こんにちは、西東京読書会の小林さゆりです。みなさま、お元気ですか。
コロナ禍でどこもリアル読書会の開催が難しい状況ですね。そう、従来の読書会のことを最近よく「リアル読書会」と口にしているのですが、ほんの三月前までは「オンライン読書会」のことなんて考えもしませんでした。それが気づけば練習会も含めて6月末までに6回もオンライン読書会を開いていました。
どうしてこうなった?
楽しいから――この一語に尽きます。
よくわからないけれど、手探りで始めてみたら思いのほか楽しかったよというご報告です。よかったらおつきあいください。
●4月5日
全国翻訳ミステリー読書会連合の有志でオンライン雑談会。
オンライン会議に参加するのはこれが初めてでした。インストールや登録など事前準備が必要ですが、機械音痴のわたしでもなんとかなったので大丈夫。
おっかなびっくり会議室に入室してみると、画面に各地の世話人さんたちの顔がずらりと並び、それだけでテンションが上がる、上がる。
「お久しぶり」と手を振り合ったりして懐かしいやら、何ごともなければコンベンションで再会できていただろうになあと寂しいやら。
この時点では、4月下旬に予定していた読書会は規模を縮小して参加者募集中でしたが、各会の状況などを聞くうちにやっぱり今は無理だなと開催を断念。課題図書が翻訳ミステリー大賞最終候補作だったので、日時は予定通りのままオンラインでの開催を決意しました。
●4月某日
何はなくともリハーサル。準備期間が短いので課題図書は電子版で刊行された短編を選び、友人たちに声をかけて練習につきあってもらう段取りをつけました。必要事項の連絡はSNSのグループDMを利用。
●4月18日
第0回西東京オンライン読書会。参加者は訳者の鈴木美朋さんも含め7名。課題図書はカリン・スローター&リー・チャイルドの『ザ・ゴールド』(ハーパーBOOKS)でした。
おひとりずつ入室手続きを済ませ、画面上でごあいさつ。トラブル防止のため、会議室への入室は主催者の許可制を採用。
リアル読書会と同じ雰囲気を少しでも出したいので、画面に顔出しをお願いしました。自己紹介と近況報告を各自手短に発言してもらって一巡。
ここから発言者と司会者以外は音声をミュートにし、課題図書の感想を順番に話してもらいました。途中から、訳者の鈴木さんのミュートも解除し、随時話にはいっていただくかたちに。
心配だった通信状況も良好で、練習編の読書会は滞りなく終了。これはいけるぞ、と手ごたえを感じました。
●4月25日
第1回オンライン読書会。課題図書は第十一回翻訳ミステリー大賞最終候補作『拳銃使いの娘』(ジョーダン・ハーパー/鈴木恵/ハヤカワ・ミステリ)。
リアル読書会募集時の申込者に連絡し、ツイッターでも参加者を募り、6名で開催。安全確保のため募集範囲は西東京読書会に参加歴のある方、主催者と面識のある方に限定。
北陸・中部地域の読書会世話人さんたちも参加してくれて、「ああ、オンラインだからこそ気軽に参加してもらえるのだな」とここでも手ごたえを感じ、ますますオンライン読書会にのめりこんでいきました。
参加者さんの提案で懇親会も設定。本会のあと、短い休憩をはさんで各自飲みものを用意して再集合。今後のことや課題図書以外の本の話など、30分ほどですが楽しく交流できました。以降、懇親会タイムが定番化。
●5月5日
外出自粛まっただなか。大型連休中みなさまどこへも遊びに行けないだろうなということで、翻訳ミステリー大賞のまた別の候補作『パリ警視庁迷宮捜査班』(ソフィー・エナフ/山本知子、川口明百美/ハヤカワ・ミステリ)で第2回オンライン読書会開催。
募集条件は前回と同じ。8名参加。少しずつ参加者が増えるのが嬉しい反面、オンラインではこれくらいの人数がちょうどいいようだな、とだんだん勝手がわかってきました。
自動の班分け機能を初使用。4名ずつの2班に分かれて感想を発表し合うはずが、わたしの不手際で3名と5名に分かれてしまい失礼しました。頃合いを見て全体に戻り、各班で出た感想・意見をそれぞれ発表。
懇親会でも乾杯のあと班分けし、4名ずつで雑談を楽しみました。フリートークは4名ほどが話しやすいようです。
●5月15日
初めて平日夜の開催。翌日が第十一回翻訳ミステリー大賞の開票&結果発表日なので、それに先立ち、番外編として大賞予想会に初挑戦。
ふだんなら飲みにくり出すだろう金曜日の夜8時に8名がオンラインで集合。参加条件は候補作5作中3作読了とゆるめに設定したのですが、半数以上の方が全作読破してきてくれました。まずは大賞予想を各自表明。結果は――
『11月に去りし者』4名
『ザ・ボーダー』2名
『パリ警視庁迷宮捜査班』2名
その後2班に分かれ(予想作が偏らないよう、手動で振り分け)、大賞のゆくえを占うことに。40分ほど班別に相談したあと全体に戻って各班予想発表。
