今回の読書会を全国レベルの下ネタ討論会、別名「下ネタ関ヶ原の戦い!」と言ったのは誰だったであろう?
そう、思い起こせば自分である……。
課題書の『卵をめぐる祖父の戦争』は、刊行年に各種年末ランキングでも上位に食いこんだ下ネタ小説。いやっ、ミステリ小説である。
下ネタ天下分け目の戦にふさわしい名作である。
名作だけあって、参戦者も東京・大阪・滋賀・富山と県境を越えてこの戦いに挑んできたのである!
下ネタのみを生業としている自分は迎え撃つのみであるっ! こちらは石川下ネタ軍団の後ろ盾もあり、負けるわけにはいかぬ戦なのだ。
そのうえ、何と今回はこの作品の訳者である田口俊樹さんと担当編集者の山口晶さんも参戦するとなっては、女房を質に入れてでも圧勝せねばならぬのだ!
戦開始の法螺貝と共に開戦である。
うん……? 戦いの割にはやけに和やかな雰囲気なのは何故か? なるほど、下ネタをしかめっ面で語るわけにもゆくまい。
ところが、開戦後まもなく予想外のことが起こった。
作品について、「広義のハウダニット」「エンターテインメント性の高いミステリ」「最初に作者(を思わせる人物)が登場するメタフィクション」といったミステリ小説としての評価や、「衝撃的で挫折しそうになった」「若い登場人物の死が胸に迫る」など、悲惨な戦争描写に関する意見が多く出た。
アレッ、アレアレ……、下ネタ討論会じゃないでない!
挙句の果てには、「まるで死体のまま生まれてきた死体みたいだった」「湿気て固まった塩入れの中の塩のように(……頭の中で凝り固まってしまっていた)」「才能とは熱狂的な女王のようなものだ」などの優れた表現が作中にちりばめられている、と文学的に高い評価をする意見で盛り上がった。
さらに、絶賛の声も多い邦題『卵をめぐる祖父の戦争』は、山口さんが某有名作家の作品名からパク……いや、着想を得て案出したのだとか、田口さんが最初に書いた訳者あとがきが力み過ぎていて山口さんからダメ出しが入った、といったこぼれ話も、参戦者を大いに愉しませた。
参戦者……、そもそも参戦者は自分だけみたい。これじゃあ、『チ●ポをめぐる史朗の戦い』だね……。
いやいや、独りでも戦は戦である。意地でも話を●ンポやウ●コに戻さねばなるまい。
が、しかし、「?イクときにはチン●がソビエト連邦国歌を口笛で奏でる?という表現は、日本で言えば君が代で射精するようなものですか?」という起死回生の反撃にも、「それだとスローテンポでイケないよ」と田口さんに大人の対応で軽くいなされた。
負け戦である! 下ネタのサーの称号はもう返そうか……。
ただ、作中の下ネタについても、「下ネタ漫才で死の恐怖を軽くしている」「下ネタがあったから後半の星の話がロマンチック」「下ネタは恐れに対する優しさ」など、戦にはならぬものの概ね好評ではあった。
また、「コーリャの下ネタでこの人物は市川さんだと思った」との光栄きわまりないコメントもあり、「コーリャの世界記録ウン●が出るまでが物語のサブストーリーである! 」という自分の意見には山口さんも同意してくれた(ハズ)なので、下ネタのサーの称号はやはり返さないでおこう。
読書会後の懇親会で負け戦の憂さ晴らしのように下ネタをしつこく声高に語ってしまい、田口さん、山口さんにご迷惑をおかけしました。申し訳ありません。そして自分のために書かれたこの作品を出版していただき本当にありがとうございます!
(*主観的レポートなので若干の勘違いと妄想があったらゴメンナサイ……)
金沢読書会 市川史朗