ゴールデンウィーク中ですが、恒例イベントを紹介させていただきます。

 もしご予定がなければ、ぜひ新宿BIRIBIRI酒場にお運びください。

「君にも見えるガイブンの星(ガイブン酒場改め)」とは、本来はミステリー・プロパーの読者である杉江が、世界のさまざまな文学を読むことに挑戦してみたいと考えて始めたイベントです。その月以降に出る外国文学を早読みし一足先に内容をご紹介するという趣旨で、河出書房新社、新潮社、白水社、早川書房の各社にご協力いただいて開催をしております。心強いイベント・パートナーは、書評家の倉本さおりさん。2人してうんうん唸りながら山と積まれた本を読んでいます。

 恒例の作家特集は今回見送り、話題作であるニック・ハーカウェイ『世界が終わってしまったあとの世界で』を中心にお送りいたします。別のところにも書きましたが、本作品は終末戦争後の世界を舞台にした冒険小説です。ただし、「冒険小説」という情報から想起するような作品像とはまったくかけ離れたところにある作品です。私は本書に「誰もが読みたいと願うが容易には叶わない。その夢の小説がこれだ」という推薦文を贈りました。これはまったくの本音です。想像してみてください。食いしん坊がレストランに行き、ああ、あれも食べたい、これも食べたい、でもそんなに入らないし、と思い惑ったとき、よし、それならあなたの好きな料理を全部詰め込んだスペシャルメニューをお出ししましょう、と言われたらどんな気持ちになるか。これはそういう小説だと思います。アメリカほら話のスケールと、イギリス滑稽小説のセンスを共に兼ね備えた、とでもいうべきか。このごった煮の楽しさを、ぜひお伝えしたいと今回は思っています。

『世界が終わってしまったあとの世界で』にはとんでもなく素晴らしい造語が頻出します。主人公は謎の武術を習っており、その型の名前が「ウィトルウィウス拳(言うまでもなくダ・ヴィンチの「ウィトルウィウス人体図」からとられています)」だとか「輸卵管の肘」だったりします。なにそのセンス! それ以外にも原文には言葉遊びが満載だと思うのですが、それに訳文をつけるのは、この小説にはこの人しかありえない、という黒原敏行氏です。ちょっと引用をしておくので、訳文から原文を推理していただきたい。

「もう”足ドン!”はやらせないで」(たぶん「壁ドン」を想定した訳語)

ンモー、違うぞ、せがれよ、あの雌牛のなかの一頭を追っかけてファックするんじゃない、かたっぱしからファックするんじゃ!」(「ンモー」の元がなんだったのか激しく知りたい)

——おーっとと、ぼくちゃん何やってんだあとばかりカーズヴィルのほうへ倒れこむと……(この副詞句? の元はどんな言葉のつながりなのか)

 というわけでこの小説について、さまざまな角度から解明してみたいと思うわけであります。

 興味ある方は、ぜひ。

 それ以外の作品では、快調に翻訳が進んでいるロベルト・ボラーニョ・コレクションから『鼻持ちならないガウチョ』(すごい題名!)、認知症の女性の一人称で綴られていく油断ならない小説、アリス・ラプラント『忘却の声』、世界化されていくフランスを内外の視点から描いて世紀初の世界の変化を鮮やかに映し出した、ブノワ・デュトゥルトル『フランス紀行』などをお届けします(デュルトゥルトルは以前に『幼女と煙草』というブラック・コメディの翻訳がある作家ですね)。また、ひさびさにアン・ビーティの短篇集が出ていました。こちらはさすがに高水準の短篇集ですので、短い時間でご紹介しきれるかいささか心許なく、もしかすると次回改めてビーティ特集を組むかもしれません。

 今回も盛りだくさんでお届けするガイブンの星、ぜひご期待ください。

[日時] 2014年5月9日(金) 開場・19:00 開始・19:30

[会場] Live Wire Biri-Biri酒場 新宿

     東京都新宿区新宿5丁目11-23 八千代ビル2F (Googleマップ

    ・都営新宿線「新宿3丁目」駅 C6〜8出口から徒歩5分

    ・丸ノ内線・副都心線「新宿3丁目」駅 B2出口から徒歩8分

    ・JR線「新宿」駅 東口から徒歩12分

[料金] 1000円 (当日券200円up)

※領収書をご希望の方は、オプションの「領収書」の項目を「発行する」に変更してお申し込みください。当日会場で発行いたします。

 ご予約はこのサイトからお願いします。

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