どちらも『11月に去りし者』(ルー・バーニー/加賀山卓朗/ハーパーBOOKS)で一致(ご存じのとおり、予想的中!)。
夜開催のため最初からアルコールOKにしたので、巷で流行りの「オンライン飲み会」気分もちょっぴり味わえました。
●5月30日
第3回は参加者さんのリクエストに応え、お勧め本紹介形式で開催。いつも当会3月開催時に第2部で取り入れていた企画です。参加者は8名。2019年刊行の翻訳ミステリーでこれが面白かったよという一冊を各自紹介。
作品の特徴や読みどころをパワーポイントで発表してくださった方がいて、一同感激。画面共有機能を活用すると、その場で情報を共有できるので便利。
この回より、募集範囲を少し広げ、全国各地の姉妹読書会に参加している方も受け入れることにしましたが、残念ながらまだなかなかご参加いただけません。オンライン上で初めましてはためらいがあるかもしれませんが、のんびりした会なので気軽にご参加くださいね。
ちなみに、それぞれのお勧めの作品はこちらです。
『ケイトが恐れるすべて』(ピーター・スワンソン/務台夏子/創元推理文庫)
『パリのアパルトマン』(ギヨーム・ミュッソ/吉田恒雄/集英社文庫)
『熊の皮』(ジェイムズ・A・マクラフリン/青木千鶴/ハヤカワ・ミステリ)
『生まれながらの犠牲者〔新訳〕』(ヒラリー・ウォー/法村里絵/創元推理文庫)
『ザ・プロフェッサー』(ロバート・ベイリー/吉野弘人/小学館文庫)
『隠された悲鳴』(ユニティ・ダウ/三辺律子/英治出版)
『パリ警視庁迷宮捜査班』(ソフィー・エナフ/山本知子・川口明百美/ハヤカワ・ミステリ)
『1793』(ニクラス・ナット・オ・ダーグ/ヘレンハルメ美穂/小学館)
●6月21日
2カ月半ぶりに全国読書会連合世話人有志でオンライン会議。
各地の状況など意見交換。アイディアを出し合い、7月のオンラインイベント決定。話が早い! 距離が問題ではないせっかくのこの機会に、地域を越えたコラボ企画もアリだねという話も出ました。実現するといいですね。
●6月27日
第4回は7名参加。オンライン会議を敬遠していた某リピーターさんがついに参加。安全面に気を配り、今後も慎重に運営していく所存です。
課題図書はSNSで高評価が散見される短編集『おれの眼を撃った男は死んだ』(シャネル・ベンツ/高山真由美/東京創元社)でした。
オンライン会議に慣れてきた方が増えたので、ミュート機能をほとんど使わずに進行。とはいえ、フリーディスカッションでは「ミュート」と「挙手」の機能を活用したほうが発言機会の偏りを解消できるのではないか、と仕切り方を再考中です。
短編集だったからか、2時間ではとても語りつくせず、懇親会の時間も課題書の意見交換にまわし、みんなで乾杯できなかったのが心残り。
というわけで練習編や番外編も含め、2カ月半のあいだに西東京読書会では小規模ながら6回オンライン読書会を開催しました。
振り返ってみれば、外出自粛期間と大型連休と翻訳ミステリー大賞投票締め切り時期が重なったから次々企画を思いつき、そしてその思いつきに読書会好きの方々が「よっしゃ」と乗ってくださったから、曲がりなりにもどうにかこうにかやれたのでしょう。
あたりまえですが、リアルであれオンラインであれ、参加してくださる方がいるからこそ読書会は成立します。みなさまにあらためて御礼申し上げます。
最後に、オンライン読書会の長所をひとことでまとめてみますと――
思いたったら即、企画・実行できる手軽さ(主催者側)。
移動の手間暇がかからないこと(参加者側)。
えっ、それだけ? と思われそうですが、突き詰めるとこれだと思います。
セキュリティ面でたしかに不安もありますので、ご利用のサービスの機能をうまく活用して、各自で工夫なさってください。
西東京読書会では当面、募集範囲を引きつづき限定しております。安全性を考慮した上での措置なので何卒ご理解くださいますようお願いいたします。
今後世の中がどうなることやらまったく予想もつきませんが、しばらくオンラインで活動を続けるつもりです。機会がありましたら、ぜひご参加ください。
そして、みなさまもオンライン読書会をどんどん開催してみてはいかがでしょうか。
きっと楽しいですよ!
小林 さゆり(こばやし さゆり) |
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1966年生まれ。東京都在住。ヨガを始めました! 主な訳書に『背徳の愛は甘美すぎて』(レクシー・ブレイク、二見書房)、『「不思議の国のアリス」の家』(ヴァネッサ・テイト、柏書房)、『僕とばあばと宝くじ』(パトリシア・ウッド、武田ランダムハウスジャパン)など。共訳書に『世界シネマ大事典』(三省堂)、『イージーマネー』(イェンス・ラピドゥス、講談社)など。 |