はじめまして、西東京読書会です。東東京に羨望の目を向けるばかりだった西の一同が、ようやく重い腰をあげました。無事に終わって、ほっとしているところです。まずは、参加してくださった皆さま、ありがとうございました!

せっかくの(?)年末なので、課題本は「今年の話題作にしよう!」と最初から決めていました。そこで『湿地』(アーナルデュル・インドリダソン著、 柳沢由実子訳、東京創元社刊) をチョイス。北欧ミステリー・ブームと言われる昨今ですが、そのなかでもめずらしいアイスランド発の作品です。まごうかたなき今年の話題作! ちょうど読書会の直前に2012年度の各ランキングが発表され、『湿地』はどうだったか見てみると——

☆「ミステリが読みたい!」1位

☆「週刊文春 傑作ミステリーベスト10」2位

☆「このミステリーがすごい」4位

軒並みの高評価です。このレポートを書いている途中で、翻訳ミステリー大賞最終候補作も発表になりました。おお、ここにも入っているじゃないですか。『湿地』、大人気!

さて、当日は田口俊樹さんに司会をお願いしました。随所で笑いを取り、適格なツッコミを入れる名司会者ぶり、さすがです。ありがとうございました! Kさんの香港土産のパンダさんクッキーや、Mさんの手作りお菓子をいただきつつ、まずは全員の自己紹介と『湿地』の感想から——

「名前が難しい」

「(登場人物のひとりについて)男か女かしばらくわからなかった」

はい、北欧ミステリー?あるある?ですね。しかも、アイスランドの名前は北欧でもまた特殊なようです。そのあたりのことはあとがきに詳しく書かれていましたので、ご一読ください。では、引続き、感想や意見を——

「読みやすく、北欧ミステリー初心者にもお勧めできる」

「アイスランドという土地柄がうまく生かされている」

「警察小説としてよくできている」

「重い話なのに、後味が悪くない」

ふむふむ。各所で高い評価を得ているだけのことはありますな。ほかには?

「二時間ドラマっぽい」

……ん? それはどういう意味で?

「いや、いい意味ですよ?」「ほら、さくさく進んで、驚きの事実が次々に出てくるところとか」「そうそう、各章ごとに場面転換するから、章と章のあいだがCMみたいな感じ」「続きが気になっちゃって」「最初に死体が出てくるところも似てるよね」「わりと早い段階で犯人がわかるし」

このとき、わたしの頭のなかには?ちゃ〜ちゃ〜ちゃ〜ん♪?でおなじみの火サスのテーマ曲が鳴り響いておりました。

要は「読みやすく、わかりやすい」ということですね。あとがきによれば、著者はそういう小説を書くように心がけているとか。とはいえ、この読書会では「ミステリーとしては弱いところもある」との指摘も出ました。ほかに「タイトルを含め、伏線や比喩が安易」「犯人の残したメッセージに意味はあったの?」「○○が××なのは都合がよすぎない?(ネタバレ防止のため伏せ字)」「△△が活躍しすぎ(ネタバレ防止のため伏せ字)」などなど厳しい意見も。ううむ。では、それでも評価の高い理由はなんでしょう?

「ミステリーとして云々はさておき、小説としておもしろい」

「主人公が魅力的」

「主人公の中年刑事の私生活や人間臭さ、娘との関係が読みどころ」

「中年刑事と娘の一場面ではうるうるきた」

最後の意見は、娘さんがいらっしゃる男性のものです。娘さんが思春期のころを思い出されたとのこと。なるほど、小説というのは、読む人の人生を照らし出すんだなあ。当たり前のことかもしれませんが、それが強く印象に残りました。『湿地』の人気の理由はそのあたりにありそうです。

さらに、時節柄、皆さまから「今年読んだもので一番おもしろかった本(ジャンル問わず)」をうかがいました。名前があがったのは——

『毒の目覚め』『特捜部Qシリーズ』『盤上の夜』『都市と都市』『ガラスの鍵』『残念な日々』『シャンタラム』『判事と死刑執行人』『少年は残酷な弓を射る』『繚乱』『晩夏の犬』『無罪』(順不同)

『都市と都市』のみ二票入ったものの、あとは見事にばらけましたね。タイトルひとつで、その作品をあげたかたの性格が想像できそうな気もします。おや、『毒の目覚め』『無罪』『湿地』とともに翻訳ミステリー大賞最終候補作に入っていますよ! 今年の大賞の行方も楽しみです。

最後にもうひとこと。幹事のひとりは福島読書会にお邪魔しています。あの北の地で読書会の楽しさを教えていただきました。各地の読書会レポートにも書かれていましたが、本は初対面の垣根を取り払ってくれるんですよね。西東京もそういう会にしたいと思い、準備を進めてきました。至らない点は多々あったかと思いますが、ご参加の皆さまのおかげで、和気藹々とした会になりました。改めて、お礼申し上げます。今後も、ミステリー好き、本好きがわいわい楽しくやれる場を設けられるように、ゆるゆると続けていくつもりです。どうぞよろしくお願いいたします。

これまでの読書会ニュースはこちら