2月23日(日)に第5回西東京読書会を開催しました。

 4カ月ごとに開いている本読書会。ほんとうなら3月開催のはずでしたが、会場としてこれまで連続3回お世話になった三鷹の古書店、風待文庫が2月で閉店とのことで、急きょ2月中にやりましょうとなりました。

 日程が決まったときには、すでに開催日まで3週間を切っていて、翻訳シンジケートのサイトの告知文掲載は約2週間前(通常は4週間前に告知)。

 それって遅すぎやしないか? 参加者が集まるだろうか? と、ひやひやしましたが、サイトでの告知とツィッターの威力のおかげで、無事に満員御礼となりました。

 今回の課題本は『遮断地区』

 言わずと知れた、今年の翻訳ミステリー大賞候補作品の中の一作です。

 参加者は常連さん、これまでに何度か参加された方、初めての方がそれぞれ数名ずつと、今回もすばらしいバランス。毎度のことながら、黄金比です。

 そして、黄金比であればこそ、実にさまざまな感想が聞けるのです。

 ミステリー読みのベテランさんからは「ミネット・ウォルターズの作品らしくない。読後感が良すぎる」というご意見。同著者のこれまでの作品を読みこんでいるからこそのご意見。さすがです。

 ミネット・ウォルターズのこれまでの作品は、いい人のはずの登場人物が一転、悪人だったりと、一筋縄ではいかない人物設定に特徴があるとのこと。

 なるほど。たしかに、この作品の登場人物には裏の顔と呼べるほどのものはない。

 といっても、裏の顔のない主人公ジミーが好きとおっしゃる方も多かった。ジミーは刑務所から出てきたばかりですが、これからはそれなりにまじめに生きて、二度とムショ生活は送らないと、それなりに決意している男でして、家族を守るために、身を挺して暴動を制圧しようとします。

 ひねりはないかもしれないけれど、本書はジミーの成長物語である——そんなふうに読めば、納得の内容です。

 ごくごく少数、いや、はっきり言えば一名ですが、小児性愛者のミーローシュが好きとおっしゃる方もいらっしゃいました。たしかに、同情したくなる設定ではあるのですが、「好き」と言い切れるのは、ある意味すごい! こういう思いがけない意見が聞けるから、読書会はやめられないんですよね。

 物語の流れとしては、ひとつの地区が遮断されるほどの暴動が起きるきっかけとなった少女失踪事件の扱いが意外に小さくて、暴動のほうをメインに持ってきています。それに関しては、良いという意見と、バランスが悪いという意見のまっぷたつに分かれました。

 さらには、メインの暴動が生ぬるいというご意見も。

「血みどろの描写がもっとほしい」、「きれいにまとめすぎている」、「これではキム・ヨナの演技だ。真央ちゃんじゃない!」とソチ五輪開催中の読書会ならではの発言もありました。(ちなみに、わたしは血みどろは嫌いですが、真央ちゃんは好きです)

 もちろんほかにもさまざまな感想がわんさと出て、いつものことながら、2時間の読書会はあっというまに幕を閉じました。

 次回は7月開催予定。

 居心地のいい古書店がなくなって、意気消沈した幹事ですが、次回は心機一転、新たな会場でみなさまにお会いするのを楽しみにしています。

森嶋マリ(もりしま まり)

東京都出身。主な訳書は『古書の来歴』ジェラルディン・ブルックス、『危険な愛のいざない』アナ・キャンベルなど。趣味はテニス、水泳、海外ドラマ鑑賞。お菓子作りは生活の一部。

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