みなさんこんにちは。

 年に3回ペースでゆるゆるまったりと続けてきた東東京読書会も、おかげさまで第10回を迎えることができました。

 記念すべき節目の会ということで、今回は1.学生さん全員無料! 2.一般の方もワンコイン500円! 3.ことしに入って翻ミス・シンジケート後援の読書会に3回以上参加されている方を3名さままで無料!と特典の大盤振る舞い。そのかいあって、今回も読書会は初めてという方からシンジケート読書会常連の猛者さんまで、幅広い方々が集まってくれました。

 今回の課題書はルシアン・ネイハムの冒険小説『シャドー81』

ロサンゼルスからハワイに向かう747ジャンボ旅客機が、正体不明の最新鋭戦闘爆撃機にぴたりと追尾された。爆撃機のパイロットは旅客機にいる二百余名の命と引き換えに、政府や警察に巨額の金塊を要求する。犯人は何者なのか、そしてその周到な計画の真の目的は・・・?

 本作は75年にアメリカで出版されたので、ちょうど40年前の作品となりますが、本国ではすでに忘れられているのに、なぜか日本ではいまだに版を重ね、読まれつづけているという、冒険小説の中でも珍しい存在です。「ひさしぶりに再読した」「○年前に読みました」という参加者さんもかなりいらっしゃいました。なかには「結末以外は忘れてた」「昔読んですごい!と思ったのに、読み返したら(略)」という意見も(笑)。

 では、まずそれぞれの感想を。(以下、ネタバレありなので注意!)

「オープニングが長い」「冒険小説は初めてだけど、笑うところが意外に多かった」「ラストでつかまればいいのにと思った」(←これ、多かったです。)「エンコとグラントが作戦をたてる前日談が読みたい」「(某シーンで)マネキンに一時間も人間のふりをさせるのは無理」「上院議員の秘密スキャンダルをなぜ主人公が知っているのか」(このへんから雲行きがやや怪しくなってきました。)「人間ドラマがない」「乗客と犯人が同じ機内にいないのでサスペンスが弱い」「小説として下手」(そ、そんな・・・)「犯人が機内にいないハイジャック、というアイディアが斬新」(ほっ。)「ルパン三世っぽい」「デントナー(犯人一味のひとり)の正体がわかるラストが秀逸」「四十年前の作品だけれど、いま読んでも面白かった」(よかった!

 つづいて、好きなシーン・好きな点をきいてみました。

「航空アクションシーンが『ファイアフォックス』に似ていていい」「警官が犯人の指図で銀行から金を盗むとき、自分用に少しくすねようとするところが面白かった」「テレビで事件の分析をする心理学者が犯人の性的傾向についておかしな決めつけをする場面」「ヌードのマネキンを見た遠くの軍艦の船員が興奮するシーンに笑った」(そう、この作品は意外とユーモラスなシーンが多いのです。)「準備は入念、後始末も完璧、その描写が淡々と緻密にえがかれているのがいいと思った」「香港のあやしい船販売人が、意外に人を見る目が鋭くておかしかった」

 途中、冒険小説というジャンルについて、何人かの詳しい方におききしたところ、残念ながら冷戦終結・ベルリンの壁の崩壊後、このジャンルは数が減ってきていて、いまは不振な状態だそうです。参加者さんたちから「こんなに面白いのに!」という声が数々あがりましたが、希望のみえる部分もあり、女性の活躍する冒険小説に近い作品も出てきているそうです。時代を考えると当然かもしれませんね、まだまだ可能性のあるジャンルだと思うので、かつての勢いが戻ることを願いたいところです。

 最後に、参加者さんたちからも、おすすめ冒険小説のタイトルがいくつもあがりましたので、みなさんも参考にどうぞ。

『ファイアフォックス』『ファイアフォックス・ダウン』(クレイグ・トーマス)

*A・J・クィネルのクリーシィ・シリーズ

『バーニーよ銃をとれ』『スカイジャック』(トニー・ケンリック)

『A−10奪還チーム出動せよ』(スティーヴン・L・トンプスン)

『暗殺者グレイマン』(マーク・グリーニー)

『ファイナル・ターゲット』(トム・ウッド)

『卵をめぐる祖父の冒険』(デイヴィッド・ベニオフ)

『雪の狼』(グレン・ミード)

*リー・チャイルドの作品

 以上、2時間半のディスカッションを終えたあとは、新橋の某居酒屋で二次会。楽しく飲んで食べながら、本会で話しきれなかったことの続きや、いろいろな本の話題でにぎやかに盛り上がりました。ここが終わったあとも、さらに三次会へ繰り出した面々がいたことは言うまでもありません(笑)。参加者のみなさん、ありがとうございました!

 次回の東東京読書会は、来年1月の予定です。どうぞ楽しみにお待ちください。それではまた。

青木 悦子(あおき えつこ)東京出身&在住。本とクラシックとブライスを偏愛し、別腹でマンガ中毒。翻訳ミステリー東東京読書会の世話人。主な訳書:ポール・アダム『ヴァイオリン職人の探求と推理』、マイクル・コリータ『冷たい川が呼ぶ』『夜を希(ねが)う』、J・D・ロブ〈イヴ&ローク・シリーズ〉などなど。ツイッターアカウントは@hoodusagi

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