せーの。
ニューヨークに行きたいかー!
じゃなくて。
トマス・ピンチョンは怖くないんでーす!
先日、日本翻訳大賞の設立が発表されて話題になりましたが、その候補としてぜひとも推薦したいのが佐藤良明によるトマス・ピンチョン『重力の虹』新訳です。
原文30万語、日本語訳は原稿用紙換算にして2900枚超という分量もさることながら、訳者による脚注がすごい。その数2000超、11万字以上と、それだけで長篇の分量あるじゃん! という力の入りようでした。しかしこれは必要不可欠な措置だったのです。神学から物理学、近代史から黒人音楽の系譜に至る、ありとあらゆる文物を視野に入れ、固有名詞を織り込むことによって文脈に多重的な意味を持たせていくという『重力の虹』文体に取り組むためには、脚注の存在が不可欠。いくら今はネット検索が可能だとはいえ、1行ごとにパソコンと首っぴきになっていては本が読めなくなりますからね。この脚注の助けを借りつつ、えっちらおっちらお山を登れるわけですよみなさん!
でもお高いんでしょう(お山が)? とおっしゃりたいわけですか。そのお気持ちはよくわかります。なにしろピンチョンですからね。
正直私も今回は引き気味でした。本当にピンチョン、読めるのかしらん、と。
しかしあえて声を大にして言いたい。
それでもやはり、トマス・ピンチョンは怖くないんでーす!
たしかにすべての情報を取り入れ、筋道を立てて理解するのは困難です。処理が追いつかないほどの膨大さですからね。
それでも、佐藤注を頼りに食いついていけば、最初はどうなることかと心配になりますが、目がくらくらするのに耐えながら文章を追っていけば。
あら不思議。
なんとも楽しい世界が目の前に広がってくるのです。無数の文字たちが踊りまくる狂喜乱舞のピンチョン世界。
登山ルートはいくつもあります。『重力の虹』は単独の峰としては険しすぎますが、『競売ナンバー49の叫び』や『V』といった隣の山から尾根伝いにたどっていけば、思わぬ発見もあって足取りが軽くなります。読んでいるうちに目が慣れてくる、ということもあるでしょう。
その世界に浸ってしまえば、こんなに楽しいものは他にないんです。
「杉江松恋のガイブンの星」は、日本語に翻訳される外国文学の読破に挑戦し、新作を紹介し、作家について詳しくなろうというイベントです。
挑戦者である杉江松恋と倉本さおりは、別段外国文学の専門家というわけではありません。まったくの素人というわけではありませんが、専門の文学者、研究者には到底かなわない程度の知識量しか持ち合わせていません。
でも、それでも外国文学は読める。
そういう信念の下に、これまでさまざまな作品、作家を読んできました。2015年最後の開催となる今回は、トマス・ピンチョン回です。『重力の虹』刊行によって予定冊数が出揃った(本国では2013年に新作が出ていますが)〈トマス・ピンチョン全仕事〉をすべて読み、ことに『重力の虹』についてはがんばって自分たちなりの理解をしようというのが今回の趣旨です。ピンチョン・ファンだけではなく、これから作家の作品を読み始めよう、という方にもぜひ私たちの読みを聴いていただきたいと思います。
今回のゲストは、日本でいちばん頼りになる文芸評論家の佐々木敦さん。依頼時には「なんで専門家でもないボクがゲストなの?」と首をひねっていらっしゃったそうですが、頼りにしているからですよ! 演劇や音楽などの文化について造詣が深い佐々木さんは、きっと私たちによきアドバイスをしてくださるはず。三人揃えば文殊の知恵。これで絶対、
トマス・ピンチョンは怖くなーい!
はず。
お問い合わせ、ご予約はこちらでお待ちしております。
[日時] 2014年12月21日(日) 開場・19:00 開始・19:30 (約2時間を予定)
[出演] 杉江松恋(ライター・書評家) 倉本さおり(ライター・書評家) 佐々木敦(批評家・早稲田大学教授)
[会場] Cafe Live Wire (Biri-Biri酒場 改め)
東京都新宿区新宿5丁目11-23 八千代ビル2F (Googleマップ)
・都営新宿線「新宿3丁目」駅 C6〜8出口から徒歩5分
・丸ノ内線・副都心線「新宿3丁目」駅 B2出口から徒歩8分
・JR線「新宿」駅 東口から徒歩12分
[料金] 1000円 (当日券500円up)
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