第5回 アガサ・クリスティー読書会 『五匹の子豚』 レポート
ほんとにすっかり遅くなりました。1月31日(日)におこないましたクリスティー『五匹の子豚』読書会のレポートを掲載させていただきます。
出席者は20名。男性5名。大阪、神戸の読書会の常連さんに加え、転勤で大阪にいらして大阪も読書会も初めてという方、出産して3年ぶりの参加ですという懐かしいお顔も。そして名古屋からクリスティー攻略作戦遂行中という猛者も乗りこまれ? 世話人ズに緊張が広がります。
最初にみなさんの感想をさくっと伺います。
再読のかたも多かったのですが、お約束の犯人を覚えていなかったの声多し。
「犯人思いだしたつもりで、最後まで読んだら違ってました。あれって感じ」
「なかなか新事実が出てこないので、ちょっとイライラ。でもこうなるといいなと思っていた結末でした」
「男同士の友情? 幼なじみにしてはちょっと変だなと。ドラマでは同性愛的に処理してあったけど」
「女性が何名も出てくるけれど、それぞれ魅力があっておもしろかった」
「反対に男性はみんなダメダメ。そもそも40そこそこでは枯れないでしょ」
「クイーンは論理で、クリスティーは人間を描いて推理を進めるんですね」
「取り調べのシーンが苦手だけど、そこが短くて助かった。構成もシンプルでうまいなと思う」
「ポワロはゴージャスな美女が好きなことを痛感(アンジェラはタイプじゃないとか)」
「香りをうまく使っている。記憶を刺激する効果があるそうです」
今回は恒例の「登場人物で誰が好き」アンケートを先にすることに。それぞれ好き、嫌いに手を挙げてもらいます。挙手は何度でも。好きという票を集めたのは、アンジェラ(12)とセシリア(11)。セシリアって誰って首を傾げた人。家庭教師のおばちゃんですよ。嫌い票を集めたのはエイミアス(5)ですが、意外というか、キャロラインが好きと答えた人(6)がいた反面、嫌いと答えた人(2)もいたことです。
「フィリップの告白を無視したあのやり方はどうも。結局ブレイク兄弟を手玉にとってますね」
「こんな人、面倒くさいよ。いちいち喧嘩ふっかけてきて」
「いや、それは自分が爆発しないように罵りあうことでガス抜きしてるんとちがう?」
油絵が趣味で、絵に詳しいYさん(初参加)が、エイミアスの絵はどんな絵だったんだろうと、いろいろ推理を披露してくれました。
「生前にテート美術館に入るというのは、すごく認められていたんじゃないかな」
そのエイミアスの描写について、
「魅力的な男性に対して見方が辛辣なのは、個人的体験をひきずっているのかなあ」
みんなが首をひねったのが、どうして子ども(カーラ)の存在感がこんなに薄いのか、という問題。5歳なのにねえ。みんなの関心の的となってもいいのに。
「家庭教師が健全なる放任主義、と言ってますよ」
「別の訳では、健全ななおざり、ですね。なんかわかりません」
「でもアンジェラだって15歳なのに、やんちゃすぎ。幼すぎるんじゃないかな」
アガサ自身の育ちかたが投影されているのでしょうか。
「家庭教師がアンジェラにスカートのほころびを繕わせようとしてますよね。こういうのも教えたんだなあと、おもしろかった」
「反対にエルサは召使いになんでもさせようとするタイプ」
「ちゃんと教育されていないと見なされるんでしょうね」
「そういえば、小学校のとき、手作りの雑巾持たされましたね」
「いまは百円ショップに売ってますよ」
脱線したところで、ネタバレのない感想はこのあたりまで。
そう、『ゴーン・ガール』が評判になったせいで、いまネットではクリスティーが、「オリジナル・ゴーン・ガール」と呼ばれているそうです。気になる方は“Original Gone Girl”で検索してみてください。
作品のなかで、ポアロが論じている「クリッペン事件」についても、DNA鑑定の結果、決定的な証拠とされた死体が妻のものではなかったことがわかり、謎は深まるばかり。
それから読書会初のブログ参加となったGさんの疑問、「なぜにエイミアスと命名したか」については、クリスティー・ファンクラブの会長さんのお力を拝借し、まるっと解けましたことをご報告いたします。
(→ブログはここです。「クリスティー『五匹の子豚』、または異説『月と六ペンス』論」)
無事、読書会終了し、二次会へと11名が移動。本の話でひとしきり盛り上がりました。名古屋から参加のWさんの電車の時間やら、そのあとの接続やらをしきりと心配する大阪の母たち。すっかり自分の息子のよう。いつでも歓迎するから、また来てね。
次の読書会は、神戸で4/5(日)14:00〜課題書はマット・へイグ『今日から地球人』(ハヤカワ・ミステリ文庫、Kindle版あり)。まだ残席ありますのでお急ぎください。
さらに大阪で、4月24日(金)『災厄の町』読書会を開きます。こちら詳細はあした、このサイトにて公開予定です。
(小佐田愛子 関西読書会世話人)