去る9月21日(日)、東京都内のCafe Live Wireにてアゴタ・クリストフ『悪童日記』原作映画公開の記念イベントを開催しました。ゲストはもちろんクリストフ訳者である堀茂樹さん。1995年に作者が来日した際には、約2週間にわたって行動も共にされました。日本にクリストフを紹介した功績者であり、また作品を最もを愛した方でもあります。ちょうど白水社uブックスにクリストフの自伝『文盲』が収録されたということもあり、機が熟しきったイベントでありました。

 堀さんには、滞仏時代にクリストフ作品に出会い、自分で翻訳を手がけようとした初期の衝動、日本に戻って各版元に売り込みを行った経緯などもお話しいただき、時間はあっという間に過ぎていきました。印象的だったのは日本にやって来たクリストフが最初に泊まった千鳥が淵のフエアモント・ホテルのエピソードです。その後某ホテルのスイートルームに移ったのですが、最初の部屋のほうが「風が吹いていた」とお気に入りだったのだとか。ホテルの値段や格よりも「風が吹いていること」のほうを大事にしていた、というところにこの作者らしさを感じました。詳しいレポートは後日、「エキレビ!」などで公開予定です。

 急遽決まったイベントにも関わらず会場には40人に達するお客様が詰めかけ、クリストフ人気が依然として高いということを再認識させられました。なんとほぼ全員が『悪童日記』を既読であるという熱の高さ。会場では映画の資料も配られました。役得で筆者は先に試写を観ておりますが、主要なキャスティングがまさにはまり役であった、ということだけはお伝えしておきたいと思います。10月3日の公開を、どうぞお楽しみになさってください。

 さて、ここからは告知になります。前回9月19日に予定していた「君にも見えるガイブンの星 #21」は、杉江の体調不良のため10月8日に延期になりました。楽しみにしてくださっていたみなさま、申し訳ありません。「ガイブンの星」とは、本来はミステリー・プロパーの読者である杉江が、世界のさまざまな文学を読むことに挑戦してみたいと考えて始めたイベントです。その月以降に出る外国文学を早読みし一足先に内容をご紹介するという趣旨で、河出書房新社、新潮社、白水社、早川書房の各社にご協力いただいて開催をしております。心強いイベント・パートナーは、書評家の倉本さおりさん。2人してうんうん唸りながら山と積まれた本を読んでいます。本年6月から、新刊紹介と作家特集を分けて隔月開催としました。新刊紹介は倉本・杉江が1冊ずつ本を出していって口頭レビューを行い、どちらの本を読みたくなったかをお客さんに決めていく方式のバトルで行います。そして全冊紹介が終わった後で、すべての本の中からベストの1冊を投票で決定します。

 今回は特別ジャッジに、講談社「ミス iD 2013」に輝いた西田藍さんをお招きしております。先日刊行された『サンリオSF文庫総解説』の表紙を飾るなど、読書家としても知られる西田さんが二人の読みにどのような判断を下すのか。その点もぜひご覧になっていただければと思います。

 今回取り上げるのは以下の4対決、計8冊です。

1.20世紀と21世紀の戦争と平和を文学で振り返る

パトリク・オウジェドニーク/阿部賢一・篠原啄 訳『エウロペアナ』(白水社)

リー・カーペンター/高山真由美 訳『11日間』(早川書房)

2.文学界の怪物の手がけた訳書と怪物短編集が衝突!

トム・ジョーンズ/舞城王太郎 訳『コールド・スナップ』(河出書房新社)

B.J.ホラーズ編/古屋美登里 訳『モンスターズ 現代アメリカ傑作短篇集』(白水社)

3.淡彩で描かれた世界

ショーン・タン/岸本佐知子 訳『夏のルール』(河出書房新社)

ジュンパ・ラヒリ/小川高義 訳『低地』(新潮社)

4.かたや『闇の奥へ』、かたや『虚無への供物』

アン・パチェット/芹澤恵 訳『密林の夢』(早川書房)

アレクサンダー・レルネット=ホレーニア/垂野創一郎 訳『両シチリア連隊』(東京創元社)

 どうぞ、ご期待ください!

[日時] 2014年10月8日(水) 開場・19:00 開始・19:30

[会場] Live Wire Cafe(Biri-Biri酒場改め)

     東京都新宿区新宿5丁目11-23 八千代ビル2F (Googleマップ

    ・都営新宿線「新宿3丁目」駅 C6〜8出口から徒歩5分

    ・丸ノ内線・副都心線「新宿3丁目」駅 B2出口から徒歩8分

    ・JR線「新宿」駅 東口から徒歩12分

[料金] 1500円 (当日券500円up)

※領収書をご希望の方は、オプションの「領収書」の項目を「発行する」に変更してお申し込みください。当日会場で発行いたします。

 ご予約はこのサイトからお願いします。

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