな内容かご確認いただくことができるので、ポケミス愛好者の方はもちろん、ポケミス初心者の方も、ここから新たにポケミスに親しんでみてください!