東西冷戦が終わった時、人はもうスパイ小説は流行らないと言った。早川書房からの作品刊行が一旦途切れた際には、ル・カレの盛期は過ぎたのだろう、とも言った。しかしどうだろう。今なお、ジョン・ル・カレは一貫して輝き続けている。

 冷戦終結時には予想だにしなかった、世界情勢の大変動と、地域紛争の活発化、あの9.11にウクライナ動乱、新冷戦……。一向に平和にならない世界において、国際謀略フィクションの使命は終わるどころか、その存在感を一層強めている。そしてル・カレは八十歳を超えた今も、第一人者として、最前線に立ち続けているのだ。

 だが彼の偉業が十分に検証されたとは言えない。1990年代以降に本格的にミステリを読み始めた読者に、その魅力が十分知らしめられているとも言えない。その理由は一つには、ル・カレの名声が冷戦構造下において確立して以降、大々的な再検証や再評価の機会がなかった(あっても散発的にとどまった)からではないか。

 そこでこの度、特に東西冷戦終結後の作品にフォーカスしつつ、改めてル・カレの魅力とその本質を語るイベントを挙行することとした。それがこの、《今、ふたたびル・カレ 〜after 911 テロ時代に最も求められた男 ミステリ羅針盤#1》である。

ミステリ羅針盤(※)の現レギュラーである2名の書評家に加えて、国内におけるル・カレ最新刊『誰よりも狙われた男』を含む複数のル・カレ作品翻訳を手掛けた加賀山卓朗氏と、ル・カレから多大な影響を受けそれが自身の代表作《機龍警察》シリーズにも表れているという作家・月村了衛氏を迎えて、ル・カレの創作行為の源泉に迫る。乞うご期待。

今、ふたたびル・カレ 〜 After 911テロ時代に最も求められた男 ミステリ羅針盤#1

出演:加賀山卓朗(翻訳家)、月村了衛(作家)、酒井貞道(書評家)、若林踏(書評家)

日時:2014年5月16日(金)19:30開演(19:00開場)

場所:Live Wire Cafe

 東京都新宿区新宿五丁目11-23 八千代ビル2F

   アクセスはこちら → http://go-livewire.com/theater.html

入場料:1500円(ワンドリンク付き)当日券500円up

参加方法:以下のリンク先からご予約ください。

     http://boutreview.shop-pro.jp/?pid=72848591

終演後には、同一会場にて、出演者を交えて懇親会をおこないます。懇親会参加費は予約3000円、当日参加3500円となります(入場料とは別料金)。

※「ミステリ羅針盤」とは、Live Wire Cafeにおいて、内外ミステリの特定トピックスについて、出演者が思う存分語る不定期のトークイベントである。《今、ふたたびル・カレ》は、その第1回となる。

酒井貞道

(さかい さだみち)。書評家。『ダ・ヴィンチ』『ミステリーズ!』等でミステリを書評。本シンジケートでは、書評七福神の一人と言う方が早いかな? あとクラシック音楽を偏愛しております。