長野県阿智村富士見台高原『野性の呼び声』星空読書会レポート
(執筆者・栗木さつき)

※読書会参加者有志の皆さんからキャンプ&読書会のレポートが届きました。お楽しみください。また、自発的、自然発生的な読書会やファンイベントについて、レポート等掲載のご希望があればご相談ください。(事務局)

 ある日、こんな読書会の告知が。

「美しい自然+ウマい飯+面白い本+趣味が同じ仲間たち」
翻訳ミステリー名古屋読書会登山部による登山読書会のお知らせです。
今回の舞台は環境省認定「日本で星が最も輝いて見える場所」
長野県阿智村の富士見台高原「萬岳荘」。
大自然のなかで、飲んで食べて大好きな本を語ってみませんか?

『夜のフロスト』に登場する「中華風鶏のカレー煮込み」を訳者のS澤恵さんと作ります。フロスト警部たちが深夜、マレット署長の丸太小屋風署長室で(もちろん無断で)食べた、あの背徳のメニューを本物の丸太小屋で再現するぞ!

 おお。なんと魅惑的な読書会の誘いであろう。これはもう、なんとしても参加しなければ!

 南東京読書会の世話人である私が名古屋読書会登山部の活動に混ぜていただくようになったのは、その数年前の翻訳ミステリー大賞授賞式の席での雑談がきっかけだった。名古屋読書会登山部のK隊長と初めてご挨拶させていただいた私は「ハイキング、楽しいですよねー」と世間話をした。するとK隊長の目がキラリと光った。「名古屋読書会には山好きが多いんですよ。いつか、ぜひ、ご一緒に」はあはあ、ぜひ、と私は相槌を打った。こういう話はいわゆる社交辞令。「いつか飲みにいきましょう」という話になったところで、実現するケースはごくまれだ。だが、私は知らなかった。K隊長の辞書に「社交辞令」という単語が載っていないことを。そして彼が「やる」と言ったことは、必ずやる男であることを。だてにハードボイルド愛を公言しているわけじゃない。

 そして昨年の11月末、名古屋登山部の納会にあわせ、昼間、鳩吹山(はとぶきやま)から継鹿尾山(つがおさん)へと縦走するハイキングがおこなわれるとうかがい、私も東京から参加した。初対面の方がほとんどだったにもかかわらず、みなさんあたたかく迎えてくださり、紅葉の美しい晩秋の山歩きを堪能した。そしてなにより、名古屋読書会登山部のみなさんの明るさ、パワー、団結力の強さに驚嘆した。ウワサには聞いていたけれど、名古屋読書会のメンバーってスゴい。なんなんだろう、この気持ちのよさは! 

 それから11カ月後の2017年9月30日土曜日、ついに星空読書会当日を迎えた。フロスト警部シリーズ訳者のS澤氏と朝6時30分東京駅発の新幹線に乗り、一路、名古屋駅をめざす。
 きょうの予定はぎっしり詰まっている。名古屋到着後は富士見台高原までのハイキング、夕方はジャック・ロンドン『野性の呼び声』の読書会。その後は「中華風鶏のカレー煮込み」、それにサラダとごはん、デザートのリンゴという豪華な夕食を全員で調理し、乾杯。食後は「星クラブ」のみなさんが持参してくださった天体望遠鏡で満天の星空を愛でる。夜9時の消灯にあわせて眠り、翌日は午前4時に起床し、富士見台高原の山頂からご来光を拝み、下山後は昼神温泉で汗を流すという盛り沢山のプランだ。そのうえ、『その雪と血を』を訳されたS木氏、最近、ジョン・ル・カレの自伝を訳されたKG山氏もご参加くださるという。こんな素敵な企画を立案してくださった名古屋読書会登山部のみなさん、本当にありがとう!!
 ……でも、K隊長は「雨男」だというウワサ。名古屋の天気は大丈夫だろうか。

 JR名古屋駅から高速バスで園原へ向かい、富士見台高原に続く登山道口下の駐車場に到着すると、そこには雲ひとつない青空が広がっていた。どうやらK隊長の「雨男」パワーも、S澤氏と札幌読書会からお越しのマダムKというふたりの強力な「晴れ女」パワーに屈服したらしい。めでたい、めでたい。
  登山メンバーは男性3名、女性6名の総勢9名。いざ、出発!

 1300年ほど前に近江から陸奥まで「東山道」が通じ、その最大の関所が神坂峠だったという。われわれ隊員は、その東山道修験者コースへと足を踏みいれた。眺望こそあまりよくないものの、道は整備されていて、とても歩きやすい。でも急勾配を登っている最中は、あの名古屋登山部メンバーがだれも口をきかず、ただ黙々と歩きつづけていた。人は息が切れると無口になるものなのね。でも木曽駒ケ岳や富士山の登頂に成功してきた猛者たちは、当然のように誰ひとり弱音を吐かない。さすが、名古屋読書会登山部である。

 登ること約2時間半、ようやく宿の萬岳壮に到着。

 車で食材を運んでくださったKんた夫妻、Lさん親子、S澤氏、K猫さんと合流し、全員で標高1739メートルの富士見台高原を目指す。

 見よ、この抜けるような青空! 富士見台高原の頂上を目指す隊員たち。

 そして富士見台高原の頂上にはまさに360度の絶景が!

 北側には御岳、常念岳、駒ケ岳、空木岳。南側には目の前に恵那山。そして西側には中津川市街と白山連邦。そして圧巻だったのが東側で、北岳、塩見岳、赤石岳、聖岳など南アルプスの美しい連なりがわれわれを出迎えてくれたのだ。山の神さま、ありがとう。自然と謙虚な気持ちになる。

 萬岳荘に戻り、いよいよ読書会だ!(後篇につづく)